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「高大接続改革」によって何が変わる? 受験だけで終わらない、これからの社会で生き残るために必要な力とは

セミナー「大学入試改革迫る! ~「受験」の先を見据える能力育成とは!?~」レポート

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2018/12/17 07:00

 高校、大学入試、大学の在り方が大きく変わる「高大接続改革」。英語のスピーキングを含む「英語4技能」や記述式問題の導入などの入試改革に目が向けられがちだが、改革の真意は社会に出た際に「変化の激しい社会で生き残る人材」となるための評価・育成だという。そうした受験にどのように備え、「その先」をどう捉えればいいのか。株式会社Z会が考える「受験とその先を見据えた力を育む」取り組みを紹介すると共に、ICT事業部 マーケティング課で「EdTech」を駆使した「未来の学び」に取り組む野本竜哉氏による、これからの「学び」についての考察・示唆を紹介する。

株式会社Z会 ICT事業部 マーケティング課 課長 野本竜哉氏
株式会社Z会 ICT事業部 マーケティング課 課長 野本竜哉氏

2020年度からの「高大接続改革」で何が変わるのか?

 テクノロジーの進化やグローバリゼーションといった世界的な環境変化に対応するべく、「変化の激しい時代に生き残るための人材教育」に関する議論が活発化している。かつては「生きる力」として幼児・児童に関する教育、そしてAI時代を踏まえた社会人におけるキャリア形成などが多く見受けられたが、高校から大学という最も大きなトランジションにおいてはさほど大きな変化が見られなかった。しかし、2016年3月に文科省から「高大接続改革」の最終報告が発表され、いよいよ2020年度、現高校1年生が大学受験というタイミングで大きな改革が行われることが決定している。

 そうした受験サポートのエキスパートとして87年の歴史を持つ「Z会」でもまた、受験改革に先駆けてさまざまな取り組みを行っているという。一般的には通信教育のイメージが強いが、学習教室や出版関連、学校などをサポートする文教市場支援、試験等に関するアセスメントなど、さまざまな教育事業を展開している。野本氏はその中で、ICT事業部 マーケティング課に所属し、テクノロジーを用いた教育についての研究・開発を担い、経済産業省の実証事業にも携わってきた。

 そんな野本氏から見ると、これからの学校に対する期待や現状への不安・不満は、まさに「受験」に集約されているのではないかという。これまで「ある特定の領域にすごい知見があり、それをすさまじい当事者意識で掘り下げ、個人的な活動を行っている人」も「地域活動を通じ、環境問題や社会問題に関する知見や小さな改善の経験がある人」も、受験とは無関係とされ、評価されずにきた。野本氏も個人的な体験として、教科書外の活動について「どうして入試では、教科以外の『学びたい意欲』が一切評価されないのか」と思っていたという。

 そもそも「学力とは何か」と考えた際、「お勉強」だけできること自体に意味があるのかと疑問を感じる人は多いだろう。実際、文部科学省における「学力の3要素」には、知識・技能、思考力・判断力・表現力、さらに主体性・多様性・協調性があるとしている。それをZ会が解釈して図示したのが以下の画像だ。

大学入試では、より一層「知識・技能」以外が問われるようになる
大学入試では、より一層「知識・技能」以外が問われるようになる

 このピラミッド型が正しいかどうかはさておき、少なくとも改革後は、「センター試験」に代わる「大学入学共通テスト」は思考力や判断力、表現力までを、国公立大学の二次試験など個別選抜試験が主体性や多様性、協調性の評価を含むものと位置づけられている。つまり、より一層「知識・技能」以外が問われる傾向にあるというわけだ。

 なぜ「入試」が大きく変わるのか? 文科省も「偏差値的学力」だけでは不十分として以前から試行錯誤している。その一例が「ゆとり教育」や「総合的な学習の時間」だった。しかし、受験主義の風潮はあまり変わらなかったのではという批判にさらされた。いくら学校が学ぶ内容を変えても「入試がこうだから」と学校教育、特に高等教育が変わらなかったというわけだ。そこで高校・入試・大学を一体改革することで、偏差値的学力偏重という状況を変えようとしているのである。よくメディアなどで「入試改革」といういわれ方をしているが、野本氏は「入試だけを見ていては改革の本質を見落としかねない」と警鐘を鳴らす。

