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好事例から解き明かす、大学経営とデジタル人材育成

【高知工科大学】学群の新設と企業との共同プロジェクトによる独自PBLの実践

好事例から解き明かす、大学経営とデジタル人材育成 第2回

独自のPBL導入──キックオフ講演会に参加して

 データ&イノベーション学群の思想を具現化する教育の中核が、1年次から3年次まで続く独自のPBL(Project Based Learning)だ。その成果報告の一環として、2025年5月10日に高知工科大学の永国寺キャンパスで、同学群の2年生(1期生)による「PBLキックオフ講演会」が開催された。学生や大学関係者のみならず、県庁、企業関係者、マスコミなど外部からも多くの人々が集まり、200名規模の講義室が満席になるほどの盛況ぶりだった。筆者も東京から駆け付けたが、会場の熱気は同学群への強い期待を感じさせるもので、非常に好感を持った。

 講演会の内容は、2年生が4か月かけて準備してきたPBLの計画発表である。発表プロジェクトは10件。学生約60名が自らの関心に基づいて10チームに分かれ、計画を練り上げてきた。これらは企業や大学等との共同プロジェクトであり、各組織が抱える現実の事業課題を持ち寄り、その解決を目指す取り組みだ。また、各プロジェクトには教員が1名ずつ配置され、アドバイスや学生へのメンタリングを行っている。

 発表内容は、デジタル化・データ化を駆使した本格的なプロジェクト計画であり、その内容も実践的で興味深いものが多かった。例えば、地元の明徳義塾高校ゴルフ部から持ち込まれた「調子を落とした選手の分析をしてもらえないか」との命題に対して、AIによる動作解析に加えて、心拍数のデータを採取してその相関を分析するなど新しい試みも発表されていた。

 発表会の後はポスターセッションに移り、参加した社会人たちが学生に「もっとこうすれば良くなるのでは」と意見交換を行う機会が設けられた。このセッションも大変な盛況で、筆者も「このデータも取得したらどう?」などとアドバイスしながら、各ブースを楽しく回った。

 その後、真新しい食堂で懇親会も開かれ、参加者たちはビールを片手に新学群への期待を語り合っていた。こうして、楽しく有意義な1日は幕を閉じた。

独自PBLの基本コンセプト

 同学群では来年度以降、常時30ものプロジェクトが企業や地域と共に動く予定である。そのPBL哲学は、極めてユニークなものだ。古澤教授は、PBLを成功させるには重要な「前提」があると語気を強める。

 「中高時代の探究学習の延長線上としてPBLが捉えられがちですが、そこにはありがちな誤解があります。それは、Z世代の学生に過度な期待を寄せることです。彼らだからといって、革新的なアイデアが自然に湧き出るわけではありません。だからこそ、我々は『学生ファーストでなくて良い』とさえ伝えています。重要なのは、受け入れ先である企業や地域の皆さまと、我々教員が『本気でやりたいこと』を研ぎ澄ませること。学生はその本気の渦に巻き込まれ、現実の厳しさと面白さを学ぶのです」

 そのために、同学群ではPBLの三原則を掲げている。第一に「お相手先ファースト」。常に相手の思いや方向性を起点とする。第二に「『半歩先』を見据えたプロジェクト設計」。現業の課題解決ではなく、相手が「ちょっとやってみたい」と感じる、少し先のテーマに焦点を当てる。そして第三が「ちょっと先のデジタル」。本格導入前のAIサービスなどを、「半歩先のやってみたいこと」の中で試してみる機会として、PBLを活用する。この三原則により、既存業務との衝突を最小限に抑え、コストミニマムで価値あるチャレンジを現業と並行して展開することを目指す。その支援に関わることこそが、同学群の目指すPBLの理想形なのだという。

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運営上の課題と今後の取り組み

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

 1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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