どこにでもある風景
全国の教育委員会で日々行われているのは、学校現場から上がってくるさまざまな書類の処理ではないでしょうか。GIGAスクール構想がスタートして1人1台端末環境となった今、課題となっているのはその運用ではないかと思います。今回は、その中でもアプリの許可申請を効率化し、現場の先生方に可能な限り最短でアプリを活用してもらえるようにするしくみづくりについてお話しします。
現状、多くの教育委員会ではGIGAスクール端末の許可申請を紙ベースで行っているのではないでしょうか。しかしながら、この方法はよほど意識していない限り、大量の書類にまぎれて許可されるまでの時間が長くかかってしまいます。そのため、現場の先生方がアプリを授業で活用したいと考えていても、そのタイミングがズレてしまうことが少なくないでしょう。
那須町の場合
筆者が勤務する栃木県那須町では学習用端末として「iPad」が導入されています。GIGAスクール構想以前から1人1台環境を実現すべく、自治体として動いていました。当時は、一般的なApple IDを発行してインストールを行う方式でアプリの管理を実施しており、許可されたアプリはICT支援員に依頼してインストールを行うといった方式でした。端末の数が少なかった当初はこの方式でも運用は可能でした。しかし、毎年少しずつ端末が増えるにつれてさまざまな課題が見えてきました。
那須町教育委員会ではGIGAスクール構想以前に「Microsoft365 Education A1」「Google Workspace for Education」(当時はG Suite for Educationでした)を導入済みの環境でした。GIGAスクール構想に合わせて「Apple School Manager」とMDMの「Jamf Pro」を導入したため、現在は3社のクラウドが活用できる環境になっています。
ある気づき
ある日、アプリの許可申請書類が筆者の手元に来ました。そこには以前許可していたはずのアプリ名が記載されていました。そこで事務の担当者と話をしました。
と、目の前に置かれたのは過去の申請書がまとめられたファイルでした。
このようなやり取りを経て、アプリ許可申請の承認業務フローで許可されたアプリをクラウドに登録する手順が追加されました。「手順を追加する」というと、仕事が増えることにつながります。働き方改革が叫ばれている昨今、仕事を増やすというのは時代に逆行しているようにも見えます。しかし、この増えた手順によってもたらされるのは
- 重複申請の防止=承認回数の削減
- アプリインストールの迅速化
- 他校で導入されたアプリを知る機会が生まれる(授業で使ってみる先生が現れる)
などの良い効果です。結果として、冗長な手続きが削減されると同時にアプリ活用の可能性が高まるのです。
実際は、重複申請以外にも学校現場でアプリの許可申請をしたにも関わらず、それがいつまでも許可されないという事態が発生し、申請書そのものが行方不明というケースにも遭遇しました。このような事態を受けて事務処理プロセスの精査を開始することになったのも、業務フローを見直す要因になりました。
許可されたアプリの全貌は誰も知らない……そのような状況を改善するには、紙ベースの業務フローにひと手間加えるだけ。あえて紙ベースの業務をなくしていないのは、行政書類の保管という意味合いもあります。加えて、従来の方法を無理に変更しなくても効率化は実現できることをお伝えできればと思います。
アプリで手書きした文字が検索できたり、AIで文字起こしができたりする時代です。そのまま情報を死蔵させないようにするための工夫をすることで、すべての人が幸せになれるのであれば実行するしか選択肢はないでしょう。