 この「高大接続改革」が目指すビジョンとは、「変化の大きい社会を生き抜く人材育成」であり、社会から逆算して必要な力を育みつつ、日本の従来の教育の良さを両立させることといえる。つまり、英語やプログラミングはその一部であり、「知識・技能」は大事ではあるが、より重要なのはそれらを活用して思考・工夫し、仲間と一緒に「課題を解決できること」 というわけだ。

 野本氏は「大学ごとに自校の特色や教育理念などに基づき、どのような学生像を求めるか、いわば『アドミッションポリシー』を示し、求めるスキルや問いかけの仕方が変わってくるのがあるべき姿。『高大接続改革』といったとき、大学側も子どもたちに対して『何を求めるのか』を明確に打ち出すべきというメッセージも含まれる」と解説する。

意欲格差を補完するためのEdTechの活用に期待

 2020年度に向けた「高大接続改革」が入試も含めた学びの全体改革ということであれば、Z会も含め「入試対策」に奔走するだけでは学びの本質に反する。大事なことは瞬間的なものではなく、人生全体で見たときの「変化を生き抜く力」の育成であるからだ。知識や浅い思考はインターネットやAIで置き換えられようになる中、仕組みを理解し「うまく使う発想」が重要であり、知識や技能よりむしろ、変化に先回りして先読みをする力こそ不可欠になってくる。

 しかし、そうした時代に学力格差よりさらに深刻になっていくものと思われているのが「意欲における格差」だ。そして「意欲」を喚起するものとして、野本氏は「やったことがあるかどうか」という「経験量」を挙げる。つまり、知識はお金がなくても努力で伸ばすことができたが、経験は親の所得や意向などに左右されやすい。となると、学びの機会の均等化・公平性といった観点から、意欲や経験を評価する入試を望ましくないと考える人もいる。

 しかしながら、もはや時代が求める教育として経験に基づく意欲が大きな要素となるならば、親の所得や意向といった環境差を埋めることが必要と思われる。そこでZ会が考える解決策のひとつが「EdTech」の活用だ。AIを活用したアダプティブラーニングやオンラインによる遠隔授業など、テクノロジーを活用することで格差をなくそうというわけだ。

 野本氏はその一例として、Z会の「Asteria(アステリア)」を紹介した。「Asteria」は、iPadが1台あれば内容理解から問題演習、添削指導まで完結し、学年関係なく学べることや添削指導に人の手が入ること、そして解答の正誤や学習履歴などを活用して最適な課題を提示するアダプティブであることなどが特徴となっている。「英語4技能」「数学新系統」「総合探究」の3講座が用意され、英語と数学は社会人まで対応する。

 さらに野本氏は「新入試でも知識・技能が問われることに変わりはない。それに加えて、思考力などの要素がアドオンされるという状況で、ただでさえ忙しい中高生には思考や経験を深めることが時間的に難しい。知識・技能なら短期間で詰め込むことができたかもしれない。しかし、思考力などは日々の積み重ねが重要となる。例えば、少なくとも、マンガや小説で描かれたような一発逆転は無理」と説明する。

 そこで「EdTech」を活用し、効率的に知識・技能を習得することで時間を捻出しようというのである。そうすることで創出した時間を思考力や判断力、表現力、そして主体性や多様性・協働性などを育む活動へと振り分けようということだ。

 例えば「Asteria」の英語4技能講座は「CEFR-J」(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠「CEFR」をベースにした英語能力の到達度指標)に準拠した日本初のアプリであり、学年関係なくあらゆる学習者に対応している。「読む・聞く・書く・話す」の4技能をすべて網羅し、英作文は添削指導者が添削を行うが、基本的には学習者のレベルに合わせて問題を出し分けるアダプティブラーニングを実現している。

 実際にこれを使っている中学1年生のユーザーの分析をしたところ、4技能とも1グレード上がるのに通常では1年かかるところ、半数がわずか半年で達成した。つまり、公立中学校のペースよりも2倍以上早く学習を完了させているというわけだ。

 また、昨年、ある中高一貫校の希望者制補習に試験的に活用したところ、教師が介在せずとも高い学習効果が得られた。特に補習後、短期留学を予定していた生徒の伸び幅が大きかったという。やはり目的を持っている生徒に対しては効果がより発揮されるということなのだろう。


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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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