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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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GIGAスクール構想で実現する「学習者主体」のICT活用

学習者自身が端末利用の約束事や使い方を考える「デジタル・シティズンシップ」とは

GIGAスクール構想で実現する「学習者主体」のICT活用 第4回

 本連載ではこれまで、児童生徒がICTを主体的に活用していくことの重要性を、実例を挙げて紹介してきました。しかし実際は(特に導入初期段階における)ICT機器の使い方の「ルール」を決めるのは大人であることが多いのが実情です。一方で、児童生徒が主体となって話し合い、互いの違いに配慮しながら良き利活用に必要な約束を考える「デジタル・シティズンシップ」という教育があります。連載最終回である本稿では、デジタル・シティズンシップの展開に尽力している国際大学GLOCOM 准教授の豊福晋平先生と、鳥取県教育委員会情報モラルエデュケーター/国際大学GLOCOM 客員研究員である今度珠美(いまど・たまみ)先生への取材を通し、児童生徒の主体的なICT活用マインドをどう育成していくのか考えたいと思います。

米国における学校ICTの「機能制限・管理主義」は失敗を経験

 日本国内の多くの学校では「(先生たちが考える)基本的な学習目的の範囲内での利用」のために、端末の機能や閲覧できる情報、使用できるアプリなど多岐にわたる「制限」と「管理」を行うケースが大半でしょう。しかし、実はこのような「管理主義」的な手法が、学校のICT活用で先行した米国で「失敗」を経験しているという事実があることはご存じでしょうか?

 1998年、米国の国際教育テクノロジー学会(ISTE)が、情報教育基準(NETS)と呼ばれるガイドラインを公開しました。このガイドラインが公開されてしばらく後の2000年代には、携帯電話の普及に伴い児童生徒による情報機器の不適切利用や、ネットいじめなどの問題が表面化しました。学校はそれを回避するために利用規定をつくり、児童生徒とその保護者にサインさせ、統制しようとしたそうです。

 しかし、その規定を守らなかった場合の具体的な法的手段がないこと、生徒や保護者がその規定の内容を理解せずにサインしているといった問題が表面化しました。結果として前出のNETSは2007年に大幅に改訂され、教師や生徒、学校の管理職が知っておくべき情報機器利用の「倫理的な」基準が明記されました。これが、デジタル・シティズンシップです。

 さらに2016年、NETS-S(Sは生徒用の意)は改訂を重ね、その思想が米国外にも広がり、デジタル・シティズンシップに基づいた教職員研修が世界中で始まったとされています。2017年のNETS-Sでは「相互につながったデジタル世界における生活、学習、仕事の権利と責任、機会を理解し、安全で合理的・倫理的な方法で行動し、規範となる」と、デジタル・シティズンシップの考え方が表現されており、これを児童生徒が段階的に理解することで、批判的思考と創造者としての責任を学び、善き使い手、社会の善き担い手を育成できる、と示されています。(本段落の内容は、大月書店『デジタル・シディズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手を目指す学び』坂本旬、芳賀高洋、豊福晋平、今度珠美、林一真の第一章、坂本旬氏の部分より引用しています)

デジタル・シティズンシップの教材「コモンセンス」の日本語翻訳活動

 ではデジタル・シティズンシップを、米国ではどう学んでいるのでしょうか? そのための教材が「コモンセンス・エデュケーション」です。学年別に6つの領域の教材が用意されており、半数以上に数分の動画がついています。教材の一部は日本語訳されており、その翻訳活動に携わっているのが、取材させていただいた豊福晋平先生と今度珠美先生です。

国際大学GLOCOM 准教授の豊福晋平先生(左)、鳥取県教育委員会情報モラルエデュケーター/国際大学GLOCOM 客員研究員の今度珠美先生(右)
国際大学GLOCOM 准教授の豊福晋平先生(左)、鳥取県教育委員会情報モラルエデュケーター/国際大学GLOCOM 客員研究員の今度珠美先生(右)

 コモンセンス・エデュケーションの動画では、ICTの活用について最低限の指針だけ示し、「こうあるべき」という答えや結論は示されません。さまざまな考え方を示した上で「さてあなたはどう思いますか?」と、主となる問いを投げかけます。

 すでに日本語への吹き替えが完了している「5年生向け:私のメディアバランスを見つけよう」では、「食べ物や衣服と同じように、どのメディアを選んでどう使うかは『あなたの選択』であり、自分が心地よい選択や使い方の『バランス』を見つけよう」と、児童生徒主体での構成で、しかも答えは一人ひとり異なっていいというスタンスであることが読み取れます。

 一方、これまでの学校におけるICTリテラシー教育は「情報モラル教育」という言葉に代表されています。その多くは「こういう使い方はやめよう」と、あらかじめ結論が決まったものを講習形式で伝えるものです(当然、例外もありますし、すべての情報モラル教育が規制・制限ありきではありません)。そして豊福先生は「年に1回、外部から講師を招いて、ICTやSNSのリスクを強調する講習を『情報モラル教育』と称している学校が多いのではないか」と懸念を示しています。

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GIGAスクール時代のICTリテラシー指導はどうあるべきか

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この記事の著者

野本 竜哉(EduOps研究所 代表)(ノモト タツヤ)

 情報工学修士。高校生時代に自身が1人1台の端末環境で学んだ経験を世に広げるべく、通信企業の学校SE、教育企業の管理職、教育系システム会社の執行役員を歴任し、一貫して教育×ICT領域の事業に従事。2024年8月に独立し「技術をやさしく伝える」をモットーとした教育現場の取材・執筆・情報発信活動の傍ら、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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