1-1-1モデルから始まったセールスフォース・ドットコムの社会貢献活動
まず、Salesforce.orgとはどのような団体で、どんな取り組みを行っているのだろうか。
「Salesforce.orgは、1999年、セールスフォース・ドットコム(会社)の設立と同じ年に財団として作られました。『1-1-1モデル』という名前で、Time(就業時間)、Equity(株式)、Product(製品)のそれぞれ1%ずつを地域や社会に還元する取り組みを始めました。STEM教育は、このうち『株式』による貢献活動として行っています」(丸野氏:以下同)
1-1-1モデルにおいて、製品貢献とは同社の製品・サービスを非営利団体に無償または安価に提供する取り組み。およそ3万2000団体が同社サービスをこのプログラムで利用している。時間による貢献は、社員の就業時間でのボランティア活動に対する支援が中心だ。同社の社員は年7日の有給ボランティアが認められている。最後の株式による社会奉仕は、主に非営利団体に対する助成事業だ。
STEM教育は社会貢献活動の一環として、NPOへの助成やボランティアの派遣を行っている。そのほか、若年層の就労支援に関する活動に対しても積極的に助成をしているという。助成金の規模は1億6800万ドルに達するが、このうちSTEM教育の支援には特徴があると丸野氏は話す。
「財団のミッションのひとつに、格差是正というものがあります。そのため、STEM教育の支援でも公立校や地域活動を中心に助成を行います。助成がメインなので、特定の技術や製品に特化することはなく、教材や活動費の助成、トレーナーの養成、IT機器やネットワーク環境の整備など包括的な支援を目指しています。具体的な活動としては、NPO法人CANVASが足立区や墨田区で展開するSTEM教育のワークショップ、公立小学校でのプログラミング教育授業などに協力しています。他にもセールスフォース・ドットコムの拠点がある大阪や白浜でも同様の取り組みを行っています」
特定のツールやプログラムに依存しない、包括的な支援
国内では、今のところCANVASを通じた活動が多いものの、助成する団体をそこに限定しているわけではない。現在複数のNPO法人と新しい取り組みも始まっているという。活動は支援団体を通じたものになるため、展開されるSTEM教育で使用するツールは、スクラッチ、ビスケット、Hour of Codeなど多様だ。授業方法も問わない。もちろんセールスフォース・ドットコムの製品やサービスに関係する必要もなく、丸野氏がいう包括的な支援が可能で、支援を受ける側も活動の独立性や自由度が保証される。
この点は、私企業が直接行うCSR活動と違って、財団という独立した組織が行う取り組みの、最大の特徴といっていいだろう。支援は、セールスフォース・ドットコムのビジネスに関係する必要はない。支援を受ける側の団体や学校が、特定企業の営利活動との区別を気にする必要もない。ただし、活動に社員が参加することもあり、素性と背景を明らかにするため社名・団体名を出すようにしているという。
支援を受けた団体は具体的にどんな授業やイベントを展開しているのだろうか。
「墨田区では、まず小学校のパソコンクラブの支援から入りました。低学年の子どもたちにHour of Codeを体験してもらう取り組みです。1年ほど続けて学校との信頼関係も築けたので、翌年は総合学習の時間や社会科での授業へと発展させました。社会科の授業では、スクラッチを使ったアニメーションで、偉人を紹介するクイズを作ったりしました。足立区のギャラクシティという施設ではスクラッチとキネクトを使ったオリジナルゲームを作るというSTEMキャンプを実施しています」
他にも、セールスフォース・ドットコムは、同社のプライベートイベントである「Salesforce World Tour Tokyo」(9月26日、27日開催)ではCANVAS主催による「Kids Coding Camp」が昨年に引き続き開催された。