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GIGAスクール構想からICT機器を「いつでも使う、どこでも使う、自由に使う」学校DXへ

 GIGAスクール構想が進展し、1人が1台の端末を利用できる環境が全国の学校で整ってきています。一方でICT機器の利用が授業だけに留まっていることが多く、さらに学校教育を充実させていくには課外活動や校務においてもICT機器を活用していく必要があります。そうした学校のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえで先生方がどのような取り組みを行っているかを紹介した『これならできる!学校DXハンドブック』(翔泳社)から、編著・監修者である平井聡一郎さんが要点を解説した「総論 GIGAから学校DXへ」を紹介します。

本記事は『これならできる!学校DXハンドブック 小・中・高・特別支援学校のデジタル化を推進する「授業以外のICT活用事例」』の「総論 GIGAから学校DXへ」を抜粋したものです。掲載にあたって一部を編集しています。

総論 GIGAから学校DXへ 平井聡一郎(未来教育デザイン)

背景として

 2019年に始まったGIGAスクール構想は、新学習指導要領が目指す学びを実現するための環境を整えることを目指したものである。つまり、個別最適な学びに必要な1人1台の端末整備、クラウド環境とそれを支える完璧な通信環境整備といった3つの環境整備を、全国すべての学校に等しく整えるというのがその趣旨であった。実際、2021年4月には多くの学校で端末整備が始まり、Wi-Fi等の通信環境やクラウドを活用できる環境も整いつつある。ここで、なぜ新学習指導要領は「主体的、対話的で深い学び」を目指してきたのかを考えたい。

 そもそも、学校はなぜ存在するのかを考えると、端的に言えば「社会で生きていくために必要なスキル」を身につける場所であるからと考える。我が国は、明治の学制発布以来、その時々の社会状況や社会的なニーズに応じ、その指導内容を変化させてきた。しかし、現代社会は「シンギュラリティ」という言葉に象徴されるよう、劇的に変化している。

 コンピュータの普及から、インターネット、IoTそしてAIに象徴される情報革命は、情報社会と呼ばれる社会構造の変化をもたらしたのである。残念ながら日本は1900年代までの技術的な優位性を失いつつあり、2000年代以降、世界的なデジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗り損ねているのが現状である。

 さらに、「人生100年時代」の中で、1人の人間が社会生活を送る期間は大きく伸びており、2007年生まれの子どもたちの半数は107歳まで生きるとまで言われている。これまでは、多くの人が学校で学び、社会で働き、引退するという3つのステージの生き方を送ってきた。それが、ステージの区切りがなくなり、学びながら働く、働きながら学ぶ、兼業、副業といった並列して働くという、いわばマルチステージの生き方に移行しつつある。そして、このマルチステージの生き方には、これまで学校で学んだ知識だけでは対応できない。つまり、スキルのアップデート、アンラーン(Unlearn)といった生涯にわたって学び続けることが求められるだろう。

 では、学校教育は、このような変化に対応できているだろうか? 高度経済成長の時代に日本の教育は教室の中での効果的、効率的な指導法を追求し、一斉教授による知識伝達型の授業スタイルでの指導法を確立してきた。こういった授業は、一時期はある意味で成果を上げ、教員はその枠の中での教育研究に取り組んできたと言える。

 その結果、教員主導の授業は、主体的な学びを阻害し、「指示待ち人間」に代表される「使えない」人材を生み出してきたという弊害につながったのではないだろうか? そして、そういった一斉教授・知識伝達型の授業で学んできた生徒が教員となり、保護者となっているのがこれまでの学校教育の現状と言える。

学校教育の変化への兆し

 このような状況を踏まえ、社会の変化に対応できる人材を求め、まずは産業界が、小学校からの「プログラミング」の導入に象徴されるような変化を学校教育に求めてきた。そして、今回の学習指導要領が、「これからの社会がどんなに変化して予測困難になっても、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。そして、明るい未来を、ともに作っていきたい」という方針を目指してきたことは、社会の期待に対する国としての責任ある回答だろう。

 そして、このような社会からの学校教育への変化の要求は、新型コロナの流行による全国一斉の臨時休業によって、さらに加速することとなった。学校は、まさに「これからの社会がどんなに変化して予測困難になっても」という状況に陥ったのである。さらに、この臨時休業は学校教育関係者に大きな意識改革をもたらした。つまり、従来の「不易」と呼ばれ固定化した学校の教育環境を見直すきっかけとなったのである。

 GIGAスクール構想での機器整備もあり、これまで、イベント的に実施されていたオンライン授業が日常的になり、研修等もオンライン実施となった。また、従来、周到に準備された卒業式が予行なしでも、問題なく実施されたり、文化祭などの学校行事がオンライン開催となったりするなど、慣習で例年通りやってきたことが、変化を余儀なくされ、「学校は変わっていい」ということに学校教育関係者のみならず、社会全体が気付いたわけである。ところが、まだ「変わらなくてはいけない」という認識には学校や社会全体のコンセンサスは得られていない。しかし、確実に変化の兆しは見え、コロナによる教育界のマインドセットは進んでおり、まさに今、学校教育は「コロナのピンチをチャンスに変える」というフェーズにいるだろう。

GIGAから学校DXへ

 では、これから学校はどこに、どのように向かっていけばよいのかを考えていきたい。新学習指導要領、GIGAスクール構想は、「学び」の改革であり、学びの場である学校の改革でもある。ごく一部の学校での実践にすぎなかったオンライン教育が日本中に普及したことに象徴されるように、新型コロナによる休業は改革のきっかけとなる意識改革をもたらした。そして、GIGAスクール構想による、1人1台の端末整備は授業を変えていく。

