EdTechは単に「リアル」な場の学びと置き換えるのではなく、「教育現場との連携」が重要
――昨今の教育業界では急速なデジタル化、ICT活用が進んでいます。その中で、代々木ゼミナールではどのようにICT活用を捉えられ、「ClearS(クリアエス)」の導入に至ったのでしょうか。経緯も含めてお話しください。
高宮:多くの企業がそうであるように、代々木ゼミナールでも、事業へのICT活用は常に大きな経営戦略であり経営課題として意識し続けています。そんな折、2015年の夏頃から、さまざまな教育ICTツールの企業から提案いただくことが増え、プロダクトの中身についても急速な進化を実感するようになりました。その中でアルクテラスさんの学習ノート共有アプリ「Clear(クリア)」を知る機会があり、2016年6月に「代ゼミ講師が教えるノート塾」として、Clearで期間限定キャンペーンを実施したところ、非常に大きな反響をいただきまして。それを何度か開催させていただくうちに、一緒に何かできないかと考えるようになったのです。
新井:代ゼミさんとの最初の協業は、「Clear」に「代ゼミ講師が教えるノート術」を公開していただく企画でした。「Clear」は2014年にローンチされた、学生が利用する学習ノート共有アプリです。学生たちは自分がとったノートを人に見てもらいたいと思って公開します。そこで「代ゼミの先生」がノートのとり方を教えてくれるというのですから、大喜びですよね(笑)。最終的には、先生方に皆さんのノートを評価いただき優秀賞まで決めました。
高宮:当時はスマホが学生にも浸透し始め、多くのEdTech企業が参入し始めた時期でした。それらを見ていて感じたのは、オンライン上で完結するサービスも多い中で、私たちのような「場」を持った事業者と組むことが、より多様な価値を生み出すのではないかということです。
ただ、「Clear」をそのまま現場に導入するには課題がありました。「Clear」がオンライン上でノートを公開することによって「より多くの人に利用してもらう」のが目的であるのに対し、我々は「場へと囲い込む」のが目的です。そこにフィットしたサービスにしていただければと、代ゼミからは代々木ゼミナール教育総合研究所(以下、代ゼミ教育総研)のメンバーを議論に加えて検討を重ねてきました。
新井:そう、「現場」との連携は重要ですよね。テクノロジーだけで勉強のモチベーションを上げるのは難しい。オンラインの先に人がいる、もしくはリアルな場があるといった、「教育の現場との連携」を行うことも重要だと考えるようになりました。
こうした背景がある中で、学生に対してオープンなプラットフォームとして運営する「Clear」を個別指導塾や大手予備校、学習動画視聴サービスなどで、講師や生徒の学習支援・コミュニケーション促進ツールとして利用したいという声をいただく機会が増えたこともあり、「ClearS」の着想を開始しました。その中で代ゼミさんとも協議を重ねた結果、代ゼミ教育総研さんでは「先生に使っていただく」形式のサービスを提供することになりました。
高宮:本サービスの一番の特徴は、対象に中学校・高校の現役の先生方を含めていることでしょうか。実は、10年以上前から春と秋に代ゼミ教育総研が主催する教員研修セミナーを行っており、そこで指導案や板書案、教材などの情報交換ができる場がほしいとの要望を多くいただいていたのです。そこで研修を受講いただいた先生方に「ClearS」をご利用いただくことで、そのニーズに応えることができますし、我々としては継続的な情報提供やコミュニケーションが可能になることで研修内容の定着を促し、事業的にも囲い込みが可能になると考えました。