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大学のDX事例紹介

外部委託が難しいとされる教務課の業務──BPOは導入できるのか? 追手門学院大学の挑戦

 近年、大学職員の働き方改革が進む中、業務プロセスの企画・設計から運用までを外部の専門家へ委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の導入もひとつの選択肢となっている。しかし、学生や教員に関わる業務も多い「教務課」については、業務が多岐にわたるほか、大学特有のシステム等に依存する部分も多く、外部委託が難しいとされてきた。そうした中で、追手門学院大学の教務課ではバーソルビジネスプロセスデザインのBPOを導入し、業務のスリム化が実現。同学はどのように教務課でのBPOを成し遂げたのか。導入にあたっての課題と乗り越えた過程を聞いた。

教務課がやるべき「本来の」業務に集中するため、BPOを導入

──追手門学院大学では、BPOを導入する以前から教務課の一部業務をアウトソーシングしていたと伺いました。BPOの導入に至った経緯を教えてください。

追手門学院大学 人事課 阿部氏(以下、阿部):BPOの導入以前は、一部の業務をアウトソーシングしていました。2013年ごろから、教室管理や試験関連、備品管理といった切り分けやすい業務を、パーソルビジネスプロセスデザインさんにお任せしたのが始まりです。その後、徐々にほかの業務もアウトソーシング可能ではないかと検討し、授業の履修登録の手続きや、証明書の発行といった業務も委託するようになりました。

 ただ、この時点ではBPOのように業務プロセスを丸ごと委託することは難しく、切り分けた一つひとつの業務をお任せする形にとどまっていました。

追手門学院大学 教務課 伊藤氏(以下、伊藤):そうした中、2017年ごろから今後の大学運営を見据えて、職員の役割や業務の見直しが進みました。新しいキャンパスを創設し、一気に学生数が増えることで業務量の増加が見込まれたため、効率化は不可欠でした。また本学の方針として、大学職員の本来の役割である「企画」や「提案」に注力していきたい思いもありました。

 そういった理想に対して、2つの問題がありました。ひとつは、限られた人数の職員で日々の業務に対応することで精いっぱいで、企画・提案に割ける時間がないという問題。特に、次年度の準備が本格化する1月~3月は残業が常態化していました。もうひとつは、職員の人事異動や派遣スタッフの入れ替わりによって、業務の遂行が不安定で、人材育成に業務時間がとられてしまうという問題です。

 これらの課題を解決するためにBPOという選択肢を検討し、それまでもアウトソーシングをお願いしていたパーソルビジネスプロセスデザインさんに相談したという経緯です。

パーソルビジネスプロセスデザイン 玉井氏(以下、玉井):実は、弊社が大学のBPOを受託しているケースの8割は奨学金業務が占めています。教務課へのBPO導入は、弊社では追手門学院大学さまが初めてで前例がなかったため、プロジェクトは試行錯誤しながら始まりました。弊社の社員を配置して運用する中で、教務課の業務を把握し、業務範囲を徐々に広げながら現在に至ります。

 伊藤さんが弊社の元社員であり、追手門学院大学さまでプロジェクトリーダーを務めたことにより、両者をつなげる役割を果たしてくれました。

──教務課でのBPO導入にあたり、ぶつかった障壁はありましたか。

阿部:教務課の職員は学部ごとに分かれて業務を担当しており、各学部が独自に行っていた業務を均質化する過程が難しかったですね。例えば、休講となった授業の補講手続きは学部ごとに独自のフローが存在し、それぞれの担当者が行っていました。それだけでなく、成績証明書や卒業証明書の発行といった、学部ごとに分ける必要はないはずの業務も、各職員は担当学部の学生から受けた依頼にしか対応できない状態だったのです。

 このように縦割りになっていた業務をすべてつまびらかにして、ほかの学部や部署が何をやっているか共有することに、抵抗感を抱く職員もいました。その中でどの学部のやり方が最も適切なのか、方法をすり合わせるにあたっても、困難がありましたね。

次のページ
業務プロセスを整理して年間の業務量を均等に

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

 IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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