矢野経済研究所は、国内の教育産業市場(主要15分野)を対象に実施した、サービス分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにする調査の結果を、10月11日に発表した。同調査は、学習塾、予備校、通信教育事業者、資格取得学校、語学スクール、幼児教室、 体操教室、研修サービス事業者、eラーニング事業者、学習用教材会社、業界団体、管轄省庁などに対して、7月~9月の期間に行われている。
調査結果によれば、2021年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比5.0%増の2兆8399億1000万円だった。
同市場は、未就学児・学生を対象とする分野を中心に少子化の進行という構造的な需要縮小要因を抱えつつ、教育サービスに対する底堅い需要に支えられ緩やかな拡大を継続している。一方で、2020年度に生じたコロナ禍は社会環境に大きなマイナス影響を及ぼし、同市場においても学習塾をはじめとする各種教室の休塾・休校措置や生徒募集活動の自粛といった事業活動の制限を大きく受け、市場縮小を余儀なくされた。
2021年度もコロナ禍が継続する事業環境だったものの、感染防止対策を講じた上で事業運営がおおむね継続できたことや、オンラインの併用などによるサービス提供体制が確立したこと、コロナ禍でサービスの需要の高まりが継続したことなどから市場が拡大した。分野別では「家庭教師派遣市場」「語学スクール・教室市場」「学習参考書・問題集市場」の3分野において前年度比でマイナス成長、「幼児向け英会話教材市場」は前年度並だったが、それ以外の分野は前年度を上回っている。
2021年度は、学習塾・予備校事業者の多くでコロナ禍のマイナス影響を受けた前年度からの回復がみられた。中には、コロナ禍前の状態よりも事業規模を拡大させる事業者もあるなど、生徒(保護者)に選ばれる事業者への需要集約といった事業者間の二極化がより強まる状況が進んでいる。
さらに、近年は首都圏をはじめとする大都市圏と、人口減少・少子化の進行速度の早い地域(いわゆる地方)との事業環境の格差がますます拡大しており、地方と比較して大都市圏の子ども(保護者)の学習意欲は高い傾向にあり、学習塾に対する需要は底堅く高い合格実績などを背景に事業拡大を継続させている事業者もみられる。
一方で、地方では対象年齢の子どもの減少によって学習塾の多くが生徒確保に苦慮しており、厳しい経営環境を強いられている。また、少子化の進行によって地方の高校・大学では定員割れもみられるなど「学校過多」の状況にあるため、一部の生徒・保護者の間では学力向上や受験・進学に対するマインドがやや低調になるなど、学習塾に対する需要縮小によってより厳しい事業環境となった。
2022年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度と比較して1.7%増の2兆8882億4000万円を見込む。2022年度も依然としてコロナ禍の収束時期の見通しはついていないが、Withコロナに対応した事業展開によって同市場は堅調に推移すると予測している。
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