ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、「電子図書館まなびライブラリー」の利用者の読書履歴と、学力テストやアンケート調査の結果をもとに、読書が子どものさまざまな力や教科の学力にどのような影響を与えているのか、その変化を追跡する調査・研究を実施し、その結果を10月25日に発表した。
今回の調査は、小学5年生から6年生にかけての1年間の中で、読書の「質」、特に子どもが読んでいる本の種類に注目し、読書の効果を分析した。調査の主な結果は、以下の通り。
「いろいろな種類の本」を読んでいる子どもほど、考える力と創造性が養われている
子どもに読書の効果(本を読んでいて感じること)を尋ねたところ、「いろいろな種類の本」を読んでいる子どもは、そうでない子どもに比べて読書の効果を感じている傾向が見られた。具体的には「いろいろな人の考えを知ることができた」(39.7p差)、「新しいアイデアが浮かぶようになった」(39.1p差)、「難しいことを考える力がついた」(39.7p差)、そして「わからないことを自分で調べるようになった」(40.6p差)といった項目で差が大きかった。幅広い読書によって、興味や知識の広がりとともに、思考力の向上や創造力が養われるなど、読書の効果が感じられることが分かった。
また、「いろいろな種類の本」を読んでいる子どもは、「気になったところを読み返す」(89.3%)ことが最も多く、さらに「わからない言葉を調べたり、人に聞いたりしながら読む」(59%)ことや、「どこが大切かを考えながら読む」(58.3%)など、本の読み方を工夫している様子が伺えた。
多くのジャンルの本を読んでいる子どもほど「社会」の成績が向上
読書履歴をもとに、子どもたちが読んでいる本の種類(ジャンル)の多さと、1年間の学力(テストの偏差値)の変化との関連を見たところ、読む本の種類が多い(4ジャンル)子どもは、読む本の種類が少ない(1~2ジャンル)子どもや、本を「読まなかった」子どもに比べて、偏差値の上昇幅が大きいことが分かった。
なかでも、「社会」の上昇幅が大きいことが明らかになった。特に、「社会・歴史」の本も含めた多様な本を読むことが「社会」の成績上昇に効果をもたらしている。
子どもたちの手に取りやすい「科学」「歴史」の本が、読書のジャンルや興味の幅を広げる
この1年間を通して子どもたちによく読まれた本の特徴として、『いきもの最強バラエティー ウソナンデス』(学研プラス)、『ジュニア空想科学読本』(KADOKAWA)、『しくじり歴史人物事典』(学研プラス)など「生き物」「科学技術」「歴史」といった専門的な内容をやわらかい切り口で扱った作品がよく読まれた。こうした本は子どもが手に取りやすく、「お話・読み物」中心に読書をすることが多い子どもたちにとって、興味の幅を広げることに役立つだけなく、読書のジャンルを広げることにもつながっている。
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