スマートニュースのシンクタンクであるスマートニュース メディア研究所は 、埼玉県戸田市教育委員会とともに、メディアリテラシー教育を受けた児童にはどのような効果があるのかを実証するプロジェクトを、2022年9月から2023年2月まで実施。5月24日にその結果を公表し、6カ月間継続的にメディアリテラシー教育を受けた児童は、そうでない児童に比べて批判的思考力やメディアの知識を身につけられたことが分かった。
同プロジェクトの対象は、戸田市立小学校の5年生(全5クラス・合計173名)。全5クラスの児童に対して、メディアリテラシー教育授業の実施前の2022年9月と、実施後の2023年2月に全9問の効果測定テストを実施し、両者のテスト結果を比較することで、効果測定を試みた。
テストの内容は、批判的思考力が身についているかどうかを問う設問が5問、メディアについての知識を問う設問が4問の全9問で構成。京都大学 大学院教育学研究科 楠見孝教授、弘前大学教育学部 森本洋介准教授の協力のもと、スマートニュース メディア研究所が作成した。
同プロジェクトでは、5クラスのうち3クラス(105名)に対して、2022年10月から2023年2月の間に、メディアリテラシー教育の授業を実施した。ほか2クラス(68名)には授業を実施していない(公平性の担保のため、2月のテスト実施後に授業を実施)。
3クラスに向けた授業は、期間中に月1〜2回のペースで合計7回実施。7回のうち5回は教科等授業(国語、算数、理科、社会、道徳)の内容に沿って、メディアリテラシーのエッセンスを学べる授業を行った。それぞれの授業案は、森本准教授のほか、東京学芸大学 教職大学院 大学院教育学研究科 中村純子准教授が作成し、実証実験を行った小学校の教員が実施をした(道徳以外)。残りの2回はスマートニュースメディア研究所による特別授業を行った。
2022年9月に行った授業実施前のテストでは、全5クラスとも、効果測定テスト結果に大きな差異は見られなかったが、メディアリテラシー教育実施後の2023年2月のテストでは、授業を実施した3クラスは授業を実施していない2クラスと比べ、正答率が上がっていた。ここから、メディアリテラシー教育を受けた児童は、批判的思考力やメディアの知識を身につけられたことが分かった。
また、学力調査テストと効果測定テストの結果データを照会・分析したところ、メディアリテラシー能力の伸びが大きい児童には、2つの特徴が見られた。1つ目は、国語・算数の基礎学力が高い児童ほど伸びが大きいこと。もう1つは、自己効力感の高い児童の方が伸びが大きかったということ。分析結果からは、メディアリテラシー能力と基礎学力や、メディアリテラシー能力と自己効力感の相関の強さが示された。
2023年度も戸田市立小学校の5年生を対象に、人数を拡大して測定を実施する予定。また本年度は戸田市教育委員会の協力のもと、メディアリテラシー教育授業案を作成・実施できるように支援を行っていく。
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