ガイドライン作成の背景にある「デジタル系大会の課題」
一般社団法人デジタル人材共創連盟(デジ連)は、日本の高校生・中学生などのデジタル関連活動を支援する目的で、2022年に設立された。「情報I」の必履修化や「情報II」の設置により、コンテストなどのデジタル活動に参加する中高生が増えている。一方で、その活動を支える教育現場には、情報・人材が少ないことや発表の場が不十分であるなど、課題も多い。
そこでデジ連では、高校・中学校などの教員に向けて情報の提供や支援を実施。そのひとつが「ガイドライン部会」によるデジタル系大会支援の取り組みだ。
生徒がデジタル系大会に安心して参加できるように、基盤となるガイドラインを作成し、大会運営に周知するという。ガイドラインの作成にあたっては、有識者や大会出場者が意見を交わし、ジェンダーバランスを含めたインクルーシブな大会を実現するための議論が行われている。
デジ連がここまでガイドラインの作成に注力するのは、既存のデジタル系大会に課題があるからだ。
デジ連の代表理事を務める鹿野利春氏は、公立高校、教育委員会、文部科学省での勤務を通して、長年情報教育の施策に携わってきた。鹿野氏は「デジタル人材は男女分け隔てなく育成すべきなのに、中高生向けのデジタル系大会では参加者のほとんどが男子生徒というケースもある」と語る。また、高度な成果物の提出が求められるなど、応募者の技術レベルが限定される大会も多い。情報Iが必履修化され、すべての若者をデジタル人材として育成しようとする流れがある一方で、デジタル系大会に参加する生徒に偏りがある点には大きな問題があると言える。
この現状を変えるべく、デジ連ではガイドライン部会の会長である佐々木成江氏を中心に、ガイドラインの作成を進めている。生物科学を専門とする研究者の佐々木氏は、内閣府の男女共同参画会議専門調査会の委員でもあり、ジェンダーギャップにまつわる課題に長年向き合ってきた。
デジ連がデジタル系大会のガイドライン作成を牽引する意義を、佐々木氏は次のように語る。
「ただ各大会の運営者へガイドラインを作るように呼びかけても、きっと何から手を付けてよいかわからないのではないか。まずは私たちが見本となるものを作り、大会の運営が守るべきポイントを理解できるようにする。それを参考に、大会ごとにあわせて変えていくとよいのでは」(佐々木氏)
なお、ガイドライン部会で作成したガイドラインは、デジ連が主催する「全国情報教育コンテスト2024」に適用し、検証しているところだ。
鹿野氏は「ただ『ガイドラインを作ったので大会で使ってください』と押し付けるだけにはいかない。このガイドラインで本当に安心・安全に運営できるのか実証が必要」と説明する。「今回のコンテストを通して、ガイドラインの問題点や改善すべき部分が出てくると思う。その反省を踏まえて再びガイドライン部会を開き、ガイドラインを完成させ、外部に展開していく予定だ」と語った。