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教育現場でのICT活用事例紹介(小学校)

1人1台端末の日常的な活用と持ち帰りを行う石川県能美市──能登半島地震で子どもたちがとった行動とは

 甚大な被害をもたらした令和6年能登半島地震。石川県の南部に位置する能美市では震源地に近い地域に帰省していた児童生徒も多く、地震発生直後に自発的に「Google Classroom」を利用して安否報告をしてきた子どももいたという。能美市教育委員会の亀田香利氏は「日常的なツールとして、1人1台端末やGoogle Classroomを活用していたからこそ」と語る。同市における日常的なICT活用の詳細と、災害時に発揮するICTの可能性について、亀田氏に話を伺った。

1人1台端末の高い活用率・持ち帰り率を誇る石川県能美市

 石川県の南部、南加賀と呼ばれる地域に位置する能美市。西は日本海に面し、そこから金沢平野を経て能美丘陵・山地と東西に広がっており、豊かな自然環境に恵まれている。2005年に根上町、寺井町、辰口町の3町が合併して人口約5万人の市となり、市内の小学校8校、中学校3校には約4200人が学ぶ。

 亀田氏は同市の教育委員会の学校支援課に所属し、担当課長として教育・学校DXの推進、GIGAスクール構想での1人1台端末活用による、情報活用能力や資質・能力などを含めた学力向上の取り組みを担ってきた。もとは小学校教諭から、男女共修となった直後に中学校の家庭科教諭になり、石川県教育委員会指導主事、川北町教育委員会指導主事・課参事、小学校教頭、中学校教頭を経て現職に至り2年目となる。

能美市教育委員会 学校支援課 担当課長(教育DX・学力担当)亀田香利氏
能美市教育委員会 学校支援課 担当課長(教育DX・学力担当)亀田香利氏

 1人1台端末の導入が開始されたころは、小学校教頭として機器選定にも関わり、日常使いができるよう「持ち帰り」を前提として導入を進めていったという。しかしながら、全国的には「持ち帰り」が進んでいないのが実情だ。

 「PCタブレットなどのICT機器の授業での活用」に関する調査で、「ほぼ毎日」と答えた児童生徒は全国平均で小学校・中学校とも28%程度、教員も小学校で65.2%、中学校で62.6%にとどまる。しかし、能美市では小学校で50.1%、中学校で61.3%、教員については小学校・中学校共に100%が「ほぼ毎日使っている」と回答している。

能美市と全国・石川県を比較した、授業におけるICT機器の活用状況(児童生徒)
能美市と全国・石川県を比較した、授業におけるICT機器の活用状況(児童生徒)
能美市と全国・石川県を比較した、授業におけるICT機器の活用状況(教員)
能美市と全国・石川県を比較した、授業におけるICT機器の活用状況(教員)

 「持ち帰り」についても全国平均の18~22%に対して、能美市は小学校で9割近く、中学校でも7割近くが毎日持ち帰っている。亀田氏は「この数値は、小学1年生の4月は持ち帰らないとか、宿題を紙で出したときは使っていないかもしれないとか、学校が細かく回答したためで、実際にはほぼ100%が端末を毎日持ち帰っている状況です。『持ち帰る』ことで『日常的に』活用することを促しています」と語る。この「持ち帰る⇒家庭で使う」の習慣は、市長をはじめとした自治体としての強力な推進によるものだという。

能美市と全国・石川県を比較した、端末の持ち帰り状況
能美市と全国・石川県を比較した、端末の持ち帰り状況

 また、同市では国の予算に加えて市の独自予算も確保されており、すべての教職員にも1人1台端末が行き渡っている。そして、Google Classroomやメールアドレス(Gmail)についても、全員が自身のアカウントを保有することができている。一方、ほかの自治体では管理職や支援員、栄養教諭、養護教諭が持っていない、教員2人に1台しかないというケースもあるという。

 なお、1人1台端末の「持ち帰り」が当たり前になっている能美市では、オンライン授業についても日常的に行われ、教員にもノウハウが蓄積されている。突然風邪をひいても、体調次第では自宅でオンライン授業を受けることができる。

 「大雪が降った日や、インフルエンザでの学級閉鎖など、突然学校に来られないというケースはどうしても生じます。また、相談室など別室登校の子どももいます。そうした状況においても、自宅や別室から授業に参加できるような環境が整っているんです」と亀田氏は胸を張る。実際、指定研究の研究発表会前にインフルエンザや新型コロナウイルス感染症で学級閉鎖になった際にも、急遽「いつもどおり」にオンライン授業を公開したことがあるという。

学級閉鎖と重なってしまった研究発表会ではオンライン授業を公開
学級閉鎖と重なってしまった研究発表会ではオンライン授業を公開

 亀田氏は「役立つものを税金をかけて投入しているのだから、子どもたちの学びにフル活用することは教育現場の責任ではないでしょうか。そのために『持ち帰り』も含めて、1人1台で使える環境は必須だと思います」と語る。

 「持ち帰り」については「使いすぎるのではないか」「悪用するのではないか」という慎重論も存在する。しかし亀田氏は「いざというときの学びを止めないためにも必須であり、今のところ不安を大きく上回るメリットがあります」と言い切る。もちろん学校の授業でも、グラフや立体の図を作成したり、必要な情報を必要なときに何度も繰り返し確認したり、1人1台端末はまさになくてはならない「ツール」になりつつある。

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日常的な活用が、有事の際の自発的な行動につながる

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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