ロイロノートをフル活用した「国語」の授業事例
「今日は、前の授業をみんなが理解しているかどうか、クイズをします!」
荒谷教諭の呼びかけにクラス全員が拍手し、手元の端末の画面に注目する。横浜国立大学教育学部 附属鎌倉小学校4年生の「国語」の授業の始まりだ。
ロイロノート・スクールの「テストカード」機能を使ったクイズは全6問。現在取り組んでいる教科書の物語について、「主人公は誰?」といった簡単なものから、あらすじの順番を問うものまで、さまざまな問題に児童は一喜一憂しながら楽しげに取り組んでいた。
「最後はちょっと難しいよ」と言って出された6問目は「この話を通して、学習者が身につけることとは?」という難問。8割以上の児童が「場面と場面を結びつけながら、登場人物の変化や行動の理由を考える」と、正解を答えていた。
「共有ノート」で実現する、児童が探究的に自走する授業
今回の国語の教材は、作家のはやみねかおる氏が教科書のために書き下ろした『友情のかべ新聞』。学校で起きた事件の謎を解き明かしていくミステリー作品で、登場人物が「なぜ、このような言動をしたのか」を場面ごとに推理していく。
前時までの授業で、児童は物語を読んで自分が疑問に思ったことを「問い」として文章にまとめた。その際に活用したのが、ロイロノートの「共有ノート」だ。児童は、荒谷教諭が作成した共有ノートに自分のカードを追加し、問いを記入する。カードの中には、友だちに意見を書いてもらえるように、複数の小さなカードをふせんのように並べて配置する。
今回の授業では、共有ノートを全員で自由に閲覧し、友だちの問いに対する回答をカードに記入していく。荒谷教諭は回答する時間を30分ほど設け、「席を移動し、友だち同士で相談してもいい」とした。
そして児童はクラス全員の問いを一つひとつチェックし、自分が答えられそうなものに対して入力。黙々と書き込む児童がいる一方で、友だちと話し合いながら考える児童もいるなど、それぞれの方法で取り組んでいた。
中には、友だちの問いを見て新たな疑問が生まれた児童もいた。そうした児童は、共有ノートの中にカードを追加して新たな問いを書き加えていく。また、教科書の写真を撮り、自分が疑問に思った部分をトリミングしてカードに貼るなど、工夫しながら取り組んでいた。
印象的だったのは、回答を読んで疑問が解決した児童が、「解決しました」という報告を自分の問いのカードに書き込んでいたことだ。好きな画像をスタンプのように貼り付ける児童もいて、報告の方法もバラエティに富んでいた。
荒谷教諭は、自身の端末から共有ノートを開き、児童の学習進捗を確認する。悩んでいる児童には声かけをしながらも、あくまでファシリテーターに徹していた。児童は、自分の問いについて友だちと協力しながら考えを深め、自らの問いを解決へと導いていった。まさに「協働しながら、主体的に学ぶ児童」の姿が見られた。
「シンキングツール」でお互いの活動を可視化
次に見学したのは「総合的な学習の時間」の授業だ。2学期はキャリア学習をテーマに、「新しい仕事を考える」というプロジェクトに取り組んでいる。
児童は、同じテーマの友だちとチームを組むか、個人でテーマを深めるかを選び、それぞれの方法で活動する。ここでもロイロノートが使われており、「シンキングツール」のプロット図を用いてプロジェクト達成までの道のりを段階的に考えていた。
今回の授業では、まずテーマごとに進捗を発表した。
「シニア向けレンタルロボット」を考えたチームは、ロボットの実現に向けて、図工・理科・算数など、教科で学んだ知識が応用できるとプレゼンした。鉱石が好きな児童のチームは、石を使ったアクセサリーづくりを提案。また「リサイクル」をテーマに、身の回りの余った紙袋や端切れなどを活用し、デコレーションした可愛らしいブックカバーやバッグなどを作るチームもあった。さらに、あるチームは大手アパレル企業の店舗で採用されている、無人レジで自動会計してくれるICタグからヒントを得て、「外出に必要なものにICタグを取り付けて忘れ物をなくす」というシステムを提案していた。
各チームの発表を聞いて、荒谷教諭は「新しい要素はどこか」「すでにあるサービスとどのように差別化しているか」といった質問やアドバイスを投げかけ、児童の考察を促した。
教室には児童が自由に使える教材もあり、先ほどのシニア向けレンタルロボットのチームは、CADソフトでモデリングしたパーツを3Dプリンターで出力し、プログラミングロボットを用いて、想定される動きなどを考えていた。いずれのチームも机上の構想だけでなく実際に形にする方法を模索し、いくつかのチームは「プロトタイプ」と言えるサンプルを作り上げていた。
