開校5年目の新しい学校──学習者中心の教育メソッドを実践
ドルトン東京学園は、2019年に開校したばかりの中高一貫校です。米国の教育家ヘレン・パーカストが提唱する学習者中心の教育メソッドを採用しており、従来の教育とは異なる仕組みを取り入れています。それが「自由」と「協働」の2つの原理と「ハウス」「アサインメント」「ラボラトリー」の3つの柱を軸にした「ドルトンプラン」です。
「ハウス」とは、複数の学年で形成されるコミュニティで、日常的な交流や行事の参加をハウス単位で行います。授業のクラスとは別のメンバーで動くことで、多様性の理解や協働が促進され、社会性が育まれていきます。
「アサインメント」は、生徒自身による「学びの設計」をサポートする課題解決型の「学びの羅針盤」です。美術であれば、3カ月で達成するいくつかの課題を出し、生徒それぞれが達成までの計画を立てて取り組みます。
「ラボラトリー」は、授業での学びを深め、定着させる場所・時間で、生徒は教員や友人と相談しながら学習の目標や進め方を自由に設定することができます。ラボラトリーの時間になると、生徒たちは自分が決めたテーマや課題に取り組むため、事前に予約したラボの教室・実験室等に移動します。そこでは、協働で進めているプロジェクトの相談をしたり、自分の興味を深めるための独自の課題に取り組んだりと、自由な探究活動が展開されます。
まだ学校が5年目ということもあり、ドルトンプランでの学びをどう構築していくか、教員も生徒も探りながら進めており、それがまた新しい学びにつながっています。
デジタル上で自分の作品集を作る、美術での取り組み
筆者は、2022年度はドルトン東京学園で美術の常勤講師を務めていましたが、2023年度からは業務委託のSTEAM教育アドバイザーとして携わっています。後述しますが、2023年度からは徳島に開校した神山まるごと高専で教員スタッフとして着任しています。
本稿では、ドルトン東京学園の美術の授業で実践している、デジタルとアナログを活用した生徒の作品集の制作について紹介します。
デジタルの作品集では「Adobe Express」を使って自分のWebページを作成し、そこに完成した作品や制作の過程の記録を載せていきます。最初は、作品をアップロードする方法を学ぶために手順に沿って一緒に操作しますが、以降は各自で作品ができたタイミングでアップします。冒頭でも述べたように、ドルトンプランでは美術の課題が先に与えられ、生徒は自分の計画に従って作成するので、ひとつの作品が1カ月で完成する生徒もいれば、2カ月かかる生徒もいます。
筆者は教育に携わるようになって以来、教室に閉じこもるのではなく、外の世界で起こっていることに結びつけて考えられるような学びの機会を大切にしたいと考えています。美術で作成した成果が美術室の中だけでしか見られず、作品が教師と生徒の関係性だけで終わってしまうのはもったいないと思っていました。学園祭などで展示することもありますが、一定の期間しか鑑賞することができません。
そこで、美術の授業という枠や教室を飛び出して、作品を外に出していきたいとの思いからこの取り組みを始めました。Webページがあれば、生徒同士やほかの科目の先生、保護者などの関係者はもちろん、学校外の人々にも見てもらうチャンスが広がります。