日本マイクロソフトは、GIGAスクール構想における1人1台端末リプレイスなどのICT環境の更新、いわゆる「NEXT GIGA」に向けた同社の方針として、教育向けの新しいOSおよび端末のスペック等を10月17日に発表した。
同日に行われたプレス向けの発表会には、日本マイクロソフトで執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長を務める中井陽子氏と、同社 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤久氏が登壇し、説明を行った。
中井氏はまず「日本の教育改革をGIGAで定着させるために」と題し、GIGAスクール構想の課題とその解決策を提示した。
GIGAスクール構想では約3割の自治体が「Windows PC」を導入端末として選択し、約半数が汎用クラウドとして「Microsoft 365」を利用している。また、GIGAスクール構想の対象外ではあるが、高校市場においては5割から6割の生徒がWindows PCとMicrosoft 365の環境で学習しているという。
このように端末やクラウドは整備されたものの、中井氏は「GIGAスクール構想を定着させるにはまだまだ解決すべき課題があると、自治体や学校現場から声を頂いている」と述べる。
自治体しては予算が限られる中、端末やクラウドの活用が進むにつれてツールなどのコストが膨らんでしまうといった課題を抱えており、「中長期の視点から購入内容を見直して、無駄を減らす工夫が必要がある」という。また、多忙な教員の業務効率をICTによって改善させることが求められているほか、児童生徒の学習意欲が低下傾向にあることも危惧されている。
これらの課題を踏まえて、マイクロソフトは自治体・教員・児童生徒の「三方よし」を実現する必要があると考え、そのための「三位一体の改革」に向けた同社の教育ソリューションが紹介された。
コスト削減の観点では、教員用のMicrosoft 365 A3やA5といった包括ライセンスを購入することで、児童生徒用のライセンスがすべて無料となる。そこには端末管理ソフト(MDM)のライセンスも含まれており、別途購入する必要がない。また、教員の学習用端末・校務用端末を1台でまとめてカバーすることも可能で、教室や職員室、自宅など場所を選ばずに業務を行える上に、コストも最適化される。さらに、セキュリティ対策についても製品の追加購入が不要となる。
教員の働き方としては「Teams for Education」による業務効率化のほか、AIによる個別最適化ツール「Learning Accelerators」によって、児童生徒の学習の進捗や心の状態、児童生徒のつながり、デジタル利用時間などの「見える化」が実現する。このデータをもとに、教員は児童生徒一人ひとりに向き合った個別指導が可能となる。なお、Teams for EducationやLearning Acceleratorsは端末・OSを問わず利用できる。
また、Learning Acceleratorsは児童生徒に学ぶ楽しさを提供する。例えば、Learning Acceleratorsの機能のひとつであるAI音読採点「Reading Progress」を活用する教員によると、生徒は音読の課題提出前に発音の正答率を上げようと繰り返し練習するという。その理由として、AIで自己採点し、結果が見えることで児童生徒の学習意欲が増すと考えられる。さらに、児童生徒がその日の気持ちを伝える「Reflect」によって、教員はサポートすべき児童生徒が誰か、判断することができるようになる。
なお、このLearning Acceleratorsについても包括ライセンスを購入することで全児童生徒分を無料で使うことができる。
こうしたアプリケーションのさらなる活用に向けて、マイクロソフトは新しい教育向けOSとパソコンを発表。新しいOS「Windows 11 Pro Education OS」は誰一人取り残さない教育を実現するため、カラーフィルターや画面の拡大、音声読み上げ、ユニバーサルデザイン対応の教科書体といった、アクセシビリティの機能が充実している。
児童生徒用パソコンとしては「GIGA Basic パソコン」と「GIGA Advanced パソコン」の2種類が用意される。GIGA Basic パソコンは常にインターネットに接続しての利用を想定しており、クラウドアプリケーションで学習を行い、ファイルもOneDrive上に保存する。メモリは4GB、ストレージは64GBとなる。一方、GIGA Advanced パソコンはSTEAM教育やプログラミング、画像編集など目的に合わせたアプリケーションをインストールし、オンプレミスで利用可能な端末で、メモリは8GB、ストレージは64GBまたは128GB以上となる。
それぞれの端末を発売するメーカーは以下の通り。
- GIGA Basic パソコン:Acer、ASUS、デル・テクノロジーズ、Dynabook、富士通、日本HP、レノボ・ジャパン、NEC
- GIGA Advanced パソコン:ASUS、デル・テクノロジーズ、Dynabook、富士通、日本HP、レノボ・ジャパン、NEC、Microsoft
なお、これらの児童生徒用パソコンは、子どもが手に持つことや学校の机のサイズがあまり大きくないことを考慮して、軽量かつコンパクトなサイズとなっている。また、机からの落下や課外授業で持ち歩く中で落としてしまうケースを想定し、堅牢性も重視。さらに、ペン付属モデルでは紛失しづらいペンの格納法の工夫が施されている。
ここで、佐藤氏はマイクロソフト認定教員からの声を紹介。STEAM教育など、先進的な学びに積極的に取り組む教員は、「できること」の可能性が広がるGIGA Advanced パソコンのスペックを望んでいるという。また、Windowsは社会人になってからも使われるOSであり、学生のうちからMicosoft Officeのスキルを身につけられる点も、現場の教員から支持を得ている。
さらに佐藤氏は教員向け端末についても解説。「学習系・校務系を1台の端末で担うために高機能なパソコンを使っていただきたい」とした上で、多要素認証への対応や長時間使えるバッテリーなど、同社が推奨するスペックを満たした端末を紹介した。
発表会の最後に、中井氏は「自治体・先生・児童生徒全員がハッピーになれる三位一体の改革を、マイクロソフトの教育ソリューションは実現できると考えている」と述べ、NEXT GIGAに向けた同社の意気込みを示した。
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