旺文社は、同社独自のリストに基づく全国の国・公・私立高等学校5004校を対象に実施した、全国の高等学校におけるICT活用状況についての調査結果を2月13日に発表した。同調査は、2024年12月上旬〜2025年1月中旬の期間に行われ、661校から回答を得ている。
調査対象の高等学校に、生徒用ICT端末の配備状況を尋ねたところ、「生徒1人に1台」が95.3%を占めた。費用負担や端末機種の指定有無などについて尋ねた質問では、「個人費用負担/学校指定端末」(40.2%)がもっとも多く、「学校費用負担/学校指定端末」(33.4%)がそれに続いており、端末の機種を学校が指定しているケースは計75.9%に達している。
端末の機種を共通化しない場合、自由度や調達面でメリットがあるものの、高等学校からは「使用するアプリケーションに制限がある」「端末ごとに造りが異なるため充電や修理などの管理が大変」といった意見が寄せられた。
一方で、「個人費用負担/機種の指定なし」は18.6%で、「個人費用負担/学校指定端末」と合わせた割合は58.9%に達している。
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導入している生徒用ICT端末の種類を尋ねたところ、「タブレット型」(82.6%)が最多となったが、「タブレット型」の導入校からは「大学入学・就職後のことも考慮してパソコンに操作性の近い端末を選んだ」「プログラミング学習に適したキーボード付きの機種を希望」といった意見もみられた。
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ネットワーク環境の整備状況について尋ねた質問では、2017年度の調査以降はじめて「校内のどこでも無線でのネットワークを使用できる」という回答が54.6%と、半数を超えた。「校内の通常教室で無線でのネットワークを使用できる」と合わせた割合は86.7%となっている。
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しかしながら、生徒用ICT端末活用についての課題を尋ねたところ、「安定したネットワーク環境の整備」が半数超となり、端末数の増加とネットワーク利用ケースの拡大に、安定した通信回線の整備が追い付けていない状況がうかがえる。そのほか、「教員側が授業のたびにプロジェクターを準備するのが大変」「端末を使っての学習を前提とした授業を行うには机が狭すぎる」といった声も寄せられている。
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導入した生徒用ICT端末の効果的な活用について尋ねた質問では、「十分活用できている」という回答が2024年度調査より9.1ポイント増の22.2%となった。「まあまあ活用できている」(62.5%)と合わせた割合は、2017年度の調査以降はじめて8割超となった。
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ICT活用の必要性を感じるポイントを尋ねたところ、「必要性は特に感じていない」を除くそれぞれの選択肢の回答割合が軒並み減少した。とりわけ、「映像授業・動画視聴」(39.6%)、「オンライン遠隔授業」(32.7%)、「リモートでの課題配信」(46.3%)といった、デジタル技術ならではの機能を活かした用途が大きく減少している。また、新型コロナ禍で需要の高まった「生徒や保護者との連絡」(41.8%)も、前回調査より16.9ポイント減となった。
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AI技術・ツールの活用について、「授業や生徒指導にかかわる校務」「学校運営に関わる校務」「学校行事や部活動」「保護者への対応」の4つのシーンに分けて利用状況を尋ねた質問では、いずれもほぼ同様の回答傾向となり、「十分活用できている」と「まあまあ活用できている」を合わせた割合が約3割となっている。
AI技術・ツールを積極的に活用している高等学校からは、「教材作成や進路・進学指導の補助に利用」「実際生徒に生成AIを利用させて何が問題点か考えるための教材にした」といった、さまざまな用途や事例が寄せられた。
一方で、AI技術・ツールを「活用できていない」という回答が約7割を占めており、「AIの利用に際しては自治体への届け出や保護者からの同意書が必要」「個人情報の漏洩や著作権侵害の心配がある」といった声も多く寄せられている。
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