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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(EdTech動向)

DX推進に向け、大学組織が向き合うべきことは何か? 情報・システム研究機構監事 吉武博通氏

「DXによる業務プロセスの変革と経営改革(高等教育機関編)~国内トップランナー・成功要因の分析から自組織への活用を考える~」レポート

 学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学『月刊先端教育』は、株式会社コンカーとともにオンラインセミナー「SAP CONCUR FUSION EXCHANGE 2021 - Public Deep Dive - DXによる業務プロセスの変革と経営改革」を開催した。6月23日の高等教育機関編では基調講演に情報・システム研究機構監事であり、東京家政学院理事長も兼ねる吉武博通氏が登壇。「DXによる大学経営と大学組織の深化」と題して、大学におけるDX推進の意義や課題について語った。続く講演では早稲田大学と慶應義塾大学におけるDX推進の現状が紹介された。

DXの発祥、プラットフォーマーらの破壊的な影響力――そして日本の大学へ

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」というキーワードは、テレビのニュースや大手新聞でも目にするほどになった。情報・システム研究機構監事であり、東京家政学院理事長も努める吉武博通氏は、講演であらためて源流から見直すところから切り出した。もともと「Digital Transformation」とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が「デジタル技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」との主旨を表した概念である。

情報・システム研究機構監事/東京家政学院理事長 吉武博通氏
情報・システム研究機構監事/東京家政学院理事長 吉武博通氏

 後にIT系コンサルティング会社を通じて、経済界においてはデジタル技術を活用した事業や産業の構造的変革を表す意味合いが強くなっていく。実際、GAFAやNetflixなどのプラットフォーマーらが革新的なサービスを提供し、既存の産業や秩序に破壊的な影響をもたらしてきた。ビジネスのDXでは勝者と敗者が生まれ、「これまでのやり方は通用しない」と言うがごとく情け容赦のなさも感じられるほどだ。

 一方、日本政府が掲げる「Society 5.0」では「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」とある。経済界のニュアンスよりもストルターマン教授が提唱した概念に近い。

 経済産業省が2018年12月に発表した「DX推進ガイドライン」では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデル変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。日本では多くがこちらを参考にしている。

 DX推進においては経営トップの関与や体制整備が極めて重要であり、意思決定のあり方や変化への対応力が求められている。またDXの基盤となる全社的なITシステムの構築も欠かせない。システム部門やSIerに丸投げするのではなく、事業部門が当事者意識を持ち、要件定義できることが重要だ。システムを「つくったら終わり」ではなく、改良を継続して変化に追従できることも必要である。

 あらためてこれらを比較すると、ストルターマン教授が提唱した社会のありようが端緒となり、経済界が生き残りをかけて動き出し、行政も後押ししたという流れが分かる。直近ではコロナ禍で日本におけるデジタル対応の遅れが露呈し、政府がより積極的に旗を振り始めているところだ。

 こうしたDXの動きは文部科学省の後押しがあり、経済界から大学にも流れてきている。例えば「大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブ(Scheem-D、スキーム・ディー)」や「デジタルを活用した大学・高等教育高度化プラン」などが徐々に動き出している。

 日本の研究分野においては中国の台頭により危機感が高まっており、閣議決定された「第6期科学技術・イノベーション基本計画」では、DXによる研究の高度化が盛り込まれたところだ。研究にもDXを取り込んで効率化し、より付加価値の高い研究成果を創出しようという動きが出てきている。

 大事なのは大学経営のDXによる高度化だ。本講演のテーマでもある。教育や研究の高度化を進めるにあたり、事務的処理のデジタル化(効率化)を通じて人的資源をより付加価値の高い業務に振り分けるとともに、データを最大限に活用しようとしている。教育や研究だけに注力するのでは不十分だということだ。経営の高度化や事務処理の効率化が欠かせないのである。

次のページ
大学組織のDX実現に立ちはだかる課題をいかに克服していくか

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレータ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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