学生には正しく意思決定ができる力を身につけてほしい
──田名部先生が、横浜国立大学でprimeNumberとの共同研究で実施した授業についてご紹介いただけますでしょうか。
田名部氏(以下敬称略):2022年度に「データエンジニアリング実践基礎」という授業を実施しました。具体的な内容としては、実社会を意識したデータを用いて可視化し、どのように意思決定や問題解決につなげていくのか、その流れを体験しつつ最先端技術を知るというものです。まずは実証研究の授業として希望者を募り実施したところ、20名ほどの学生が集まりました。結果的に、とても実践的な授業になったと自負しています。
──データサイエンスに興味がある学生は、どのような学部に所属されている方が多いのですか。
田名部:文系の経営学部で学んでおり、プログラミングの経験はないものの「データエンジニアリング」に興味がある学生で、将来はマーケティングや経営コンサルなど、データを使った仕事を志望しているケースが多かったです。と言うのも、横浜国立大学は2021年度、経営学部に「Data Science Education Program(DSEP)」と呼ばれる、社会科学とデータサイエンスが融合した教育プログラムを開設しており、その中で興味を持ったという学生が多くいるようでした。
──先生は授業を通してどのような力を学生に身につけてもらいたいとお考えですか。
田名部:いわゆる文系の大学でもデータサイエンスを学べる学部・学科を開設するケースは増えていますし、そもそもデータというのは理系・文系関係なく活用するものなんですよね。文系の学生は理論はわかっていても実践的なデータ分析はできないイメージを持たれがちですが、そのようなことはありません。今で言う「データサイエンス」の中には統計学的な推論が含まれており、社会科学で昔から扱ってきたものです。
ですので、私は知識そのものについてはある程度備わっていると考えており、授業でも知識の定着化についてはあまり重要視していません。むしろ「意思決定する能力の開発」をゴールにしています。「データに基づいて合理的な意思決定をする」「仮説を検証して『確かにそうだ』と実感を持って判断する」といったように、データに根ざしたアクションができるようになってほしいのです。
きちんとした概念や定義を知ることはもちろん重要ですが、「それを正しく回答する」ことと「意思決定ができる」ことは、まったく異なるスキルです。テストでよい点を取るよりも、しっかりとした分析と情報の真意を見抜く力、それらから導かれた正しいアクションやコミュニケーションができること、それこそが私が学生に求めるものです。
成功・失敗のいずれにせよ何らかの結果が得られたとして、なぜそうなったのかの理由を分析し、自分の言葉で言語化できる。そして、それらを踏まえて次の仮説を立てる。そういったことができる人になってもらいたいと思っています。