アルバ・エデュと山梨大学大学院総合研究部小野田亮介准教授は、「社会への関与を志向したプレゼンテーション授業」が学習者の動機づけに与える影響を検証し、その成果を論文として10月20日に日本教育工学会論文誌にて発表した。
同研究は、主体的に社会へ関与することの意義を伝え、その方法としてのプレゼンテーションの指導を行うことによって、学習者が自身のプレゼンテーション能力に対する期待や、能力獲得への価値づけを高める可能性を示すものであり、プレゼンテーション指導の質を高めるための示唆に富む知見を提供している。
同研究における実践1つ目では、小学5・6年生と中学1年生の計184名に対してプレゼンテーションの価値伝達と基礎的な方法指導を実施。「主体的に社会に関与することの意義」を具体的に伝えて、そのための効果的な方法としてプレゼンテーションを位置づけた上で、「考える」「伝える」「見せる」の3観点からプレゼンテーションのコツを指導した。参加した学習者は、そのコツによりグループ演習を通じてプレゼンテーションの内容を練り上げ、自身の興味に基づいて自由にプレゼンテーションを行っている。
その後、学級風土に対する認識を統制した上で、社会への関与態度とプレゼンテーションに対する期待・価値の変化を検証した。結果としては、授業を通じて学習者の社会への関与態度、およびプレゼンテーションに対する期待と価値の評価が、どちらも向上する傾向が確認されたという。
また実践2つ目として、中学1年生99名を対象に質の高いプレゼンテーションを追求。その中で、論理的な構成やストーリーテリングを駆使することによって、聞き手を説得する効果が高まることを体験させつつ伝えた。さらに、使用する資料のビジュアル性によって印象が大きく変わることを具体例とともに説明し、ICTを用いたプレゼンテーションの内容を実際に構想させた上で、質の高いプレゼンテーションを行うための指導を実施している。
その後、授業を通じて生じた社会への関与態度の変化と、プレゼンテーションに対する期待・価値の変化との関連を検証したところ、授業によってを通して社会への関与態度を高めた学習者ほど、自身のプレゼンテーション能力に対する期待を高める傾向が示された。小学5・6年生と中学1年生に対して行われた授業と比較して、発展的な内容だったことから、プレゼンテーション能力に対する期待が低下する懸念もあったものの、社会への関与を達成するための方法としてプレゼンテーションの方法を学ぶことで、動機づけが維持・促進される可能性が示されたとしている。
今回の研究結果では、社会に主体的に関わること、またそのためのプレゼンテーションの価値という自明とされがちな価値について、改めて明確かつ具体的に伝えることの重要性を示唆している。授業によって形成された社会への関与態度は、「好きなことを自由に話すプレゼンテーション」から「説得力を高めるための方法に沿ったプレゼンテーション」への質的転換において、学習者の動機づけを維持・促進することに貢献すると考えられる。さらに社会への関与態度は、あらゆる教科で促進可能なことから、今後は教科横断的な指導の方法やその効果についての検討も重要と指摘している。
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