予測できない社会において身につけるべきスキルとは
佐藤氏はまず、OECDの学力調査の結果を提示し「日本の子どもたちの基礎学力は世界トップレベルであり、誇りに思うべきところだ」と述べる。一方で「少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続き、生産性を高める必要がある社会になる中で、テクノロジーを活用してイノベーションを加速させることについては日本人が不得意な部分だ」とも指摘する。
加えてテクノロジーの進化は年々加速しており、ユーザー数が1億人を突破するためにかかった年月は携帯電話が16年、インターネットが7年、そしてChatGPTが3カ月だったという。この結果から、佐藤氏は「生成AIのすごさが本質なのではなく、テクノロジーの進化とその社会実装のスピードが圧倒的に速くなってきている点を注視し、この先どうすればよいのかを考えていくことが社会と教育にとって非常に重要となる」と語った。
AIに限らず、今後数年間でどのような変化が起きるのか、大人にも予測できない社会が到来し、すべての人が手探りで進んでいくことになる。「そうした環境の中で子どもたちにできることは何か。おそらくそれは『答え』を教えることではない」と佐藤氏。知識も引き続き必要でありながら、最も重要なことは質問をしたり、答えを探したり、答えを作ったり、それらを仲間と一緒に進んでいく力に変えていったりすること。つまり「仲間と共に、さまざまな変化に適応しながら自律的に学び続けるということ」である。この、周囲とコラボレーションしながら結果を出すことは、現在のビジネスの環境で求められている人物像に近いと言える。
こうした「普遍的かつ本質的な力を、教育を通して子どもたちに身につけてもらいたい」という理念を、マイクロソフトの教育部門は「Future-Ready Skills」として掲げている。この先どのような時代になったとしても、誰もが自分らしく活躍し続けるために必要なスキルをどのように身につけるのか。これこそが、マイクロソフトが大切にしていることだという。
このFuture-Ready Skillsを高めるために、佐藤氏は3つのポイントを提示。1つ目は「子どもたちが自分で決め、主体的・協働的に学べる環境があること」、2つ目は「教職員が働き方や教え方を選択し、工夫できる環境があること」。この2つに関しては、ツールの力を借りることで実現できる部分がある点も補足した。そして3つ目は「加速する社会の変化に適応できる環境があること」。つまり、テクノロジーの進化に合わせて教え方や学び方も変えていく必要があるということだ。そして、これら3つのポイントは、マイクロソフトがGIGAスクール構想の第2期で注力しているエリアと重なるという。
GIGAスクール構想第1期での反省を踏まえて端末を改善
1つ目のポイント「子どもたちが自分で決め、主体的・協働的に学べる環境があること」に対応するマイクロソフトの注力エリアは「端末を使いやすくすること」だ。GIGAスクール構想の第1期ではWindows端末に対し、「OSのアップデートによって学びが止まってしまう」などの意見が寄せられたといい、佐藤氏は「GIGAスクール構想を支える企業として大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
こうした第1期での意見を踏まえ、第2期向けの端末はさまざまな面で改善を目指したという。まず、初期設定については箱を開けて電源を入れ、IDとパスワードを入れるだけで準備が完了する。年次更新や故障時にはリセットボタンを押すだけでデータが削除され、次に使用する児童生徒がすぐに使える状態になる。そしてOSのアップデートは学校現場のネットワーク環境を考慮し、ダウンロードサイズを最大で4割削減。加えて、授業を中断することがないように、適切なタイミングでアップデートが行われる仕掛けも入ったという。
なお、第1期では「Windowsは遅い」という声も寄せられていたが「Windows 11では、より速くスリープ状態から復帰するようになった」と佐藤氏は説明。動作に問題を感じている学校に向けては「GIGAスクール相談窓口」を設け、問い合わせに応じてマイクロソフトが訪問し、原因調査および推奨している設定に変更するなどの対応を行うとした。
さらに「端末価格が高い」という声についてはパートナーと連携し、補助対象に収まる価格で提供予定であることを説明。また、日本の教育機関限定のサービスとして、要望の多かった「Webフィルタリング機能」を無償で提供することも決定している。