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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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千葉工業大学が「AI大学講師」を国内初導入、AIが学習履歴を理解したうえで個別最適化された指導を行う

 千葉工業大学は、DOUと共同開発した「AI大学講師」を導入したことを、5月12日に発表した。日本の大学教育において、AIが講師として正式に導入されるのは今回が初の試みとなる(同学・同社調べ)。

 同サービスの特徴は、単なるAIチャットボットではなく、学生の全学習プロセスを「Verifiable Credential(検証可能なデジタル証明書、以下:VC)」として記録・蓄積する点にある。このVCと連携したAIが、一人ひとりの学習履歴を理解したうえで、個別最適化された指導を提供する。

 AI大学講師は、学生との対話を通じて思考プロセスの言語化を促し、自らの考えを整理・表現する力を育成する。「なぜそのように考えたのか」「別の視点からはどう捉えられるか」といった問いかけにより、学生は自分の思考を体系的に整理し、表現する機会を得ることが可能となる。

 また、同システムではVCを活用することで、AIが直面する重要な課題も克服している。教育機関が電子署名を付与した信頼性の高いデータを基盤とすることで、不確かな情報や裏付けのない説明がAI講師から提供されることを未然に防止。これにより、学生は常に正確な情報に基づいた指導を受けられる。

 授業修了時には、講座内での学習成果を総括した内容がVCとして発行される予定となっている。修了時に発行するVCは、その信頼性確保にブロックチェーン技術の一部が活用されている。これにより、学生は就職活動などの場面で、自身の学習成果や能力を客観的かつ信頼性の高い形で証明することが可能になる。

 同サービスは、次の4段階のプロセスで機能している。

1.学習データのデータベース化

 学生が授業内で取り組んだ課題や発言、質問などあらゆる学習活動をデジタルデータとして記録する。これにより、学習過程の可視化が実現し、学生自身も自分の成長を振り返ることができる。

2.デジタル証明書の発行

 収集された学習データは国際標準規格であるVCとして発行される。Web技術の標準化を推進する非営利団体W3Cによって標準化されたこのデジタル証明書は、改ざん不可能かつ永続的に保存される特性を持ち、学生の学習成果を客観的に証明する。

3.生成AIとの連携

 発行されたデジタル証明書は、専用のAPIを通じてカスタマイズされたChatGPTの機能「GPTs」に連携され、学生一人ひとりの学習履歴や特性を分析するためのデータソースとなる。

4.対話的サポート

 蓄積されたデータを基に、AIが個別最適化された対話型の指導を提供する。AIは学生の学習パターンやつまずきやすいポイントを理解したうえで、最適なタイミングで適切な問いかけや助言を行い、学習をサポートする。

 今回導入されるAI大学講師は、千葉工業大学の変革センターが提供する「web3・AI概論」の授業内にて実証実験が行われている。同実験では、従来の教育手法と比較し、次の項目を中心に教育効果を定量的に検証する。

  • 学習内容の理解度と定着率
  • 批判的思考力と問題解決能力の向上
  • 自主学習時間の変化
  • 授業満足度と学習継続率
  • 中退率・離脱率の改善

 現時点では、AIによる個別最適化された指導が学生の知識獲得と、その長期的な定着にどのような影響を与えるかという点に照準を合わせて実験を行っている。また、AIとの対話を通じた「なぜそう考えるのか」「別の視点からはどうか」といった問いかけによって、学生の思考の深さと柔軟性がどのように変化するかも追跡する。

 同実験は、授業が終了する7月まで実施し、定量的・定性的の両面からデータの収集・分析を行う。実験結果を基に必要な改良を加えたうえで、全国の大学への段階的な展開を計画している。

 また、同サービスを導入することで、期待される効果は次のとおり。

1.大規模講義と個別最適化の両立

 従来の大規模授業では、教員が数百人の学生一人ひとりに合わせた指導を提供するのは難しい状況にある。同サービスの導入により、教員は全体指導に専念しながら、AIが各学生の理解度や進度に応じたサポートを並行して行うことができる。大規模教育の効率性と個別最適化の質を同時に確保し、教育環境を整えることが可能となる。

2.対話型学習による思考力の向上

 同システムは単なる知識提供ではなく、「この結論に至った理由は何か」「別の観点からはどう考えられるか」といった問いかけを通じて、学生自身の思考プロセスを深める手伝いをする。このような対話的アプローチにより、批判的思考力や多角的な視点の獲得など、深い学びを効果的に支援する。

3.多言語対応によるグローバル教育の強化

 国際化が進む日本の大学では、留学生への教育の質をいかに確保するかが課題となっている。同サービスは複数言語に対応し、留学生が母国語でのサポートを受けることが可能。言語の壁を越えた学習環境の提供は、多様な背景を持つ学生が等しく質の高い教育機会を得ることにつながる。

4.一貫性のある継続的な学習支援の提供

 従来の教育システムでは、担当教員の交代や異なる科目間での情報共有の不足により、学生の学習体験に一貫性を欠くことがあった。同サービスは、学生の学習履歴を統合的に管理し、カリキュラム全体を通じて一貫した指導を行う。これにより、科目間の関連性の理解が深まり、体系的な知識の構築と長期的な学習効果の向上につながる。

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https://edtechzine.jp/article/detail/12482 2025/05/13 14:10

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