ベネッセコーポレーションは、慶應義塾大学医学部の宮田裕章研究室と共創プロジェクトを開始し、「一人ひとりが多様な価値観を持ち、その個性が響き合う社会の実現」を目的に、データ活用によって多様な価値を可視化して一人ひとりに寄り添う、新しい学びのしくみづくりを目指すことを、4月18日に発表した。
同プロジェクトの第1弾として、「進研ゼミ」を2015年度~2019年度にかけて継続して受講している受講生1412名を対象に、進研ゼミ「実力診断テスト」「実力診断マークテスト」の偏差値を指標にして学力の推移を明らかにするとともに、学力向上のポイントを見つけることを目的とした分析を行っている。あわせて、学力と自記式アンケートによる学習力の関連を分析することで、とりわけ学力が伸びた集団での学習力の特徴を明らかにし、学習方法のポイント発見も目指した。
学習力は、「実力診断テスト」「実力診断マークテスト」とともに提出される自記式アンケートの回答に基づいており、今回の分析では小学4年生時と中学2年生時のアンケートを対象としている。
小学4年生時のアンケート項目は以下の通り。
- 問題をとくことがおもしろい
- 「どうして」「なぜ」かを考えながら勉強する
- むずかしい問題もあきらめずにがんばる
- 自分で1週間程度の学習の予定を決めている
- 自分で決めた時間になったら、進んで勉強している
- 勉強が予定どおりに進んでいないときがあれば、自分で工夫して、立て直している
- 勉強が終わったら自分でまるつけをしている
- まちがえたところは、とき直して次はまちがえないようにしている
- わからないところは、解答・解説を読むなどして、わかるようにしている
各設問の選択肢は「とても」を「1」、「まあ」を「2」、「あまり」を「3」、「全然」を「4」とする4件法となっている。
中学2年生時のアンケート項目は以下の通り。
- 定期テストに向けて、やるべきことを洗い出し、目標を決めて学習している
- 定期テストに向けて、2週間前までに計画を立てて学習している
- 定期テストの学習が、計画通りにうまく進んでいなければ、調整している
- 日々の学習について、自分でいつ、何を、どれだけ学習するかを決め、時間になったら取り組んでいる
- 平日、休日、部活の有無など自分の生活にあわせて、学習する時間を決め、学習するときには集中して勉強する
- 学校の宿題や提出物、小テストの準備など学校の学習に関わることを、生活のリズムをコントロールして、やりきれている
- 学習が終わったら自分で丸つけをし、解き方や考え方を確かめている
- 間違えたところは、つまずいたポイントを意識しながら解き直している
- 自分の苦手な教科や分野を理解し、苦手なところも取り組んでいる
各設問の選択肢は「とてもあてはまる」を「1」、「まああてはまる」を「2」、「あまりあてはまらない」を「3」、「まったくあてはまらない」を「4」とする、同じく4件法となる。
学習力の設問単位、肯定的な回答(選択肢1と2)をした人を「高学習力」、否定的な回答(選択肢3と4)をした人を「低学習力」の集団として、両者の学力テストの平均得点を棒グラフで可視化した。
小学4年生時の結果をみると、高学習力の集団は低学習力の集団よりも算数の学力テストの得点が高い傾向がみられた。特に「問題をとくことがおもしろい」「『どうして』『なぜ』かを考えながら勉強する」「むずかしい問題もあきらめずにがんばる」「自分で決めた時間になったら、進んで勉強している」「勉強が予定どおりに進んでいないときがあれば、自分で工夫して、立て直している」「勉強が終わったら自分でまるつけをしている」「まちがえたところは、とき直して次はまちがえないようにしている」「わからないところは、解答・解説を読むなどして、わかるようにしている」の8項目で、高学習力の集団が低学習力の集団よりも有意に算数の平均得点が高い。
中学2年生時の結果をみると、こちらでも高学習力の集団は低学習力の集団よりも数学の学力テストの得点が高い傾向にあった。すべての設問で、高学習力の集団と低学習力の集団の平均得点の差は統計的に有意であり、学習力の設問で肯定的な回答を選んだ対象者は、学力テストの得点が高い傾向がうかがえる。
続いて、学力が相対的に低い状態から学力が伸びた人の学習力の特徴を明らかにできれば、学力を挽回するためのヒントになるとの考えから、偏差値向上群と停滞群の比較分析を行った。小学4年生時の算数の偏差値の四分位値を用いて対象者を4分割して、中学2年生時の数学でも同様の分割を行っている。
偏差値グループ1をもっとも偏差値が高いグループとし、偏差値グループ4をもっとも偏差値が低いグループとして、小学4年生時には偏差値グループ4にいたものの、中学2年生時には偏差値グループ1または2にいた人(向上群)を特定し、小学4年生時、中学2年生時のどちらにおいても偏差値グループ4にいた人(停滞群)と学習力を比較した。
次に、小学4年生時の向上群と停滞群の学習力の比較を、選択肢1、2の選択率を比較することで行ったが、すべての学習力の項目で、両群に有意な違いは表れていない。
さらに、中学2年生時の向上群と停滞群の学習力の比較を行ったところ、「定期テストに向けて、やるべきことを洗い出し、目標を決めて学習している」「学校の宿題や提出物、小テストの準備など学校の学習に関わることを、生活のリズムをコントロールして、やりきれている」「学習が終わったら自分で丸つけをし、解き方や考え方を確かめている」「間違えたところは、つまずいたポイントを意識しながら解き直している」「自分の苦手な教科や分野を理解し、苦手なところも取り組んでいる」の5項目で、向上群が停滞群よりも有意に学習力が高かった。一方で、学習力の他の項目では有意な違いはみられない。偏差値向上群と停滞群の比較分析によって、「学習が終わったら自分で丸つけをし、解き方や考え方を確かめている」「間違えたところは、つまずいたポイントを意識しながら解き直している」「自分の苦手な教科や分野を理解し、苦手なところも取り組んでいる」の設問で有意な差があったことから、振り返りの力の大切さが明らかになった。
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