2つのワークショップに楽しく挑戦
同イベントはMITの学生インターンを日本に派遣するMIT-Japan Programとの共同開催で、現役のMIT生やMITの卒業生がファシリテーターとして多数参加している。子どもたちは午前は2人組で「DNAの抽出実験」、お昼をはさみ午後はグループで「エッグドロップ」のワークショップに取り組んだ。
DNAの抽出実験では、正しい手順で実験をすることが求められるのではない。エンジニアの考え方のプロセスが重視されており、1回目は少ない情報を手がかりに仮説を立てて実験。そして2回目は、正解はひとつではないという前提の上で、より多くDNAが抽出できる手順をファシリテーターから学び、同じ実験に挑戦した。初対面のペアが実験の過程で次第にコミュニケーションを深めていく姿が印象的だ。
エッグドロップとは、卵を高いところから投げ落としても割れない装置を作るチャレンジで、MITで伝統的に行われているものだ。与えられた材料だけを使い、どうすれば中に入れた卵が割れないかを考え、グループでアイデアをぶつけ合ってひとつの装置を作りあげる。最後は屋外で全員が見守る中、落下テストを行った。卵が割れてしまったとしても、重要なのは結果よりもプロセスで、割れたグループからはその原因を分析する感想も上がった。
バイアスを壊して好きな道に進もう!
子どもたちがSTEAM分野で活躍する女性のリアルな姿を知ることができるように、ワークショップ前にはキックオフトークが行われ、アーティストで株式会社Cradle代表取締役社長のスプツニ子!氏が登壇した。
スプツニ子!氏は、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンで数学とコンピューターサイエンスを学び、大学院は一転、美術系のロイヤル・カレッジ・オブ・アートに進んだ。テクノロジーが創る多様な未来を表現し、問題提起をするような作品を創り出す中、2010年に発表した作品が世界的に大きな注目を集め、その後MITメディアラボの助教に就任。さらに2017年からは日本で東京大学大学院の特任准教授を経て、現在は東京藝術大学美術学部デザイン科の准教授を務めている。また、自ら起業して株式会社Cradleの経営も行うなど、多方面で活躍中だ。STEM分野に女性が少ないことなどジェンダーギャップにも早くから問題意識を持ち、それは自らの作品や会社の事業内容などにも表れている。
スプツニ子!氏は子どもたちに向けて、数学の研究者である両親の影響もあって子どものころから数学やプログラミングが大好きだったことや、学生時代にとても楽しく学んでいたことなどを飾らない言葉で伝え、学び方や進む道には多様な選択肢があり、可能性が開けていることを伝えた。そしてジェンダーバイアスについては次のように語りかけた。
「私は子どものころ『女の子なのに数学やロボットが好きなの?』とさんざん言われて、とても嫌でした。日本にはまだ理系は男の子の方が向いているとか、男の子はロジカルで女の子は感情的だというような間違ったバイアスが根強く残っています。今日はこのワークショップを通してこのバイアスを思い切り壊してほしいと思います」
さらにDNA抽出のワークショップに関連して、自身の作品の中で遺伝子編集の技術を使ったプロジェクトを紹介し、子どもたちはその世界観に驚きを感じている様子だった。