ナレッジコミュニケーションは、同社が提供する、「Azure OpenAI Service」を活用した学内専用Teams Chatbot環境「UY×AI(ゆい)」を山梨大学に導入したことを、12月23日に発表した。同学での「UY×AI」の導入は教職員の業務支援を目的とし、Microsoft Teams上から「Azure OpenAI Service」の高度な言語AIを安全かつ安心して利用できるように構築されており、学内での教職員による利用が開始された。
今回のプロジェクトは、同学が業務や教育において安全・安心に利用できる文章生成AI環境を検討する中で、日本マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」を用いた環境を選択したことから始まった。同学が「Azure OpenAI Service」を選んだ理由として、クラウド環境のサービスの中で高いレベルのセキュリティとプライバシーの保証・安全性が確保されている点、入力情報(指示内容)が生成AIの学習データとして利用されない点、さらに大学独自の環境として調整・設定できる点が挙げられている。
同学では、2023年5月の学長メッセージで「AI対話サービスなど新しい技術を拒絶せず、効果的・倫理的・適切に利用して学びを深めてほしい」という基本方針を掲げている。さらに、今回のプロジェクトを担当している同学の大学教育・DX推進センターでは、教職員や学生が業務や教育活動において安全・安心に利用できる文章生成AI環境の整備が大学として必要になるとの認識から導入検討が進められた。
今回「Azure OpenAI Service」を活用したTeams Chatbot環境は、教職員の業務支援に用いることを目指して調整・設定が行われ、学内展開が始まった。これを最初のステップとして、さらに活用範囲や機能を拡大していくことを目標としている。
プロジェクトの導入プロセス
ナレッジコミュニケーションは「アジャイル型開発」手法を基軸として、プロジェクト開始後1カ月未満で検証用のシンプルなチャットボットをAzure環境で提供した。その検証環境を利用して、使用する生成AIモデルの選定と、同学の考える回答スタイルなど生成AIに求める基本的な環境の検討を行った。その検討結果をもとにTeams Chatbotとしての実装を進め、同社で作成したMicrosoft Teams用組織専用カスタムアプリが同学に追加された。そのうえで、実際にTeams Chatbotとしての試用から得られたフィードバックをもとに、必要な機能の追加や調整をして最終的なリリースとした。
導入過程では、生成AIモデル(OpenAI GPTのモデル)の選定が課題のひとつとなった。指示入力から回答終了までに要する時間は、使用するモデルと提供されるリージョンにより異なる。そのため、複数の選択肢から使用感を体験する中で過程を経て、プロジェクト終盤にはリージョンやモデルの選定日を設け、最新の情報をもとに柔軟に選択できるようにした。また、生成AI分野の進化が早いため、最新モデルの情報を毎日チェックし必要に応じてモデルの変更提案を実施した。
プロジェクト開始から3カ月の間に、早期にシンプルな形のチャットボット環境を提供し、実際の利用者からのフィードバックをもとに機能を追加、調整していく形を取った。この方法により、同学の担当者も最終的な導入環境を想定しながら検討を進められた。その結果、利用者の具体的なニーズに即したサービスの提供が可能となり、実用性の高いシステムを構築できた。
同社が提供したのは、同学専用の「UY×AI」。同学関係者のみ利用可能なMicrosoft Teams用カスタムアプリの提供を行う方法で環境を提供した。Microsoft Teamsの基本機能であるチャット機能でほかの人とチャットをするように「UY×AI」に対して質問や指示を依頼できる。
利用ニーズの高い「文章要約」と「日英自動翻訳」は、専用ボタンを設置することで都度のプロンプト入力を必要としない設定とし、利用者の利便性を向上させた。「UY×AI」の学内展開により生成AIをより身近に感じ、いつでも何でも相談できる身近なアドバイザーとして業務での活用が始まっている。
「UY×AI」の特徴は以下の通り。
特定業務や活用シーンに応じた最適なUIの提供
「UY×AI」は、WebブラウザおよびアプリのMicrosoft Teamsに対応しており、PCでもスマートフォンでも利用できる。同学のMicrosoft 365アカウント情報を紐づけることで、利用者認証とアクセス制限を実現。そのため、Microsoft Teamsの基本機能を使うように高度なセキュリティを担保しつつ「UY×AI」を利用でき、ユーザーの利便性を向上させた。
ユーザーが生成AIを適切に利用するための制御
ユーザーが生成AIを不正な目的や、不適切な形で使用できないように、システムプロンプトに制御する条件設定を埋め込んだ。例えば、個人情報や著作権侵害の可能性がある場合には回答の生成が行われず、不適切な利用の可能性についてメッセージを返す仕組みとしている。
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