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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(EdTech動向)

「1人1台PC、インターネット、クラウド――三種の神器が揃った」経産省の浅野氏、自治体格差など次の教育課題を語る

 新型コロナウイルス感染症は教育にも大きな影響を与えている。学校が再開しても、“withコロナ”の時代で学びは変わらざるを得ない。5月末に開催されたアイードのウェビナー「学びを止めない!教育改革最前線から生中継」では、「GIGAスクール構想」や「未来の教室」に関わってきた経済産業省 教育産業室長の浅野大介氏が登場。また、デジタルハリウッド大学大学院教授で早期からEdTechを推進してきた佐藤昌宏氏、アイードの代表取締役会長の宋暁非氏が意見を交換した。モデレーターは関西学院千里国際中高等部の米田謙三教諭が務めた。本記事では、浅野大介氏が語った現在の課題、これからの学びに向けての期待などに注目してお伝えする。

「未来の教室」が向こうからやってくる

 GIGAスクール構想は、小中学校の生徒1人に1台の端末、高速な通信ネットワークの整備などを含むもので、2023年(令和5年)度の達成を目指していたのが、2020年(令和2年)度の補正予算に組み込まれることになった。予定より前倒しの格好だが、これについて浅野氏は、「(新型コロナ感染対策のための)分散登校とGIGAスクールの前倒しにより、『未来の教室』が向こうからやってくる。これが日本の教育を変えるのではないか」と期待を語る。

経済産業省 教育産業室長 浅野大介氏
経済産業省 教育産業室長 浅野大介氏

 2017年に経済産業省内に教育産業室を立ち上げた際、浅野氏は以下の3つのことをやりたいと思ったと振り返る。

  1. 1人1台PC環境の実現
  2. 標準授業時数を柔軟に
  3. 教育職員免許状など教員制度の改革

 1については今回目処が立った。そして児童生徒が端末を手にすることにより、2と3に向けた変化につながるというのが浅野氏の狙いだ。「この3つが変わると、ほとんどのことが変わる」と浅野氏は話す。

 2では、学年ごとに定められている標準授業時数に変革が必要と主張する。背景として浅野氏は、「(教師が)クリエイティブにやろうとすると(標準授業時数に)足を引っ張られる」「生徒に個人差があるというのを認めていない制度」と指摘した。「『何時間勉強すればいい』というのはやめるべき。世の中も働き方改革に向かっており、時間ではなく成果で測る方向にある。学校も同じでは」と続けた。

 児童生徒が端末を手にすることで、教師の役割も変わる。「教師はコーチの役割になる」と浅野氏。データを見ながら指導するスポーツチームのコーチのような存在に変わるべきだと述べた。

 浅野氏は、スポーツと勉強をアナロジー(類推)で考えることを提案する。筋トレやフィジカル トレーニングが、「教科書理解」や「入試に対応できる程度の学力」のための活動で、戦略とゲーム(試合)は「生きる力」を問うもの、と考えることができるというのだ。

 生きる力につながる活動が、STEAM学習、部活動や学校行事運営、キャリアデザイン、社会参画準備などだ。浅野氏は、「強いチームは筋トレをした上で、戦略理解、戦略構築、実践ゲームを繰り返している」とし、基礎学力は重要だが、戦略とゲームにもっと時間を割くべきではないかと考えを語った。

子どもたちが技術を使って考案する学びに、教育制度は追いつける?

 浅野氏が教育産業室で展開した「未来の教室」で座長代理を務めた佐藤氏は、「学習者中心」と「個別最適化」がポイントと説明する。

 学習者中心については、コロナ禍においてソーシャルメディアで広まった「Study With Me」の動きを紹介した。自分が勉強している姿を収めた映像を流しているだけだが、YouTubeではハッシュタグもできており、1万7000人のチャネル登録がある学生もいるという。

 何のためにやっているのかーー「自分が見られているという感覚を持つことでモチベーションを高め、見ている人もミラー効果で自分も勉強をしようと思う“peer pressure(仲間の圧力)”」だと佐藤氏は分析する。「誰から教わるでもなく、汎用的なテクノロジーを使って自分のモチベーションをコントロールしている。これに教育制度がどこまでついてこられるのか」と佐藤氏は述べた。

 個別最適化については、「先生は教室の中で一人一人の状況を見ながらやってきた」と認めつつ、技術の力を借りることでこれを劇的に加速できるという。「先生が一人一人の生徒の違いをデータに打ち込むようになれば、デジタルの個別化が始まる」「個別最適化がデジテルの上に乗ると、効率化とゲームチェンジが起こる」と佐藤氏は考察した。

 浅野氏が問題視した標準授業時数については、「遠隔からオンラインで学んだものは現時点では公教育として認めていない。これが大きな問題」と課題を指摘した。佐藤氏は「子どもたちには学習する権利がある。この学習権が学校だけでなく、どんな厄災下でも実行できる必要がある」と述べ、今後オンラインでの学びを公教育として認める必要があると主張した。

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自治体格差は「ある程度は良いこと」

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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