Polaris.AIは、文部科学省が実施する「学びの充実など教育課題の解決に向けた教育分野特化の生成AIの実証研究事業」において、「特別支援における支援計画等の作成支援による教員の負荷軽減・指導力向上や、自立活動の深化の実現」が採択されたことを、10月22日に発表した。

特別支援教育では、児童生徒一人ひとりに応じた「個別の指導計画」の作成が必要だが、この業務には次のような課題があると考えられる。
- 高度な専門知識の必要性:学習指導要領、障害・発達段階の理解、自立活動の6区分27項目への理解など、深く・幅広い専門知識が求められる
- 根拠ある計画立案の必要性:学習指導要領を踏まえつつも、一人ひとりの障害の状態に応じて計画を作るため、計画立案までのプロセスが複雑かつ高度であり、業務負荷も大きい
- 複雑な横断的思考の必要性:各教科間のつながりや過去の計画との連続性を考慮する必要があり、難易度が高い
特に若手教員にとってはハードルの高い業務であると考えられ、「経験」に左右されないサポート体制が求められている。
同実証事業では、生成AIを活用して「専門知識の即座な提供」と「対話型の計画作成支援」を実現する。「専門知識の即座な提供」では、障害種別に応じた指導方法、発達段階に適した手だて、学習指導要領に基づく学習目標など、AIが必要な専門知識を根拠とともに提示する。「対話型の計画作成支援」では、教員の経験や意図を尊重しながら、AIが「なぜその目標が適切か」「どんな手だてが効果的か」を説明し、ともに計画を練り上げる。
また、同実証事業の技術的な特徴として、LLM(大規模言語モデル)の動的ワークフロー制御(AI Agent)技術を採用する。これは、単純な質問応答を超えて、複雑なタスクを自律的に遂行する技術である。あらかじめ決められたフローではなく、児童生徒の実態に応じてAI自身が最適な計画策定プロセスを動的に組み立てることができる。さらに、AIが自身の出力を評価し、必要に応じて再考・修正を行うことで、より質の高い計画案を生成する。加えて、学習指導要領、障害・発達段階に関する専門書、過去の指導計画データなどを効果的に参照し、根拠ある提案を実現する。同実証では、この最新技術を教育現場の実課題に適用し、その有効性を検証する。
同実証を通じて、特別支援教育における個別の指導計画作成の負担軽減と質の向上を実現し、将来的には通常学級における不登校児童生徒や外国にルーツのある児童生徒に、さらにその先にはすべての子どもたちに向けて、「個別最適・協働的な学び」の実現を目指すという。
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