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アドビ新社長・神谷知信氏が示す「クリエイティビティを伸ばす教育」――子どもたちの選択肢を増やし「生きる力」を育む

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2021/10/12 07:00

 2021年4月にアドビ株式会社 代表取締役社長に就任した神谷知信氏。日本での事業の新ビジョン「心、おどる、デジタル」を発表し、ユーザーが体験を通じてワクワクを感じられるような、多彩なデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していくことを宣言した。その中で、教育が果たす役割は大きく、さまざまな施策を積極的に継続・開始している。神谷氏が構想する「日本のクリエイティビティを伸ばす教育」とはどのようなものか、また今後は具体的にはどのような展開を予定しているのか、お話を伺った。

アドビ株式会社 代表取締役社長 神谷知信氏
アドビ株式会社 代表取締役社長 神谷知信氏

目指すは「誰でも・いつでも・どこでも」クリエイティブな学びを楽しめる環境

――神谷新社長のアドビでのこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

 2014年10月に、パッケージからサブスクリプション型へ事業転換するという、アドビのDX推進を属望されて、デジタルメディアの責任者として入社しました。アドビは「Creativity for All(すべての人に『つくる力』を)」という理念をグローバルに掲げています。私は、永続版ライセンスモデルからのサブスクリプション化を推進してきました。教育分野についても教育のICT化の重要性が注目される中で、2015年3月に学校・教育機関向けソフトウェアについて新しいライセンス体系でのライセンスのサブスクリプション提供を開始するなど、クリエイティブな教育の環境支援に取り組んできました。

 そして2021年4月12日、もう一つの根幹事業であるエクスペリエンスクラウドも含む両事業の責任者として、日本法人の代表取締役社長に就任しました。

――神谷社長のもと、アドビ日本法人の教育分野での事業はこれまでどのように展開され、また今後、どのように変わるのでしょうか。

 アドビの創造性に関する理念である「Creativity for All(すべての人に『つくる力』を)」についてはもちろんこれまで通り、アドビとしても、個人的にも活動の指針であることは間違いありません。そして、その中で教育が担う役割は大変重要なものと認識しており、これまで以上に力を入れていきたいと考えています。

 ただし、教育と一言でいっても範囲は本当に広いですよね。学校での公教育はもちろん、社会や家庭での教育、楽しみや自発的な学びも含めて多岐にわたります。また子どもたちだけでなく、社会人になってからも仕事や趣味、副業・起業など新しいことにチャレンジする場面についても、広い意味での「教育」といえるでしょう。そうしたあらゆる場面、レベルも学びを喚起するところからプロフェッショナルまで、そして学ぶ人はもちろん教える側も教育に関係する人の全てに対して、全方位で支援していきます。

 ただし、クリエイティブ活動のタッチポイントが人によって大きく変わってきているので、まずベースとしては、「誰でも・いつでも・どこでも」アドビの製品を使えるよう、ライセンスも含めた環境づくりに力を入れていきます。例えば学校内で使う共有デバイスライセンスは、学校保有のパソコンでしっかり使えること、求めやすい価格帯などが必須。個人が自宅で学ぶなら、デスクトップはもとより、モバイルでも使用できるようアプリを拡充させる必要があります。特にZ世代などはパソコンを持ち歩かないと言われ、モバイルメインでのクリエイティブ活動ツールは必須となっています。このように「誰でも・いつでも・どこでも」クリエイティブを学べて楽しめる環境、いわば「クリエイティブの民主化」を実現するべく、社会の変化やニーズに応え、柔軟に変化しながら、さまざまな事業施策を展開していきます。

クリエイティブ教育には「教える人」の教える環境づくりや、クリエイティビティを刺激する交流の場が欠かせない

――教育関係を全方位で支援するということですが、その中でも特に直近で注力していかれる分野などがありましたら、お聞かせください。

 これまで私が推進してきたソフトウェアライセンスのクラウド・サブスクリプション化については、一定環境が整ってきたと考えています。しかし、クリエイティビティを伸ばす教育においては、当然のことながらソフトウェアだけでは十分とは言えず、とりわけ「教える人」の「教える環境づくり」が欠かせません。

 アドビでは、教育関係者向けのリソースコミュニティ「Adobe Education Exchange」を2010年より展開しており、世界で100万人以上の教育関係者が登録しています。あらゆる国で教育関係者の関心が高まり、日々活発な意見交換が行われています。そこではアドビ製品を使いこなして教育にあたっている先生と、これから学ぼうという先生との交流を支援し、教育全体の品質を高めていくことを目標としています。

 その中でイノベーティブな活動を行っている先生を「Adobe Education Leader(AEL)」として認定しており、学校内外でクリエイティブな学びを実践いただいているほか、アドビ製品を活用した教育活動の啓蒙や情報共有をオンラインセミナーやイベントなどで積極的に行っていただいています。世界で300名ほど、日本では今年で3回目で26名が認定され、アドビはライセンスの付与に加え、活動そのものも支援していきます。

 またクリエイティビティは、外部から何かインスパイアされて増幅するものだと思います。もちろん日頃の生活の中でインスピレーションを受けることもありますが、自分の枠を広げ、世界のクリエイティビティに触れることで自分のクリエイティビティが揺さぶられることも多いはずです。先生には、ぜひそうしたアンテナの感度を高めることを意識的に行っていただきたいと思います。例えば、世界中のクリエイターが自身の作品を公開しているソーシャルネットワークサービス(SNS)「Behance」や、世界最大のクリエイティブの祭典「Adobe MAX」など、インスピレーションを与えられるような場や機会の提供を行っています。「Adobe MAX」は、コロナ禍によって2年連続でのオンラインイベントになりましたが、むしろ日本からも参加しやすくなったので、ぜひアクセスしていただきたいですね。

――アドビの教育領域における活動において、課題と感じていることはありますか。

 アドビのソフトウェアは「プロ仕様で難しい」というイメージが先行していることでしょうか。もちろんハイエンドなクリエイティブにも対応しており、アプリとしては強みでもあるのですが、先生の中でも、特に初心者には敷居が高いと思われがちです。そこで、アプリの中にショートカットを入れたり、ユーザーのレベルに応じたチュートリアルや事例などのコンテンツを提供したり、サイトを見たりアプリを触ったりしているだけで、ベーシックな使い方がマスターできるようなさまざまな工夫を設けているところです。実際、4~5年前に比べると、初心者でも飛躍的に使いやすくなっており、そのケイパビリティ(他社に比べ優位性のある組織的な能力)を強化するとともに、皆さんに知っていただくためにもマーケティングや広報活動に力を入れていく予定です。


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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

  • 斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

    メディア編集部 メディア1(CodeZine/EdTechZine/ProductZine)編集統括 兼 EdTechZine/ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。教育ICTのオ...

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