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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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高度人材育成事例(プログラミング教育)

プログラミングで社会課題解決をはかる学生を企業が支援!「Code for Happiness」の取り組み


 株式会社リブセンスでは2018年夏に「Code for Happiness」という、社会課題解決をプログラミングの力を活用して行おうとする学生を支援する制度を始めた。これは、学生が自ら解決したい社会課題と解決方法を提案し、8~9月の2カ月間専念できるよう1名あたり50万円の金銭的サポートを行うとともに、リブセンスのエンジニアがメンターとして定期的に助言するという取り組みである。本稿ではその意義をお伝えし、取り組みについて振り返る。

IT企業が学生の取り組みを支援する意義とは?

 リブセンスはITエンジニア専門の転職サイト「転職ドラフト」や、ビッグデータを活用した不動産情報サイト「IESHIL」を運営する企業である。もともとは、私たちが採用したいエンジニア志望学生に通常のインターンや採用活動以外でも接点を持つためにはどうすればいいか、という検討からスタートした。リブセンスは会社として「幸せから生まれる幸せ」という、自分以外の誰かを幸せにできたとき、自分も幸せになれるという利他的な哲学を追求しており、かつ「あたりまえを、発明しよう」という、社会課題解決にテクノロジーを活用して取り組むことを事業とし、新しいあたりまえをビジネスを通して社会に定着させていこうというビジョンを掲げている。つまり、将来の仲間の候補として、社会課題解決に興味があり、その実現手段としてITを武器にしたいと考えるような学生にどうしたら会えるか、というところが始まりである。

 従来型のインターンは、企業の実務の一部を学生の間に経験してみるという形をとる。これはこれで「お互いお試しで一緒に仕事をしてみる」「実務を通して学生に会社や社員を知ってもらう」という点では重要である。ただ、学生が企業ですでに取り組んでいることを体験するだけで良いのだろうか? 本来、大学のあり方、学生時代のあり方を考えると、企業では経験できないことに存分に取り組むべきなのではないだろうか。

 本稿の筆者は10年以上ITエンジニアの新卒採用に関わってきた。そこで感じてきたことは、日本の学生は教科書に書かれいてる正解を学ぶこと、先生や先輩の言われた通りに開発したり、研究したりという、受け身から始まる活動は得意だが、自分で意味のある課題、まだ正解のない問題を見つけ出して、それに取り組んで成果を出すという自発的な活動経験が少ないと感じてきた。

 また、IT企業側から見れば、今まで誰も見たことのない新しいプロダクトを生み出すことで世の中にインパクトを与え、大きなビジネスにしようと考えているので、自らまだ解決していない課題を見つけて、解決方法を動くプログラムにまとめ上げるという意志を持ち、何が正解かはわからないが手を動かして模索する、いろいろ試して良い方法を見つけようとするチャレンジ精神旺盛な人材を求めている。少し極端な言い方をすると、受け身で従順な後輩を求めているのではなく、経験は少なくても独自の意志と視点を持ち自発的に活動していきたいという同僚を求めているのである。ここに、そもそもギャップが存在している。

 つまり、学生時代に企業が接点を持つならば、すでに企業内で課題と明確になっているものに取り組んでもらうより、自発的に社会課題を見つけている人、それを解決しようとしている人にアプローチして、その活動を支援するほうが、私たちがこの業界に不足している人材の育成につなげられるのではないか。そう考えた結果が、このCode for Happinessである。

 類似の先行事例には、Googleによる「Summer of Code」や、IPAが行っている「未踏事業」がある。Summer of Codeは領域がオープンソースに限定されること、オープンソース・コミュニティが取り組んでもらうテーマを用意しており課題が選択式になっていること、IPAの未踏事業は学生に限定せず、より長期の取り組みをターゲットにしており、社会課題解決よりも技術的チャレンジに重きが置かれていることが、それぞれCode for Happinessとの相違点となっている。

Code for Happinessにおける支援のルールと仕組み

 学生からの提案は書類の形で受け付けた。応募書類には以下の内容を要求し、どのようなものをどれくらいのスケジュールで開発するか宣言してもらっている。

開発のねらい

  • どんな課題を解決しようとするか
  • 上記の課題をどのように解決するか
  • 想定するユーザー
  • 既存の類似の仕組みは何か、またそれとの違い
  • 課題を解決できたときの社会的価値

開発物の仕様

  • ユーザーにどのような機能が提供されるか(機能一覧やユーザーストーリーなど)
  • 主要な画面のイメージ(2~3画面程度、ワイヤフレーム、モックアップなど)
  • どのような形態で提供されるか(Webアプリケーション、スマホアプリ、コマンドラインツールなど)
  • 今回の期間でどこまで完成させるか(開発スコープ)

技術や開発プロセス

  • 利用するプログラミング言語
  • 利用するフレームワーク、主要なライブラリ
  • 動作環境(OSやインフラストラクチャ)
  • メンバー間の役割分担
  • 開発タスク概要とスケジュール

 Code for Happinessはビジネスコンテストではなく、実際に手を動かして開発する人を支援するものなので、1チーム1~3人までとし、少人数で全員がプログラミングやデザインを自ら行う形態に限定している。

 審査は以下4点を重視して実施した。

  • 社会的な意義があり、現状の課題が解決できるか
  • 開発のスコープが明確であり、完成を判断できる内容になっているか
  • 実現可能な仕様が選ばれているか
  • スケジュールに実現可能性があるか

 書類選考の結果支援対象となった個人にはまず10万円を支払い、当初計画に沿った形で開発をやり遂げて中間審査・最終審査を通過した人には追加でそれぞれ20万円ずつ払う形にした。つまり、最後まで審査を通過できれば、個人あたり50万円が支払われ、2名のチームであればチームとして合計100万円受け取れる仕組みである。支払いタイミングも学生が活動しやすいよう審査後1週間以内にしている。

最終審査の様子
最終審査の様子

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どのような活動を支援したのか

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この記事の著者

能登 信晴(株式会社リブセンス VP of Engineering)(ノト トキハル)

 1996年、慶応義塾大学環境情報学部 (SFC) 卒業後、日本電信電話(NTT)入社。情報通信研究所、サイバースペース研究所にて検索エンジンの研究開発に従事。  2004年、ディー・エヌ・エーに入社し、以来さまざまな製品の企画・開発を行うとともに、2008年よりエンジニアリンググループのマネジメ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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