参加者に共通して見られた「自由な発想力」と「大人と対等にコミュニケーションする能力」
「電車の乗り換えは分かりにくいから、きっぷを買うときに行き先を押すと乗り換える駅まで教えてくれる券売機があったらいいと思います」
「その乗り換える駅をレシートみたいな紙に印刷して、きっぷと一緒に出してくれたらそのまま持っていけていいね」
「それならきっぷの裏に印刷したらいいんじゃない?」
「きっぷにQRコードを印刷してスマホで乗り換え案内を読み取れたら便利だね」
この画期的なアイデアの数々は、小学生たちの会話だ。2017年9月に行われた「Kids Creator's Studio」の参加者選考ワークショップでの一コマである。
本連載の第1回で取り組み内容とその背景について紹介をした「Kids Creator's Studio」は、テクノロジー(Technology:技術)とクリエイティビティ(Creativity:創造性)の双方を学ぶことで「自ら課題を発見し、解決するためのアイデアを生み出し、実現する力」を育むことを目的とした、半年間100時間におよぶスタディプログラムである。
2017年9月、本プログラムの受講者を決める選考会が渋谷にあるサイバーエージェントのオフィスで開催された。半年間毎週末に渋谷に通えることが条件であるにも関わらず70名を超える希望者が集まった選考会では、子ども本人との面談に加え、以下の2つのワークが実施された。
- (1)「画面の中の飛行機を飛ばしてみよう」というお題で、「Unity」の簡単なプログラムをテキスト通りに打ち込むプログラミングワーク
- (2)「外国の人が日本で困ることを解決しよう」というお題で、参加者の前で自分のアイデアをプレゼンテーション
冒頭のアイデアのディスカッションは、この(2)「外国の人が日本で困ることを解決しよう」のプレゼンテーションにおける一幕である。自身のプレゼンだけでなく、他の子どもの発表にも質問をし、さらにアイデアを出すなど活発な意見が飛び交い、参加した子どもたちは互いに刺激を受け合っているように見られた。
子どもたちからは、この「きっぷに乗り換え案内を印刷する」というアイデアのほかにも、次のような自由でユニークなアイデアが発表された。
- スマホで使える多言語翻訳アプリ
- 知らない日本料理を注文する時に役立つ、料理の写真を撮るとそれがどんな料理か英語で教えてくれるアプリ
- みんなが無料で使えるWi-Fiを提供するための大きなタワーを建てる
- オリンピックやイベントなどの行列を解消するためQR改札機とアプリで自分の順番が分かるようにする
- 畳の歩き方など日本特有のマナーを動画で解説するアプリ、など
「外国の人が困ること」という課題に対する着眼点は多岐にわたりながらも、その解決案は意外に実用的なアイデアが多く見られたことが特徴的であった。
審査員の一人であるアドビ システムズの楠藤氏は「子どもたちの発想はどれも自分の頭で考えられたものであり、自分の言葉で話しているので、こちらが急に質問をしても、自ら考えて返答ができる。大人と対等にコミュニケーションできる力に驚かされました」と参加者の思考力の高さに感想を述べた。