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自由でポジティブなフィンランド教育の実態は? 魅力と課題をフィンランドの小中学校から現地レポート

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2021/02/24 07:00

 教育ICT先進国と言われるフィンランド。そこではどのような教育が、どういった手法で行われているのか――。「教育イノベーターズMeetUp!海外&日本の教育の最先端事例を学ぶ会」主催のオンラインセミナーに、フィンランドのオウル大学院で「教育学」と「グローバリゼーション」を学ぶ田中潤子さんが登場。フィンランドの総合学校(小中学校)に3か月間ティーチングアシスタントとしてインターン参加した経験を紹介した。小学1年生のクラスに毎日通い、高学年の生徒とも交流し、また職員会議にまで出席したという田中さんが見聞きした“フィンランドの学校教育のリアル”には、今後の日本の教育について考えるヒントが多く隠れていた。

誰もに幸せな学びを提供するために――フィンランドの小中学校体験で印象に残った3つのこと

田中潤子さん
田中潤子さん

 田中さんがインターンに参加したのは、小中の一貫校で「オウルインターナショナルスクール」。日本のインターナショナルスクールと異なり、通常の公立校と同様に無償で通学できる。現地校より外国人比率が高く、欧州のほか、インドやパキスタン、日本などからのアジア人も多い。1年生は27~28人のクラスが2つだが、本来の定員は24人、この学校では今後24人から更に減らされる予定だ。

 そんな学校で田中さんが受けた最初の衝撃は、「人によって登下校の時間が違う」ことだった。インターナショナルスクールということもあり、フィンランド語が母国語かどうかで受ける授業が異なっていたり、外国語が選択制だったり、一人ひとり時間割が違うためだ。しかし、そんなことは序の口、3か月を通して田中さんが特に印象に残ったのは次の3点だという。

(1)柔軟な個へのサポート

 多様な個性が集まる学校内で一人ひとりへの対応がきめ細やかになされている。例えば、多動傾向などで動き回りがちな子に対しては、ゴムのリングやクッション、ずっしりと重い犬のぬいぐるみなどを渡して落ち着かせる、ノイズキャンセラーを使うなど、さまざまな工夫が見られた。また、騒いだときなどに先生と生徒の間で合図が出されると、ある場所で軽くダンスをして戻るといったルール、発語が難しい子どものための意思表示シート(伝えたいところに消しゴムを置く)なども用意されていた。

一人ひとりへのサポートのためのツールが用意されている
一人ひとりへのサポートのためのツールが用意されている

 ほかにも、同じクラス内でレベルによって活動を分けたり、2人1組で作業を行ったり、言語や算数はクラスの半分の人数で学んだり、より個々に合った学び方が選択されていた。さらに教室だけでなくじゅうたんスペースやロビー、廊下などで学ぶこともあるほか、教材としても教科書だけでなく、ボードゲームやぬいぐるみ、動画、タブレットなど、さまざまなものが活用されていた。

 「日本では教室で教科書を前に、黒板に向かってずっと座っていることが多かった。しかし、この教室では買い物ごっこで足し算を学んだり、YouTubeでお話を見ながら英語を学んだり、塗り絵などアートを多用したり、子どもが主体的に学べる工夫が多かった」と田中さん。

 なお、特別支援教諭が常駐しており、試験をして理解度を把握した上で個別に宿題を出したり、テーマによっては少人数クラスで学ばせたり、担任教諭と日常的に連携しているのも印象的だったという。

(2)ウェルビーイングの重視と工夫

 子どもたちの「心と体の健やかさ=ウェルビーイング」が重視されている。休み時間は必ず外遊び、クリスマス近くにはジンジャークッキーを焼いて楽しむなど、さまざまな工夫がなされていた。ほかにも、授業の前後にマインドフルネスを高める呼吸体操や音楽、エクササイズやダンスを授業の途中に行うなど、積極的に体を動かすことが取り入れられている。月ごとに「愛について語ろう」など答えのないテーマで15分ずつ話す時間も設けられていた。

 「楽しい雰囲気づくりがなされており、先生たち自身も休み時間には意識的に職員室に来て休みをとるのには少し驚いた。児童たちが外で遊んでいる間、教室のドアもロックがかけられるので一人で静かに過ごす間を持つこともできる。また、職員室にはソファもありリラックスできる空間になっていて、職員会議の前はスナックも提供される。大人もウェルビーイングを大切にしていることを実感した」(田中さん)

 5~9年生も「ウェルビーイングDay」があり、「自身のセクシャリティについて」「睡眠と食事」「感情のコントロール」など、さまざまなテーマで外部の講師を招いての講義が行われ、生徒たちはクラスごとにディスカッションなどに参加していた。周りや自分への「前向きな声がけ=ポジティブフィードバック」の練習スポットも用意されていた。今どきらしいサイバーハラスメントなどもテーマになっていた。

 「外部の専門講師の連絡先を知ることもでき、第三者へ学校での悩みを相談できるなど、学校が外に開かれている印象があった。臨床心理士やユースセンターの職員など、外部のスペシャリティを持った大人が学校に関わるのはすばらしいと感じた」(田中さん)

 なお、クラスには専属の教員のほか、専門職としてトレーニングを受けたアシスタントや、高校を卒業したてのインターン生もいる。有資格者であるアシスタントは校長とのミーティングにも出席するほか、地域全体で情報を共有している。

(3)フラットでオープンな関係(学校文化)

 校長から教員、アシスタントやスタッフ、田中さんのようなインターンのティーチングアシスタントまで、皆フラットな関係で、さらに子どもともファーストネーム呼びなのも、学校のオープンな雰囲気を表していた。ベテランの先生と新任の先生の間でも、対等にどんどん意見を出し、すぐに判断する。まずやってみて変えていこうという文化があるという。先生たちもウェルビーイングを大事にしており、先生同士でも前向きなフィードバックが多い。ただ校長先生が職員会議で予算などお金の話も出すのには驚いたという。


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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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