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イベントレポート(先端技術)

自分の「欲しい!」を創り出す若きクリエータが集結――2019年度未踏ジュニア最終報告会レポート

 独創的なアイデアや、抜きんでた技術力を持つ17歳以下(小中高および高専生)のクリエータによる制作活動を、各界で活躍する専門家と企業がバックアップする「未踏ジュニア」プログラム。2019年度に採択されたプロジェクトの最終成果報告会が、10月22日に都内で行われた。

今年で4回目の開催、若きクリエータを支援する「未踏ジュニア」

 一般社団法人未踏が主催する「未踏ジュニア U-17未踏プロジェクト」の開催は、2019年度で4回目となった。応募数も年々増加しており、今年は127件の応募の中から、過去最多となる13のプロジェクトが採択された。採択プロジェクトに対しては、未踏プロジェクトのOB・OGを含む、各界のプロによる指導、50万円を上限とした資金提供、開発場所や工作機械の貸与といった各種サポートが提供される。

 プロジェクトを担当するクリエータたちは、採択決定からの半年弱の間に、会議や合宿、ネットでのコミュニケーションなどを通じて、プロダクト開発に取り組んできた。この記事では、最終報告会で発表された13のプロジェクトを発表順に紹介する。

 なお、今回は新しい試みとして、報告会の様子が、YouTubeの未踏ジュニアチャンネルでもライブ中継された。現在はアーカイブとして視聴可能になっているので、気になるプロダクトがあれば、クリエータ本人によるプレゼンテーションの様子も合わせて見てほしい。

バトンパスのトレーニングを効率化する「リレーマスター」

 渡部晃久さんの「リレーマスター」は、6軸センサを埋め込んだ「バトン」を使って、リレー競技時のバトン受け渡し、走行時のフォームに関する情報を数値化し、より効率的なトレーニングに役立てるというもの。開発者である渡部さん自身が陸上競技部に所属しており、「人間の感覚だけに頼ったトレーニングではなく、より客観的なフィードバックを通じて、効率的に技能を高めたい」という思いから取り組んだプロジェクトであるという。

渡部晃久さん
渡部晃久さん

 既存のトレーニング機器は、プロ用が主流であり、セットアップが煩雑で、機器の値段も数万円と高価。そのため、気軽に使うのは難しいという課題があった。リレーマスターでは、独自に設計したバトンを3Dプリンタで出力し、内部に機器類を埋め込むことで、材料費約3000円という低コストを実現している。

 リレー競技では、バトンパスを行う「テイクオーバーゾーン」を抜け出すのにかかる時間が短く、バトン自体の移動速度が低下しないような受け渡しが最も効率的だという。6軸センサで読み取ったバトンの動きと加速度から、1歩あたりのスピードや、受け渡しのタイミングなどを算出するにあたっては、自己相関分析などの統計手法を用いている。最終的に可視化された情報に基づいて、トレーニング方法の改善を検討できるという。

バトンパスのトレーニングを効率化
バトンパスのトレーニングを効率化

 今後は商品化を視野に、バトンから得られるデータの精度向上、機械学習などを用いたデータ分析に基づくフィードバック情報の拡充、Webサービス化などに取り組みたいとしている。

機械学習によるイラストを自動生成する「Edge-guided Anime Characters Generation」

 行方光一さんの「Edge-guided Anime Characters Generation」は、画面上に適当な線を数本描くと、機械学習によって生成されたマンガ調キャラクターのイラストが生成されるツール。大まかな輪郭線を描いた段階で、すぐにイラストが表示されるが、そこから線を描き加えていくことで、髪の流れる方向や、目、鼻、口の位置、サイズなどを、段階的に好みに合ったものへと近づけていくことができるようになっている。

行方光一さん
行方光一さん

 画像生成のロジック作成にあたっては、Generative Adversarial Network(GAN:敵対的生成ネットワーク)を始め、Sketch RNN(機械学習モデルを利用したアプリ)、Image Inpainting(画像修復)、MakeGirlsMoe(2次元キャラクターを自動生成できるツール)などのアルゴリズム、先行研究を参照したとする。また、プロジェクト採択で得た50万円の援助資金では、機械学習用のGPUを購入。それでも学習にはかなりの時間がかかっているといい、クラウドサービスなどの活用で「より高い頻度で学習できるようにしたい」と話す。

機械学習によるイラスト自動生成
機械学習によるイラスト自動生成

 用途としては、「絵を描く人のスキルを問わない強力なアシスタントをイメージしている」とする。既に絵を描ける人であっても、生成された画像から発想を膨らませ、自分なりの新たなキャラクター作りに生かせるという。今後については、服装やアクセサリーなどの付加、要素の色指定を可能にするといった機能を付け加えつつ、より実用的に使えるモデルへの強化を図っていきたいとした。

ドット絵からイラスト編みのための「編み図」を作成する「編模様(あもーよ)」

 武田和樹さんの「編模様(あもーよ)」は、編み物(イラスト編み)をする際に参照する「編み図」を、iOS・Androidデバイスで作成、参照するためのアプリ。ドット絵アプリで作成した図柄を読み込んで、編み図化することができるため、オリジナルのイラスト編みに取り組むこともできる。

武田和樹さん
武田和樹さん

 「母親が編み物をしている時、編み間違いを直すのにとても手間がかかっているのを見て、作業を楽にするために作った」とのことで、さまざまな部分に、編み図の使い勝手を高め、編み物をしやすくするための工夫がされている。例えば、一般的な編み物の本では、編み図がモノクロで印刷されていることが多いが、編模様では使う糸の色と、編む回数が非常に分かりやすく表示される。ほかにも、作りたいものの大きさから、段数と目数を算出する「ゲージ計算機能」、現在編んでいる場所の強調表示やアプリ内への保存機能、キーボードを使って肘や足で感覚的に参照範囲を移動できる機能などが搭載されている。

ドット絵からイラスト編みのための「編み図」を作成
ドット絵からイラスト編みのための「編み図」を作成

 開発にあたっては、さまざまな展示会やワークショップなどにも出展し、そこでのフィードバックも参考にしながら改良を進めた。「未踏ジュニアに採択されたことで、母以外の多くの人にも使ってもらえるものになった」と話す。今後は、オリジナル編み図の共有機能や衣類など、より多様な編み方への対応などを行いつつ、使いやすいアプリに仕上げていきたいという。

「編模様(あもーよ)」
「編模様(あもーよ)」

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若きクリエータたちのこだわりと工夫が詰まった作品が勢ぞろい

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この記事の著者

柴田 克己(シバタ カツミ)

フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。 現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いてい...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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