日本企業におけるデータ活用の現状
データをビジネスの力として活用するためには、それを担う人材の育成が欠かせない。では実際に、現在の日本企業はどのようなデータ活用を行っているのか。総務省が発表した令和2年版の「情報通信白書」によると、5年前と比較して、大企業を中心にさまざまなデータ活用が進んでいる反面、未だ足りていない部分も少なくないことが見て取れる。POSなどの販売データは5年前に比べて活用が進み、アクセスログや動画、GPS、センサー、交通量や気象データなど自動取得が可能なデータ活用が広く進んだ。
田名部氏は「従来の情報システムは記録が目的だった。昨今はデータから新しいインサイトを得たり、コミュニケーションを促進したりといった期待があり、非常に重要な意味を持つと思われている」と語る。
安西氏も「マーケティングでは『お客様の解像度を上げる』を合言葉に、データを集めてきた。本来は、興味関心やほしいものなどを知ることが重要なのに、単に性別や年令などの属性情報を集めて安心し、実行的な活用につながっていないケースも多い」と語り、岩田氏も「データの統合というと、データの収集を目標にしがち。具体的な活用イメージを得られていない企業も少なくない」と頷く。
馮氏は「この5年間は『データを溜める』ことが主目的になっていた。これまでデータの蓄積・統合を行う価値が見えない、環境がないところから、SNSや高速回線の普及などにより情報がネット上でオープンに見えるようになったため、データ活用の注目度が高まったのではないか」と評した。そして、ガートナーによる日本企業のデータ活用に関する調査結果を紹介。この調査によると、教育環境はある程度整いながらも、データ活用に関する資格手当や社内資格制度などが未整備であることが伺える。
田名部氏は「マネジメント層がデータ活用の重要性を認識することが重要」と語り、その上で「それを従業員に奨励するために社内の制度の整備はもとより、新しいテクノロジーを導入して自分たちでデータの使い方を見出し、使いこなすことを加速させる必要がある」と強調した。