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相模原市におけるデジタル教科書と学習データの活用に関する共同研究成果を発表、学習成果などのデータを蓄積・可視化

 相模原市教育委員会、大日本印刷、ネットワンシステムズ、光村図書出版、放送大学学園は、相模原市教育委員会におけるデジタル教科書を活用した共同研究事業の研究成果を、1月30日に発表した。

2022年度共同研究の概要と目的

 2019年12月に閣議決定されたGIGAスクール構想により、1人1台のタブレットPCおよび学校の高速通信回線の整備が進んでいる。ICTツールなどを活用した「教育現場におけるDX化」「教育の情報化」が加速する中で「デジタル教科書」が2024年度に本格導入される。

 これに先立ち「相模原市教育委員会・ネットワンシステムズ株式会社・大日本印刷株式会社・光村図書出版株式会社・放送大学学園(中川一史研究室)による授業中のデジタル教科書の成果物・テスト結果等のデータを用いた指導と評価に関する授業実践共同研究」に、2022年4月から2023年3月まで取り組んだ。デジタル教科書を活用した授業方法を開発し、相模原市の小中学校で実証を行った。

 同共同研究の目的は、デジタル教科書や授業支援ツールなどを用いた授業を通じた、教員の授業・指導方法の開発や評価改善の研究となる。加えて、収集した学習履歴データの活用や児童生徒の主体的に学習に取り組む態度の育成につなげることも目的としている。

2022年度共同研究の成果

 同共同研究の成果としてデジタル教科書を活用した授業では、児童生徒の主体的な活動時間と対話を行う活動時間が確保されたことが明らかになった。

 黒板の内容をノートに書き取る時間が減ることで、授業中の児童生徒の思考時間が増えた。それにより、考えをデジタル教科書や授業支援ツール上で整理できる時間も生まれ、その結果お互いの意見を交流させる活動が活性化した。またデジタル教科書や「マイ黒板(本文抜き出し機能)」への書き込みがデジタルデータとして残ることで、個人の学びの過程が可視化された。この書き込みや「振り返りシート」を学習成果物と捉え、それらをデータとして蓄積・可視化することで、児童生徒が自ら学習を分析し、自己調整する能力の育成につながる。

 実証授業に参加した中学生からのデジタル教科書への評価は高く、87%の生徒から学習に取り組みやすくなったという回答があった。

相武台中学校の生徒(31名回答)のデジタル教科書の評価
  • Q1.本文への書き込みやマイ黒板を利用し学習に取り組みやすくなった。
    • 「そう言える」+「どちらかと言えばそう言える」:27人
    • 「変化はない」+「紙の教科書、ノートの方がそうだった」:4名
  • Q3.デジタル教科書を使用することで自分の考えを整理し、表現しやすくなった。
    • 「そう言える」+「どちらかと言えばそう言える」:25人
    • 「変化はない」+「紙の教科書、ノートの方がそうだった」:6人

 加えて、教育現場におけるデジタル教科書をはじめとするICTツールを用いたデータの収集・活用には安定した通信環境が必要不可欠であるため、教育現場でのネットワークインフラ基盤は重要な役割を担うと言える。

 共同研究の手法(サマリー)は以下の通り。

1.デジタル教科書を活用した授業方法の開発

 2022年度の研究では、実証授業前に教員と研究メンバーで指導案を検討し、児童生徒の主体的な活動時間や対話を行う活動時間の確保を意識した指導案を作成した。その上で、学習者用デジタル教科書の操作方法や活用方法について、教員と児童生徒間で学び合う時間を取って授業に臨んだ。また授業後の記録を基にした協議を経て、授業のあり方を記録に残した。

2.学習活動の状況

 学習者用デジタル教科書に書き込んだ内容や、「マイ黒板」によって可視化した考えを基に話し合いを行った。紙のワークシートの運用やノートを取ることによる負担が減少し、児童生徒の思考する時間が確保され、意見交流の活動が活性化した。

3.収集データの分析

 中学校の生徒を対象に、自分の学びを客観的に振り返られる「振り返りシート」を作成し記入してもらった。このツールの活用を通じて、毎時間の授業の内容を自分自身やほかの生徒の言葉で記録し、単元の最後に授業全体の振り返りを行った。さらに継続的に記録を蓄積することで、生徒の学習内容を分析することが可能となる。

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https://edtechzine.jp/article/detail/10607 2024/01/31 15:50

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