「誰でも病んでしまう職場」と、その対策
まず、教職員のメンタルヘルス問題の具体的な解決方法をお伝えする前に、「なぜ人は病んでしまうのか」について整理します。
なぜ人は病んでしまうのかを「誰でも病む職場」に変換すると理解しやすくなります。「誰でも病む職場」とは、「残業時間が無限に続く」「顧客や上司からの無理難題が続く」「上司や同僚から詰められ、誰も助けてくれない」職場です。想像するだけで病みそうではないでしょうか。仮に残業時間がクリアになっても、残り2つが解決しなければ、その職場で長く働きたいとは思わないでしょう。
これは、厚生労働省が毎年発表している労働安全衛生調査から得られたヒントです。職場におけるストレスの要因は「仕事の量」「仕事の質」「職場の人間関係」です。
また、同調査の結果で比較的高い数値となっている「仕事の失敗、責任の発生」と「会社の将来性」は「環境変化(環境による要因)」と言い換えられます。つまり、職場でのストレスは以下のように整理できます。
「環境変化」はコントロールできませんが、「仕事の量」「仕事の質」「人間関係」は対策を講じることで、ある程度、許容できる範囲に留めることができます。つまり、これらは真の働き方改革によって、コントロール可能なのです。真の働き方改革とは、単に時間外労働を減らすだけでなく、「仕事の量」「仕事の質」「人間関係」を効率化し、DX推進や教育によって構造的な問題を減らしていくことです。
一方で、真の働き方改革によって量・質・人間関係の問題を解決し続けても、ITによる変化の速さが主要因となり(詳細は後述)、現代社会では職場環境の変化を理由とした一定数のメンタル課題が残ります。そのため「セーフティネットとしての産業保健を機能させること」が求められます。
さらに重要なのは、産業保険を「教員から信頼される産業医や産業保健師」で構成された専門チームで構築することです。そのためには、学校運営から独立した監査法人のような役割を担うチームであることが必要です。
これらの状況を踏まえ、教員のメンタルヘルス対策には「真の働き方改革」「セーフティネットとしての産業保険を機能させること」を両輪で回すことが重要だとおわかりいただけたかと思います。また、数値目標を持ってメンタルヘルス対策を企画し、PDCAを回し続けることも重要です。数値目標を立てずに進めているケースは非常に多く、目標がなければ、対策が場当たり的になってしまいます。