非情報部門の職員が開発した業務システムの事例
自動車入構許可申請システム
──では、実際にどんな業務システムを開発されたのか教えていただけますか。
池田氏:私が開発したのは「自動車入構許可申請システム」です。2023年の12月、当時総務係に所属していたときに開発しました。キャンパス内に教職員や学生が自動車で入構する際、従来はExcelで申請書を受け付けていました。それをシステム化することで担当職員の業務負担を軽減し、かつ効率化しました。
システムの構造はシンプルです。「Microsoft Forms」「Microsoft Power Automate」「Microsoft SharePoint」といったツールを用いて、申請受付から資料作成までをシステム上で完結するようにしました。
このシステムによって、申請者がいつでもどこでも申請できるだけでなく、担当職員の負担も大きく軽減しました。以前は、年間約130件もの申請を手入力やExcelからの転記で処理していたため、ヒューマンエラーが起こりがちでしたが、その問題も解消できたのです。
実際に開発に取り組んで感じたのは、システム開発の前段階における、業務フローの理解と見直しが重要だということです。加えて、上長のシステム開発への理解、了承も大事でした。
私はハンズオンで得た初級レベルの知識を使って、10時間ほどでこのシステムを開発しました。ハンズオンを通して「初心者でも簡単にできる」という印象を受けたので、応用して今回のシステムを作ることにしたのです。
今回作ったシステムは一部局での運用に限られていますが、全学では年間2500件以上の入構申請があります。全学で効率化すれば、約417時間の工数を削減できるはずなので、今後は全学にシステムを広げていきたいですね。
Power BIを用いて医学部附属病院のデータ収集・分析を自動化
浪越氏:私は香川大学医学部附属病院で、経営企画を担当しています。大学病院は最新の医療を提供するため、さまざまな医療機器や薬剤への投資を行います。その活動を支えるための健全な病院経営も非常に重要です。そこで、病院経営においてデータに基づいた適切な意思決定を行えるよう、Microsoft Power BIを使ってシステムを構築しました。
システム開発前の課題は、データ収集やそれにまつわる作業に時間がかかってしまい、新しい取り組みや企画の検討に時間が割けないことでした。今回作ったシステムによるデータ収集と分析の一元化により、企画立案に時間を捻出できるようになったのです。
例えばPower BIを使うことにより、病床規模などの調べたい指標について他大学とのベンチマークを行い、比較することが容易になります。そして、ベンチマークを参考にしながら必要に応じて運用の改善検討を行います。その後、運用改善したところをモニタリングし、問題が生じている部署があればヒアリング等を実施しています。
実際の効果として、Power BIを活用した経営によって「入退院支援加算」という項目が改善し、この項目だけで2600万円の増収につながっています。
こういった分析が、ノートパソコンやタブレット端末さえあれば、場所を問わず可能になりました。作業が圧倒的に楽になるので、質と継続性が向上します。
Power BIは「難しそう」と言われることも多いのですが、実はそこまで難しくありません。むしろ、既存のデータが「神エクセル」のような扱いづらい形式で保管されていることが、事態を難しくさせています。データ形式の標準化を行うだけでも、Power BIの敷居は下がると思います。
本学では2022年からデジタルONEアンバサダーの取り組みが始まり、ますます多くのデータが生まれています。今後はそういった数多くのデータを紐づけて、よりデータドリブンな経営を目指していけたらと考えています。
貸出物品リストシステム
成重氏:私は教育・学生支援部学生生活支援課で、学生支援に関するサポートを行っています。
私が開発したのは「貸出物品リスト」のシステムです。ハンズオンの内容にはなかったのですが、DXラボの学生が開発した「落とし物管理システム」を参考に、ツールや開発方法を調べながら作りました。
職員が貸出可能な物品名と保管場所、写真を登録すると一覧に追加される仕組みです。また、物品を借りたい学生は申請画面から使用目的や返却日などをフォームに入力するだけで申請可能です。見栄えをよくするために、起動時のスプラッシュ画面にGIFアニメでロゴを作成するというこだわりも加えました。さらに、同じ仕組みを応用して、防災の備蓄品を管理するシステムも開発しました。
今回、システムを開発するにあたっては今までの業務フローを見直す必要があり、業務に改めて向き合う機会としてもやってよかったと感じます。
私は新しいチャレンジをしたいという思いがあったので、自ら手を上げてアンバサダーになりました。最初はハードルが高いと思っていたものの、やっていくうちに「自分でもできる」と感じました。アンバサダーという肩書があることで使命感が醸成されるのもよい点です。
また、私は課長なので自分一人だけでなく周りのメンバーや部下を「一緒にやろう」と巻き込むことを意識して活動してきました。現在は部下がアンバサダーを務めていますが、私も負けないように引き続き精進するつもりです。