地域差の大きいICT教育の現状――トップのリーダーシップが重要に
教育界における大改革は、多くの議論を経て、いよいよ実行段階を迎えつつある。昨年3月に新学習指導要領が告示され、7月には高大接続改革についても最終的な実施方針が策定された。名実ともに教育の情報化が進行する中、現場ではさまざまな問題が表面化し、戸惑いも少なくない。いったい何をどのように解決するべきなのか。
冒頭、本講演のコーディネーターを務めた富山大学名誉教授の山西潤一氏は、「これからの子どもたちが実社会で活躍するのは20~30年後。その意味では、明日のことよりも将来のことを考えるべきではないのか」と投げかける。
実際、シンガポールではスマートフォンを活用した授業が開始され、オーストラリアでもBYODを用いた学習が行われているという。世界的に教育のデジタル化が進む中で、日本が取り残されていることは明白だ。将来的にグローバル化がさらに進めば、世界と対峙することも難しくなるだろう。
「今後到来する知識基盤社会において、第三次産業に従事する人が飛躍的に増加し、世界のどこからでも働ける状況になった際、何が求められるのか。創造力や協業力、ICTを使いこなす力などの『21世紀型スキル』が必要となり、世界がその方向に向かう中で、日本での取り組みは地域ごとに大きな差がある。これを是正するには国と地域のビジョンと尽力が不可欠であり、教員や保護者が声を上げていくしかない」
山西氏はそう警鐘を鳴らし、教育におけるICTインフラの充実を強調する。事実、環境の整備状況や、教員のICTとの親和性のレベルによって、児童・生徒のICT活用力に差が生じているという。
「教育の仕組みづくりにおいて、ICTが活用できる環境を整え、教えられる人材を育成することがまずは必要。そこには当然ながら人・物・金が必要となり、方向づけを図るリーダーの存在が大きい。そこで、国内では先進的な取り組みを進めている各地域のリーダーから、現在に至るまでの経緯を聞いて参考にしてほしい」と山西氏は講演の目的を語った。