休校が始まる月曜朝のリリースでないと意味がなかった
「一斉休校が発表され、いきなり学校に行けなくなった子どもたちの不安な気持ちを少しでも減らしたい、そのためには多くの学校の休校が始まる月曜の朝までにリリースしないと意味がない……それがプロジェクトメンバー全員の総意でした」(内堀さん)
「ヤフーきっず おうち学校」のプロジェクトは、安倍首相から全国一斉に臨時休校要請が表明された翌日の、2月28日金曜日からスタートした。3日でのリリースという時間がない中でも、セキュリティ対策をしっかりするなど安心して使ってもらうための施策も徹底しなければならない。
「スピード感」と「守り」の両立は非常に難しかったが、セキュリティや負荷に関する相談もその場で責任者からすぐに回答をもらうようにするなど、各部署に柔軟に対応してもらえたことで、スピード感を持って進められたそうだ。また、「通常のものづくりとは違うスピード重視の進め方がうまくいったことも大きい」と内堀さんは話す。
3日という短期期間でサービスを提供できた理由
【1】体制づくり、分担がすぐできた
Yahoo!きっずのメンバー以外にも、他部署のメンバーや「自分にも何かできることがあるなら手伝いたい」と手を挙げた有志のメンバーにも加わってもらい、特別プロジェクトとしてスタートした。
Yahoo!きっずのコンテンツを熟知しているサービスメンバーがコンテンツの選定やポリシーを決め、有志メンバーがデザインや開発といったWebサイトの実装部分を担う、といった作業分担がスムーズにできたことが、短期間で公開できた理由のひとつだという。
【2】ものづくりは対面とリモートを使い分けた
プロジェクト開始直後は、会議室に集まり昼夜問わずの作業が続いた。スピード勝負だったため、「話し合ったり何かを決めたりするときはその場で集まって話した方がやはり早かったですね」と、内堀さんは振り返る。
そこで決まったものを各自が作る段階になってからは、リモートで作業するなど、検討する時間とものづくりに集中する時間をうまく切り分けたそうだ。
【3】やるべきこと、メッセージが明確だった
メンバーの間では「今、何が課題で、何を子どもたちに提供するべきなのか、そして、込められているメッセージは何か」を最初に明確に決め共有していた。そのため、進める中で話が散漫になったり手戻りになったりすることがなかったそうだ。
「自宅で少しでも楽しみながら学んでほしい」「有意義な時間を過ごしてほしい」という思いをタグライン(※その企業、サービスが提供する価値や思いをわかりやすく表現するメッセージ)にした。
これにより、デザインを検討したり、どんなコンテンツを掲載すべきか検討したりする際も、コンセプトから練るのではなく「メッセージを実現するために何をするのか」といった具体的な内容を検討することができた。これも、短期間でリリースできた理由のひとつだという。
「『ヤフーきっず おうち学校』は、3月2日から6月末までの期間中、約100万人のお子さんに使っていただきました。全国の小学生は約600万人なので、そのうちの1学年分にあたるくらいのお子さんに使っていただいたことになります。国語や算数など、いわゆる学校の授業で習う教科のコンテンツがいつもより見られていました。通常は学校の授業がある時間帯の利用が多いのですが、新型コロナウイルスの影響による自粛期間中は、夜の時間帯もアクセスがありました」(内堀さん)