コーチング型の教員養成 ―理論と実践の往還―
私たちは、小学校2校、中高一貫校1校、教員養成大学1校の合計4つの学校の視察を行いました。その中から本稿では、教員養成大学での取り組みについて取り上げていきます。私たちが視察したのは「Marnix Academie」という教員養成大学です(写真1)。
これまで本連載では、第2回の「個に合わせた学び」や第3回の「正解のない問いの実践」をお伝えしてきました。では、それらの教育を実現させているオランダの教員は、一体どのようにして育てられているのでしょうか。第4回の本稿では、オランダの教員養成大学での具体的な取り組みについてご紹介していきたいと思います。
まずオランダの教員養成大学を視察した際に、驚いたことがありました。それは、教育実習が入学後すぐに始まるということです。日本の教員養成大学に通う私たちからすると、「まだ大学で何も学んでいないのに大丈夫なの?」と疑問に感じました。しかし、オランダ教育では「トライ&エラー」で失敗や困難に立ち向かう意欲を育てることを目指しているため、教員養成でもまず現場で実践してみるというカリキュラムになっていました。
具体的には、教育実習は、1年目は週1日、2年目からは週2日行われます。半年ごとに新しい実習校に変わります。連載の第1回で述べたようにオランダには多種多様な教育手法があるため、できるだけ多くの教育手法の教育を経験することが望ましいとされています。教育実習の学校では、学級担任と同様に、授業や評価のほか、職員会議や保護者面談にも参加するそうです。
そしてその際に、オランダの教員養成で非常に重要視されているのが、「理論と実践の往還」です。理論と実践の橋渡しとして、「コーチング」が大きな役割を果たしています。実習校での実践と大学での理論を、「コーチング」によって結び付けているのです(図1)。これにより、大学での主体的な学びが実現されていました。では、オランダの教育大生は、実際に大学でどのように学んでいるのでしょうか。