授業の最後、荒谷教諭は「アイデアを0から1にするのは難しい。1から10にするという方法もあるので、自分たちに合ったやり方を見極めて取り組んでほしい」と、児童にアドバイスした。
児童が主体的に学ぶために「活動を見取る」ことは重要
授業後、荒谷教諭に「国語」と「総合的な学習の時間」それぞれの授業のねらいや、ロイロノートの活用などについて話を伺った。
「国語」では小学校で初めて採用されたミステリーの物語をベースに、推理に対する根拠を見つけることを目的としている。そのため、児童が友だちの問いに対して書いた回答をチェックし、根拠が見当たらない回答には「教科書をよく読んで、根拠を書こう」と声かけを行っていた。
この授業のねらいに沿った回答を書くためには、いかに「教科書を読み込むか」が重要となる。荒谷教諭によると、回答をどんどん書いていける児童は教科書の内容が頭に入っているという。一方で、「教科書をあまり読み込まない児童には、まず『問い』を持たせることで教科書の内容の振り返りができ、理解を深めることにつながる」と述べる。
「総合的な学習の時間」では、荒谷教諭が日ごろから大切にしている「教科の学びと社会のつながり」を意識して授業を行っている。荒谷教諭は「児童に『主体的にやらせる』ことは、好きなことを自由にやらせることと同じではない。『活動あって学びなし』にならないよう、教員が指導に生かすため、児童一人ひとりの活動をしっかり見取ることが大事」と語る。
ロイロノートは児童の見取りに最適のツール
GIGAスクール構想以前、前任校である神奈川県秦野市立渋沢小学校から、約8年間にわたってロイロノートを活用してきた荒谷教諭。ロイロノートのよいところとして、「児童も教員も一元的に可視化ができ、児童一人ひとりの見取りがしやすい」「ICTが苦手な人でも直感的に使いやすい」といった点を挙げる。
特に「児童の見取り」は荒谷教諭がもっとも重視している点で、ロイロノートの「提出箱」の存在は大きいという。提出箱によって、教員は1つの画面でどの児童が困っているかを確認でき、即時対応できる。児童は提出した回答を共有することで、自分だけでなく友だちの多様な見方・考え方に触れられる。
だが「問いから解決まで、すべてを児童に任せることは怖いことでもある」と荒谷教諭は話す。だからこそ、ロイロノートなどのICTを活用し、「この学習では、こうした意図があり、このように価値づけている」といった指導の軸を明確にしておく必要がある。そうすることで、結果的に児童の活動量も増えていくという。
また荒谷教諭は「ロイロノートは、児童が自由に表現できる手段」とも話す。例えば今回の国語の授業では、児童が問いを書きこむカードの「テンプレート」は用意されていない。すべて児童が考えて、作り上げていったものだ。「みんなに『伝えたい』という目的を果たすため、共有したい問いを書くだけでなく、教科書の写真を撮影して貼り付けるなど、児童自身が可視化の手段を選んでいる。これは、逆にテンプレートがないよさかもしれない」と解説した。
荒谷教諭によると、共有ノートは今や児童にとって協働作業で使う当たり前のツールになっており、特に、総合的な学習の時間や学級活動など「みんなで協力して何かを作る活動」では効果を発揮するという。
総合的な学習の時間のグループ活動では「自宅でも進めたいから、共有ノートを使いたい」と児童から要望があることも多く、これまで誰かの家に集まって対面で行っていた作業も、オンラインで気軽に協働作業をすることが可能となった。
自走のベースは教科の探究的な学びにある
児童が自走して学びを進める授業の土台には、これまでの教科学習で培ってきた探究的な学びがあるという。「自分の好きなもの、興味のあるものに対して『問い』を立てていくと、児童は自発的に学びを進めていく。しかし『どうすれば問いに対する答えにたどりつけるか』という活動がなければ、こうした学び方はすぐにできるものではない」と、荒谷教諭は語る。各教科の授業で探究的な学びを行っているからこそ、自由な課題を出しても自走していけるということだ。
そして、そのために必要なのは「児童の自己肯定感」だと荒谷教諭は述べる。「教員は児童が『自分にもできそう』と感じられる環境を用意すること。そこから生まれる成功体験が自己肯定感につながる。児童に成功体験をさせて、価値づけることも教員の重要な役割」と語り、「だからこそ、一人ひとりの見取りができることが重要」と改めて伝えた。
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