学校の課題を解決するアイディアコンテスト
本稿では、2月9日に開かれた「SOCIAL FIGHTER AWARD U-18」を紹介する。「SOCIAL FIGHTER AWARD」は、社会の課題をテクノロジーで解決するコンテスト。一般向けに昨年第1回が開催され、「学校の課題を攻略せよ。」をテーマにさまざまなプロダクトが出品され、9月に最終審査会が行われた。
同じ趣旨で、年齢を18歳以下に限定して今回実施されたのが「U-18」版だ。挑戦者はLITALICOワンダーに通う子どもたちで、昨年12月のアイディアソンを経て、LITALICOのクラス時間などを活用し自分のアイディアを形にしてきた。この日は3人の審査員を迎えて最終プレゼンと審査が行われた。審査員は、一般向けの「SOCIAL FIGHTER AWARD」でBEST OF SOCIAL FIGHTER賞とオーディエンス賞を獲得したエンジニアの金沢圭氏、株式会社Millennium Kitchen代表の綾部和氏、株式会社LITALICO 執行役員 CTOの岸田崇志氏が務めた。
子どもたちそれぞれが感じていた課題を自ら解決
では、最終審査に登場した6名の作品を登場順にご紹介しよう。
注:各発表者の学年はイベント開催時のもの。
(1)「学校で宿題をやる!」(小4・gobounobaka)
学校で宿題を終わらせて、家では好きなことをしたいgobounobakaさんは、先生が学校で宿題をするのを禁止するのが困りごと。そこで、先生と生徒の会話で先生の許可を勝ち取るストーリーをScratchでゲーム化した。
先生からの質問に生徒がうまく答えていけば、最後に先生を説得できるというもの。想定通りの答えをしないと、先生の許可を得られずに終わってしまう。gobounobakaさんの課題に対する強い思いが作品に表現されている。
(2)「トイレ電波」(小3・ほわほわ)
ほわほわさんは、授業中にトイレに行きたくても先生に言うとクラスの皆に知られてしまう、という課題を解決する作品を作った。
トイレに行きたいときにmicro:bitのボタンをこっそり押すと、無線で先生のパソコン上のScratchプロジェクトに通知が行く。先生が○か×を入力すると、児童のmicro:bitのLEDに○か×が表示されるという仕組みだ。無線で簡単に通信できるmicro:bitとScratchの連携は、Scratch3.0から簡単にできるようになり可能性が大きく広がった。この仕組みを使い秘密の相互連絡ツールを作り出した解決策が共感を呼び、オーディエンス賞に輝いた。
(3)「宿題漢字変換マシーン」(小4・apple)
宿題で漢字を何度も書かなければいけないことを面倒だと感じていたappleさんは、コンピューターが漢字を代わりに書いてくれる仕組みを考えた。
読み仮名を入力するとプログラムが漢字の変換候補を表示してくれる。今回の開発はここまでとなったが、計画では、小学校で習う漢字だけを表示し、さらに選択した漢字を反復して印刷できるようにする予定だ。Pythonでプログラムを書き、漢字変換には教室でアドバイスを受け、Yahoo!のAPIを活用している。審査員からは、「面倒くさいから自動化したいという思考はとてもエンジニア的」との感想が出た。
(4)「ゲーム感覚で出来る勉強ドリル」(高1・しーころー)
しーころーさんは、勉強に意欲がない人でも楽しく勉強ができるように、ゲーム感覚でドリル学習ができる作品を作った。
計算問題に3択で答え、正答するとスコアが上がっていく仕組みを、JavaScriptのフレームワークであるenchant.jsでプログラムした。現状は点数が表示されるだけだが、今後はRPGのようなゲーム性を持たせたいと考えているという。また、問題や解答がプログラムに直接書き込まれているので、別管理できるように改良すればより汎用的に使えそうだ。審査員からは「『ゲーミフィケーション』や『仕掛学』のような発想がいい」という声があがった。
(5)「裁判の、検事ロボット」(小5・マックス)
学校で先生から誤解をもとに注意されたり、誰かが注意されて連帯責任で授業が止まったりすることに納得がいかないマックスさんが考えたのは、先生に子どもの意見を聞いてもらうためのロボット。
子どもと先生が対等に話し合える裁判のシーンをイメージし、LEGOマインドストーム EV3で検事ロボットを作った。一定ルートを走行している間に、赤外線センサーが人がいるのを検知したらロボットが止まり、「異議あり!」という音声と共にアーム状の指が動いて人を指すようになっている。実用とはいかないが、こんな風に懸命に作られたロボットに指を差されたら、先生の気持ちがやわらかくなりそうだ。
(6)「Quiz Trial」(高1・MAX)
MAXさんは、学校の勉強が何でも紙に書くことを求めるのに疑問を感じ、Google アシスタントを使って音声で練習問題をやる仕組みを作った。
問題は音声で出題され、解答は3つの選択肢から口頭で答える。手指に不自由がある人など、文字を書くのが苦手なでも練習問題や暗記の学習ができるといった課題解決になる。Google スプレッドシートで教科のジャンル、問題、解答などを管理しているので、自分で問題を作ることもできる。友人の意見から、作った問題を交換し合える仕組みの着想も得たところだ。開発はGoogleがオープンソースで出しているプログラムをもとに改変した。視点と技術が評価され、審査員賞(BEST TECHNOLOGY賞)が贈られた。