矢野経済研究所は、国内の学習塾・予備校事業者を対象に実施した調査に基づく、学習塾・予備校市場市場の動向や参入事業者の動向、将来展望を9月6日に発表した。同調査は、5月~8月の期間に行われている。
調査結果によれば、2020年度の学習塾・予備校市場規模は、前年度比4.9%減の9240億円となった。
同年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による休塾措置と、それにともなう授業料の返金・割引(または特別価格対応)の発生、春先を中心とする生徒募集活動の自粛・抑制、学校の夏休み期間短縮による夏期講座数の減少といった、マイナス影響を大きく受けている。
とりわけ、通塾での学習指導が制限された2020年4月~5月における事業活動停滞の影響は大きく、緊急事態宣言が解除されて塾通いが再開された夏場以降は、学習の遅れや学力の低下に対する危機感・不安感などから生徒数が大きく回復に転じたものの、通年では春先の減収分を補完するに至らなかった。
4月~5月の期間は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなう緊急事態宣言の発出を受けて、通塾による学習指導が大きく制限されたたため、学習塾・予備校事業者の多くは、オンライン授業の導入や、映像授業、デジタル教材などを無償提供して学習サービスの継続に努めており、それを受けて学習塾・予備校市場におけるデジタルを活用した学習サービスを導入・活用する環境が大きく進展している。
一方で、通塾が再開されて以降は、対面による学習指導を選択する生徒が非常に多く、学力向上や学習内容の定着といった効果や、生徒のモチベーションの維持・向上、オンライン授業に適した指導方法の確立といった課題も表面化した。また、オンライン授業の一般化によって、首都圏の大手学習塾・予備校事業者が、地方や海外在住の生徒に向けてオンライン授業を提供するサービスを新たに立ち上げる動きもみられる。
デジタル教材では、AI技術を活用し、生徒個々の学力や学習進度、理解度などに合わせた、より効果的かつ効率的な学習指導サービスの提供の推進が活発化しており、関連サービスを導入する事業者が急増している。人件費の高騰をはじめとする、優秀な講師人材の確保に対する課題に対して、人的リソースに依存しない学習サービスの確立という面において、AIなどを搭載したデジタル教材による学習指導サービスの開発・提供は、今後も拡大が予測される。
2021年度の学習塾・予備校市場は、感染防止対策の徹底を講じた上で、通塾に対する制限が緩和されていることや、学習塾事業者の多くで好調な集客状況がみられることから、回復に転じると予測されるものの、進学需要に対して比較的緊急性が低い補習需要では、一部で通塾に対する需要の回復に遅れがみられる。
2021年8月時点では、新型コロナウイルス感染症の第5波による感染が拡大しており、それを受けて事業活動に対する強力な制限が発動された場合、2021年度の市場への影響が懸念される。
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