 しかし、端末整備が済んだにもかかわらず、その活用がなかなか進んでいないのが現状である。進んでいない学校、自治体を見てみると、「授業でどう活用していいかわからない」というように活用のイメージを持てていないことが多い。これは、これまで、1校に1つのコンピュータ室という環境であったことに起因するのであって、先生方にその責任を押しつけるのは酷であろう。

 反面、これまでの実績はないのに、自然に活用が進んでいる学校、自治体もある。そして、そのような学校を見ていると、1つの共通点があることに気付く。それは、児童生徒や先生が端末を自由に活用していることである。授業での活用はもちろん、休み時間や放課後、自宅でも使っている。先生も授業以外の校務で、日常的に使っている。そして、それは保護者の学校教育への参加にも拡大しつつある。

 では、どうしてこんなことが実現できたのだろうか? 実は、これこそ、まさにGIGAスクール構想の目指したICT機器環境がもたらした成果と言える。つまり、1人1台の端末、確実な通信環境、クラウドバイデフォルトにより、「いつでも使う、どこでも使う、自由に使う」ことが可能になったからである。

授業以外のICT活用

 さて、このように授業を含めた学校教育全体でICT機器活用、デジタル化が推進されることで、学校は大きく変化し、学校に関わる児童生徒、教員、保護者が日常的にICT機器を使いこなす学校DXが実現すると期待している。児童生徒の学びは授業だけではなく、学校における生活すべてが学びである。学校DXにより、その学びが変わったとき、学校は変わり、その結果として、児童生徒の未来が変わっていくだろう。さらに、学びを支える存在である教員や保護者も、学校DXに関わる中でその意識を変容させ、結果として児童生徒の学びの変化を支えていくことにつながっていくことが期待される。

 まず、児童生徒の場合を考えてみよう。児童生徒は、まずは授業の中でICT機器と出会うことになる。ここでは、インターネットでの検索などによる情報収集というインプットにおけるICT機器活用から、発表やプレゼンテーションなどのアウトプットにつなげていく学びの個性化につながる活用と、AIドリルなどのアプリケーションによる指導の個別化につながる活用が第1段階となる。ポストGIGAという活用のフェーズでは、クラウドバイデフォルトの環境を最大限に活かした、学習者同士がつながるという第2段階の活用に進んでいくのである。

 そして、授業の中でクラウドを活用した協働的な学びを経験した児童生徒は、その経験と特別活動をつなげていくことが期待される。本書で紹介する児童生徒の授業以外でのICT活用は、まさにこの特別活動での活用にその有用性が示されている。授業という学びの中でのICT活用の経験を、特別活動という学びに活かした児童生徒は、ICT活用の本質を実感し、それを再び授業での学びに活かしていくというサイクルを構築していくだろう。

 さらに、この関係は、教員にも言えることである。ただ、教員の場合は、これまでもICTを校務で使ってきたという経験を持っている。つまり、児童生徒とはスタートラインが違うのである。文書作成というアウトプット、成績処理というアプリケーション活用など、教員はこれまでもICT機器活用に取り組んでいた。ただ、GIGAスクール構想は学校にクラウド環境をもたらした。この一点が従来との大きな違いとなる。つまり、クラウドバイデフォルトによる、「いつでも、どこでも、自由に使える」環境は、教員の校務処理を劇的に変化させていく可能性を持っているのである。

 つまり、教員にとって授業でのICT機器活用は、未知の世界であり、およそ活用のイメージの湧かないものだが、校務処理はICT機器活用による恩恵をイメージしやすい、馴染みのある環境と言える。そこで、教員側は、まずは校務でのICT機器活用を進めることで、ICT機器の有用性を実感し、それを授業に結びつけていくことが有効であろうと考える。

 つまり、児童生徒は授業での活用、教員は校務での活用を切り口にしていくことが、学校DXの切り口となるということである。

 さて、これらのことを踏まえ、本書では、授業以外での学校教育の中での様々な場面でICT機器、クラウド環境の活用モデルを紹介、提案していきたい。そして、これらを日本中の学校が実践することで、学校DXの実現、そして日本の教育改革の一助となることを目指している。本書に掲載された活用モデルからできそうなことを見つけ、1つでもいいからやってみることが、学校DXへ向けた第一歩となるだろう。

 以上のことから、私は本書において「いつでも使う、どこでも使う、自由に使う」というICT機器活用を提案する。「いつでも使う」は、授業でも使う、授業以外でも使うということである。次に「どこでも使う」は、学校でも使う、家でも使うであり、それらは「自由に使う」環境に支えられている。過度な制限は子どもたちの学びを阻害すると考える。本書第2部の活用モデルは、すべてこの3つの柱に基づく実践となっている。本書を読み進む上で、ぜひ「いつでも使う、どこでも使う、自由に使う」を視点にしていただきたい。

これならできる!学校DXハンドブック

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これならできる!学校DXハンドブック
小・中・高・特別支援学校のデジタル化を推進する「授業以外のICT活用事例」

編著・監修者:平井聡一郎
発売日:2022年3月16日(水)
定価:2,420円(本体2,200円+税10%)

本書では小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の先生方、教育委員会、教育関係者に向けて、学校DX(学校のデジタル化)のポイントや、その足掛かりとなる「授業以外のICT活用モデル(実践例)」をまとめました。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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