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with・afterコロナにつなげる、教科の枠を越えたオンラインでの学び

新渡戸文化学園でのオンライン学習の取り組み 第4回

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 2020年度からオンライン授業の環境を整え、4月の当初から授業を行ってきた、新渡戸文化小中学校・高等学校。本連載ではその実践をお伝えします。第4回では中学校における「Core Learning(教科の基礎となる学び)」「Cross-Curriculum(教科の枠を越えた学び)」「Challenge Based Learning(社会課題の解決に向けて行動する学び)」について、オンラインでの実践をお伝えします。

はじめに

 私は、東京都の公立中学校、高等学校に25年間勤め、2019年度より新渡戸文化学園を中心に、中学・高校の教育改革に携わっています。2020年度から本格的に新しいカリキュラムに挑戦しようとしていた矢先に、新型コロナウイルスの脅威にさらされ、本来やりたかったことの多くが、事実上ストップしました。しかしながら、そもそも目指すべき教育のあり方が大切であって、それはコロナ禍でも変わることはありません。そこで、今回はwith・afterコロナにつながる新渡戸文化中学校の目指す教育に触れながら、オンライン授業の取り組みについてご紹介します。

with・afterコロナにつながる教育のリデザイン

 教育をリデザインする動きはすでにさまざまな学校で起こっています。もともと明治維新以降、約150年間変わらない日本の教育に対する危機感から起きていた変化が、コロナ禍で広がりをもって加速されていると言ってもいいでしょう。

 私の勤務する新渡戸文化学園では、1学期に教員研修をオンラインも含め7回行いました。テーマは「オンライン授業」から「自律型学習者」「いじめ」「評価」まで多岐に及びましたが、コロナ禍の影響もあり、すべての教員が当事者意識を持って取り組み、職場の一体感が高まってきています。

 すべての研修で共通して話してきたことは、「学校教育のリデザイン」についてです。「今、学校教育という部屋が空っぽになった。何もない部屋に何を入れるかをwith・afterコロナを見据えて話し合いましょう」と学校教育をトランスフォームする(作り直す)問いに向き合っています。

 実際コロナ禍で、「一斉に同じことを同じペースで行う授業」「すべてを教員が教える授業」「全員が一斉に参加する行事」「教員がすべてを評価する」といった、これまで学校で当たり前に行われていたことができなくなりました。私たちはafterコロナを見据え、教員が主体となって行われていたこれらの教育活動の主語を生徒に置き換え、生徒主体の教育活動を作っていこうと考えています。このように、オンライン授業のやり方に関する議論は、リセットされた教育の部屋にどういった活動を入れていくかといった観点が重要です。

新渡戸文化学園の目指す教育

 幸い新渡戸文化学園には目指す教育が明確にあり、2020年からいよいよスタートという地点に来ていました。したがって、コロナ禍であっても、目指すべき教育を丁寧にこの部屋の中に入れていけばいいということになります。目指す教育の通過点にオンライン授業があり、オンラインであっても目指すべき教育が変わることはありません。ここでは簡単に新渡戸文化学園の目指す教育について紹介します。

Happiness Creatorと自律型学習者

 新渡戸文化学園の教育活動の最上位目標は「Happiness Creator(幸せを創る人)の育成」です。Creatorとしたのは、自分だけでなく、地球上のすべての人、生物の幸せを作り出す利他的な行動者を育てたいといった考えからで、初代校長の新渡戸稲造先生の人生の喜びを「世の中を良くすること」に見い出す思想にもよります。

 Happiness Creatorの下位目標として、「自律型学習者の育成」をすべての教育活動を通して目指していきます。「自律型学習者」とは、非認知スキルを身に付け、平和で持続可能な世界を作っていくために、より良い選択ができる学習者のことです。非認知スキルは「目標に向かって頑張る力」「人とうまく関われる力」「感情をコントロールする力」といった、これまでの学力テスト偏重型の教育ではなかなか身に付かなかった力です。非認知スキルは自分を律する力とも言えるので、「自立」ではなく「自律」という言葉を選びました。

Happiness Creatorの育成に向けて
Happiness Creatorの育成に向けて

 このように、自律型学習者を育て、Happiness Creatorとして社会で生きていく生徒を育てる過程で、学力試験偏重型の教育から、非認知スキル型の教育への変換を狙っています。ただ、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、学力テストなどで測れる認知スキルを軽視しているわけではありません。自律型学習者は自ら学ぶ力が育まれるので、目的に応じて学び方を変えられるようになり、入試などを突破する学力も結果的に付くと考えています。(このあたりに関心のある方は、拙著『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)を参照していただければと思います)

自律型学習者を育てる「3Cカリキュラム」

 自律型学習者の育成を目指した教育デザインとして、新渡戸文化学園では3つのCで始まるキーワードをカリキュラム改革の軸に置いています。3つのCとは、「Core Learning(教科の基礎となる学び)」「Cross-Curriculum(教科の枠を越えた学び)」「Challenge Based Learning(社会課題の解決に向けて行動する学び)」です。

 Core Learningとは、教科の基礎となる学習で、Cross-CurriculumやChallenge Based Learningを行うための各教科の基礎となる知識や技能を身に付けることが目的です。知識や技能であっても、教員が一方的に教えることはできるだけ避け、生徒たちが目標を設定し、自分のペースで学びを進めることが基本となります。生徒が自分で学ぶことを重視するので、iPadを活用し、「Google Classroom」をプラットフォームとして、「Qubena(キュビナ)」をはじめ、さまざまな学習アプリを取り入れています。幸いこの準備が、オンラインでの自律的なCore Learningの学びをスムーズに始めることにつながりました。

 Cross-Curriculumは、教科の枠を越えていく時間です。物事を複数の教科の視点から学んでいきます。例えば、貧困の問題を英語と生物の視点で考えていくような授業です。問題解決の手段として、教科の知識やスキルを使うようになり、Core Learningとのいい循環も生まれることを期待しています。教科の違う複数の教員で授業をデザインすることで、教科の常識を越えて新しいアイデアも生まれやすくなります。本年度、水曜日の6時間授業を1日通して、複数の教科の教員でチームとなり授業をする時間割を組んでいました。時間割上は教科名が割り振られ、教科の授業時数としてはカウントされますが、生徒の視点では時間割の枠が取り払われた連続した時間となります。

 Challenge Based Learningは、SDGsなどリアルな社会問題の解決に向け、テクノロジーを駆使し、仲間との協働を通して学んでいくProject Based Learning (問題解決型学習)の一種です。問題解決のためのプロジェクトを起こし、解決を目指して、教科をひも付けながら協働して探究していくデザインとなります。ここに企業や研究者、NPOをつなげると学びが社会とシームレスになり、社会でHappiness Creatorとして生きていくイメージを子どもたちは持つようなると考えています。


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