プログラミング世界大会の審査員を通じて得た気づき
はじめまして。株式会社富士通ラーニングメディア所属の大木宏昭です。当社は富士通グループの人材育成企業として、AIやクラウドなどITを中心に年間9万人以上のお客さまに人材育成サービスを提供しています。3年前からは子ども向けプログラミングスクール「F@IT Kids Club(ファイトキッズクラブ)」を開校し、子どもたちの育成にも取り組んでいます。
そのような活動をする中で、「WRO(World Robot Olympiad)」というロボットプログラミングの国際大会の審査員をする機会をいただきました。WROは、世界約70カ国から参加するロボットプログラミングのオリンピックともいえる大会です。私は本大会におけるオープンカテゴリー(事前に与えられたテーマに沿って設計・プログラミングしたロボットをプレゼンテーションする競技)において、2018年度と2019年度の日本全国大会、また、2018年度のタイ国際大会の審査員を務めました。子どもたちのプログラム、プレゼンテーションを審査する過程で、世界と日本の子どもたちの違いに気づきました。今回は、その審査員活動で感じた、世界と日本の子どもたちの違いから、今後のプログラミング教育について考えていきたいと思います。
世界の子どもたちは課題設定する力、調査・分析する力が優れている
世界と日本の子どもたちの違いはどこにあるのでしょうか?審査をする中でプログラミングの「技術力」に大きな差があるとは思いませんでした。「チームワーク」や「プレゼンテーション」に関しては、日本の子どもたちの方が優れています。一番の違いは何かというと「課題を設定する力」や「調査・分析する力」です。
- 技術力…世界も日本も変わらない
- チームワーク、プレゼンテーション…日本の方が優れている
- 課題設定力、調査・分析力…世界の方が優れている
もちろん、これは私が審査したオープンカテゴリー競技での話なので「そんなことない」という声もあるかもしれません。ただ、日本全国大会でたくさんの子どもたちを見てきた中で、「課題を設定する力」や「調査・分析する力」については、世界の子どもたちと差があると感じています。
例えば、WROタイ国際大会での解決すべきテーマは「Food Matters(食料問題)」でした。子どもたちは食料問題という壮大な社会課題を解決するためのロボットを考えていきます。世界の子どもたちが何をやっていたかというと、あるチームは実際に農場に足を運び、そこから仮説を立てて課題を紡ぎ出すなど、食料を作ることの楽しさや難しさを自ら体験していました。農場の人にインタビューをし、生の声を聞き出していたのです。つまり、課題自体にリアリティや裏付けがあり、そして自分事として捉えることができていました。子どもたちは、そのリアルな課題を解決するためにプログラミングを行い、ロボットを創り出していたのです。
世界の子どもたちに比べて、日本の子どもたちは、技術ありき、答えありきの発想が多いように感じています。どこかのニュースで聞いたことがある、答えありきの発想、実現できる技術や流用できる技術から設定した現実感のない課題。調査・分析、仮説もなく設定された表面的な課題を解決するためのプログラミングに、どれくらいの価値があるのでしょうか。世界の子どもたちを見ていると、プログラミングを学ぶ本当の目的が見えてくると思います。