伝えたい思いの表現に「枠を設けないこと」を重視
そうした学習を続ける中で、本コンテストに応募するきっかけとなったのは、広瀬教諭がSNS上で同コンテストの広告を見かけたことだという。それを子どもたちに伝え、話し合いのもと、これまでの学習の成果物としてデジタルコンテンツを作成することにした。
「実はサイトや動画を作成したのは実質2週間程度でした。しかし、それまでの1年間の集大成ということ、そしてAdobe Sparkを使うと簡単に想像以上の作品がつくれるということで、集中して取り組むことができました。改めて子どもたちの集中力、創造性に驚かされました」(広瀬教諭)
Adobe Sparkを使ったのは初めてだったが、操作にまったく支障はなかったという。タイピングは5年生の夏から1人1台のiPadで実践していたこともあって原稿用紙に書くのとほぼ同じスピードで入力できる。そうしたICTツールと親しんでいたこともあり、Adobe Spark自体の操作にもすぐに慣れた。Adobe Sparkは著作権フリーの画像やテンプレートが豊富で、簡単に作品ができることを楽しんでいたという。
Adobe Sparkとは
テンプレートを使って、テキストや写真などの素材を組み合わせることで、プロ品質のグラフィックを簡単に作成できるコンテンツ作成ツール。Webページやショートムービーの制作にも対応している。
Webアプリのほか、モバイルアプリでグラフィック制作用の「Spark Post(iOS/Android)」、Webページ制作用の「Spark Page(iOSのみ)」、動画制作用の「Spark Video(iOSのみ)」も提供されている。
「最初からこの作品をつくることをゴールにしてきたわけではありません。ただ、1年間という時間をかけてかなりSDGsについて学んでいたので、子どもたちにも『伝えたい』という気持ちが高まってきていました。伝えたいことと、伝える手段があれば、子どもたちはちょっと難しいことでも容易に乗り越えていく力をもっていることを改めて感じました」(広瀬教諭)
作品を作る上で心がけたこととして、広瀬教諭は「枠を決めすぎないこと」を挙げる。最終ゴールは決して美しく仕上げることではなく、思いのままに調べ、考え、表現することの楽しさを知ること。そう割り切ることで、ある程度好きにさせるようにした。大人から見ると、時には誤っていたり、子どもによって差ができたり、表現が想定外だったりすることもある。しかし、その子どもがその時に感じたこと、やろうとしていることを受け止め、感じ方や表現の多様性として認めることを重視したという。
「結果、自分たちの興味のある部分は要素が多く、密度の濃いビジュアルになり、関心が薄いものについてはややあっさりした印象になりました(笑)。それもまた子どもたちのリアルであり、多様性の賜物だと思います。そして、教師にとっては創造的な学習の醍醐味であり、面白さだと思います」(広瀬教諭)