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教育現場でのICT活用事例紹介(小学校)

Google Classroomのイラスト投稿で情報モラルを学ぶ──ポジティブに交流できる理由とは?

「ibisPaint」と「Google Classroom」を活用した情報モラル教育事例

一所懸命描いた「作品」を介するからこそ、穏やかなコミュニケーションが実現

──ibisPaint倶楽部では、児童同士のトラブルといった問題が起きることはありましたか。また、高田先生は適切なオンラインコミュニケーションの仕方や情報モラルをどのように指導していったのでしょうか?

 ibisPaint倶楽部では、誰かが作品を投稿すると必ず何人かコメントを寄せてくれます。そのコメントは、基本的に褒める投稿でした。

 イラストを描く子どもたちはみんな、時間をかけて作品を描くので、ほかの子がどれだけ苦労したのかを理解しています。だからこそ「すごくかわいい!」「どうやって描いたの?」といったポジティブな投稿が自然と多くなっていました。

 私は、そういったコメントに対して高く評価しました。「君たちの作品に対するコメントの仕方がすごく素敵だね」と褒めることで、よりよいコミュニケーションを促せるように意識していました。

作品に寄せられたコメントにはポジティブな内容が並ぶ
作品に寄せられたコメントにはポジティブな内容が並ぶ

 ただ、そうした中でもトラブルは起きました。ある児童が投稿したイラストが、実はインターネット上の画像を無断で転載したもので、本人は描いていなかったのです。そのことにほかの児童が気づいて、私に「あれはおかしいと思うので、ちゃんと伝えてほしい」と依頼してきました。

 そこで、私のほうで著作権と肖像権について解説した投稿をしました。ほかの人の作品を、さも自分が作ったかのように投稿するのはいけないこと。また、肖像権についても、例えば似顔絵を描いた際にはそのモデルに断りなく投稿してはいけないと説明しました。

 私は管理人という立場から、「ibisPaint倶楽部では、みんなが楽しめるように、そうしたエチケットを意識しながら投稿・コメントしましょう」と度々注意喚起をしていました。

──ibisPaint倶楽部の活動を通して、高田先生ご自身の発見や気づきはありましたか?

 子どもたち自身が自然と「企画」を作り始めたのも、ibisPaint倶楽部の特徴でした。

 例えば、1人の児童がキャラクターの線画を描いたものを「これに誰か色をつけて」と投稿します。すると、ほかの子が線画に色を塗って再度投稿するんです。

 また、画面を9つに分割して「あなたの好きなキャラを描いて」と誰かが投稿すると、1つのマスにそれぞれが好きなキャラを描いて投稿していき、1マスずつ埋まっていくんです。児童が主体となり、そういった企画を考えて投稿し始めたことには驚かされました。

 ibisPaint倶楽部には、作品をただ投稿して褒めるだけでなく、ほかの人と一緒に作品を作り上げる楽しさがあります。だから子どもたちはibisPaint倶楽部のことを好きになったのではないでしょうか。

児童自身が企画を考え、作品が集まっていった
児童自身が企画を考え、作品が集まっていった

──子どもたちが主体となり、自主的にポジティブなコミュニケーションを大切にしている印象を持ちました。なぜ、こうした姿勢が生まれたと考えていらっしゃいますか。

 ibisPaint倶楽部が「作品交流の場」だったことが大きいと思います。仮に「何でもしゃべっていい掲示板」だと、話題が広がって誰かの噂話が始まることもあったでしょう。

 ibisPaint倶楽部をはじめ、紋別小学校のGoogle Classroomの課外活動はいずれも、作品を媒介にしてお互いにそれについてコメントや評価をする、あくまで「作品」を通じたコミュニケーションでした。「作品を投稿して、それについてコメントを入れる場」という趣旨が、児童にとってもわかりやすかったのではないでしょうか。

 小学生はイラストを練習するうちにみるみる上達していきます。上達したイラストを「見てほしい」「褒めてほしい」といった思いで投稿すると、実際にコメントがついて評価してもらえる。そうすると「自分もほかの人の作品にポジティブなコメントをしよう」という姿勢が生まれ、うまく循環していったようです。

 また、休み時間に私のところにやってきて「こんなことはできないかな」「私はこう思うんだけど」と、対面で意見を言ってくれる児童も多くいました。私はそういうリアルな声を聴きながらサポート役として管理していました。

──活動を通して、子どもたちの様子に変化はありましたか?

 オンラインでの作品交流は、リアルなコミュニケーションにも影響を及ぼしたようでした。

 ibisPaint倶楽部は、同じ市内の小学校の児童であれば参加OKにしていたので、顔を知らない児童とGoogle Classroom上でお互いの作品を通して交流していました。そのような交流を持っていた子どもたち同士が、中学校に進学して同じ教室で出会うこともあったようです。

 また、児童たちの「9分割」の企画をもとに、「黒板寄せ書きプロジェクト」という作品づくりにもチャレンジしました。学校の集会室にある黒板の写真を撮影し、その上にibisPaintでみんなが絵を描き、合作の大きなイラストを完成させるという取り組みです。

 ibisPaintには「タイムラプス機能」があり、描いている過程を早回しの動画で表現できます。せっかくならミュージックビデオの形に残そうと、タイムラプス機能を使ってイラストが完成するまでの過程を動画にしました。

 動画のBGMには、金管クラブの演奏を使いました。動画自体もibisPaint倶楽部の児童の一人が、動画編集ツール「Clipchamp」を使って作ってくれたものです。

 この動画は、夏休み明けの始業式に全校児童の前で、体育館の大きなスクリーン上に上映しました。上映時、ほかの子どもたちは驚き、拍手を送ってくれました。参加した子どもたちは「やったぜ」という感じで、とてもうれしそうでした。教員としても「小学生もここまでできるんだ」といった驚きがありましたね。

──学校の勉強や部活以外で自己効力感を得る体験は、不登校の子どもたちにとっても、よい影響がありそうです。

 そうですね。卒業後もibisPaint倶楽部に参加している中学生の子がいたのですが、進学後に不登校になってしまったことがありました。その子は非常にイラストが得意で、卒業後も3カ月に1回のペースでクオリティの高い作品を投稿していました。作品が投稿されると、ほかの子どもたちから「すごいね」といった賞賛のコメントがつくんです。その子にとっては、学校に行けない中でも外の世界とつながる貴重な場所になっていたと思います。

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学校だからこそ失敗していい──過度にトラブルを恐れないことが大切

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

 IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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