教育データの標準化に取り組む内田洋行
「New Education Expo 2024」東京会場の初日である6月6日、会場内の「フューチャークラスルーム」にて、報道関係者に向けた内田洋行の発表会が開催された。最初に、代表取締役社長の大久保昇氏が登壇し、同社が2016年から取り組んでいる教育データの標準化について語った。大久保氏は「PISAにも採用されているOAT社の世界標準フォーマットをベースに、世界とともに日本のMEXCBTをはじめとした教育データの標準化を進めていきたい」と話した。
実証事例(1):子どもや家庭の見守り支援に活用する神奈川県開成町
続いて、同社が支援する2つの自治体の事例が紹介された。1つ目の事例として、神奈川県開成町の取り組みを、ICT基盤システム開発部の小森智子氏が解説した。
小森氏は、まず教育データ利活用における文部科学省やデジタル庁、こども家庭庁などの動きについて語った。「文部科学省からはMEXCBTや文部科学省Web調査システム(EduSurvey)といった自治体が利用できるツールも登場し、デジタル庁では標準規格の実装事業が複数行われ、データ利活用を推進していく土壌ができあがってきた」と話す一方で、「データ連携に向けてはさまざまな課題があり、昨年同様、難しい現状」であることも伝えた。
そのうえで、これらの課題を一つひとつどのようにクリアしていったかの事例として、神奈川県開成町の事例を紹介した。今回紹介された開成町と埼玉県戸田市は、いずれも2023年度からこども家庭庁が行っている「こどもデータ連携実証事業」に採択され、内田洋行が参画している自治体だ。
開成町は2024年4月に「こども課」を設置し、母子保健と児童福祉を一元化して子どもの支援を包括的に行う「こども家庭センター」を新設した。その取り組みのひとつである「こども見守りシステム」は、顕在化されづらいヤングケアラーや貧困、引きこもりといった課題を早期発見し対応することを目的としている。
住民記録や健康情報、福祉相談などの基幹系システムと、教育委員会が所有する校務のデータを連携させ、「こども見守り共有データベース」からシステムが困難を抱えている可能性がある家庭や子どもを抽出する。その結果から福祉部署の関係者が協議し、支援につなげていくというものだ。
発表会では実際のシステムからさらに進んだ、学習データも連携した想定のデモが行われ、「ヤングケアラー」「貧困」といった困難の類型ごとに抽出する画面が紹介された。「例えば、Aさんの出欠データを見ると、きちんと学校に行けていることがわかる。『タブレットを使った時間』で、何時にタブレットを使って勉強したかも推測でき、複数のデータを1つの画面で見ることで、子どもの状況がわかるようになっている」と、小森氏は説明した。
実際に「こども見守りシステム」で「貧困の可能性がある」とされた家庭には、自治体が把握していなかったケースもあり、給付金受給などの支援につながった成果もあったという。