日本事務器は、京都産業大学 文化学部 国際文化学科と、小中学校の学校図書館に対する遠隔レファレンスの共同研究に関する契約を、7月に締結したことを発表した。
同研究では、2021年から進めてきた学校図書館支援の取り組みをさらに大きく展開して、AIを活用した「AI学校司書」の実現を目指す。学校司書が不在でも、児童生徒の主体的な学びを深めるための資料提供を可能にし、教員の教材研究や授業実践を強力にサポートすることで、地域間の教育格差解消と学校図書館の機能拡充を目指していく。
なお、今回の共同研究の背景には、学校図書館の活用状況における課題がある。現状、学校図書館は読書を中心とした活動となる傾向にあり、児童生徒の主体的・能動的な学習、および教員の教材研究や授業実践を支援する機能が十分に活用されていない。また、司書教諭や学校司書の配置状況が地域や学校によって異なり、資料の選定や活用に地域間の格差があるという。
京都産業大学 文化学部 国際文化学科の大平睦美教授は、このような課題改善のため研究を進めている。それぞれの学校図書館が備える資料について、教材として教科学習の中で誰に・どのように活用されたのかの実態を蓄積。それらをデータベース化して学校間で共有することで、司書が教科学習での資料を選択するにあたり、参照できる基準(スタンダード)の構築につなげていく。
共同研究では、小中学校の教員や学校司書が資料を選択する際に、他の教員がどのように活用したかの追跡、確認をリアルタイムで可能にするとともに、自身の活用方法をコミュニティ内で共有できる「遠隔レファレンス」アプリケーションを開発。アプリをタブレット端末やスマートフォンに実装して、実証実験を行う。これらの情報共有を通じて、地域における教育の機会均等の実現への貢献を目指す。
現在、千葉県千葉市と和歌山県日高川町において、記録アプリとして「BOOK MARRY(ブックマリー)」を活用した実証研究が進んでいる。児童生徒や教員が、おもに教科学習で使用した学校図書館の資料について、「BOOK MARRY」へレビューを記録してきた。
あわせて、学校司書が不在の場合も児童生徒や教員の問いに対して適切な「資料」を提供可能な仕組みをAIで実現するべく、「AI学校司書」を構築する。その実現に向けて、以下のデータをAIに読み込ませている。
- 千葉市、日高川町にて「BOOK MARRY」に投稿されているレビューデータ
- 学校指導要領・教科書データ
- 各教員が作成した教材データ
- 出版・流通している書籍データ
- 著作権処理済の画像データ など
これらのデータをAIが学習することで、従来の情報検索とは異なる、より実践的で深度のある資料提供を可能にする。
同研究は2025年度〜2027年度の3年間を予定しており、この期間内に地域限定、科目限定での「教育現場の集合知+AI」による遠隔レファレンスの実現を図る。その後同社では、2028年度以降、同研究の成果をもとに、初等教育・中等教育分野における学習支援、読書支援ソリューションの開発・展開を本格的に実施予定としている。
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア