対象読者
- カルチャースクール
- 私教育(中学校・高校・大学)の情報システム部の方
- オンラインへの切り替えに戸惑っている中小規模のスクール事業者
オンライン化のメリット・デメリット
近年はEducation(教育)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語「EdTech(エドテック)」が注目されており、都会と地方といった教育格差の解消、講師の負担軽減などが期待されています。レッスンや授業(以下、レッスン)のオンライン化は、受講する生徒にとってもスクール事業者にとってもメリットがあるのです。
まず、オンラインのレッスンでは、教室を使用しません。生徒は重い教材や荷物を持って教室まで通う必要がなくなり、教室に通う移動時間の節約にもなります。移動時間がなくなるので、複数のレッスンを“掛け持ち”することも難しくなくなりました。
これは事業者側から見ると、商圏を広げるチャンスと言えます。従来は放課後や終業後の時間では間に合わなかった人たち、教室までの距離が遠いので通うことを諦めていた人たちが、レッスンに参加できるようになるからです。またオンラインレッスンなら教室を手配する手間もなくなり、教室の使用料、光熱費なども節約できます。
もう一つ、生徒の誰もが同じ条件でレッスンを受けられるのもオンラインレッスンのメリットです。座った席が講師から遠いために板書やスライドが見づらいという心配がなくなるからです。またレッスン動画をアーカイブとして残しておけば、見逃した部分やよく分からなかった部分を後で繰り返して見ることができるので、学習効率が上がるというメリットもあります。
とはいえ、メリットばかりではありません。オンラインレッスンの場合、画面に変化がないので生徒が飽きやすくなると言われています。一方で、パソコンやスマートフォンを画面をじっと見続けることになるオンラインレッスンは、思っている以上に疲れます。
教室で実施するレッスンと違って“レッスン仲間”が出来にくいのもオンラインレッスンの弱点と言えます。教室にはレッスンを受けに行くというより、むしろ仲間に会いに行くという意識を持っている人も少なくありません。
1人ぼっちでレッスンを受けていると、モチベーションを維持するのが難しくなる傾向があります。予約しておいたレッスンを開始直前にキャンセルする程度ならまだしも、受講自体をやめてしまうリスクもあるわけです。
そうした生徒のケアも必要となれば、講師の負荷は大きくなってしまいます。理想は教室での開催とオンラインレッスンの併用と言えるでしょう。
オンラインレッスンの開講に向けて
オンラインでレッスンを行う際は、「Zoom」などのビデオ通信ツールが欠かせません。ここで問題になるのが生徒側のITリテラシーです。パソコンやスマートフォンなどの端末、通信ツールを使いこなすリテラシーには個人差があります。家庭環境によってはWi-Fi(家庭内無線LAN)を利用できない人、通信速度が遅い人もいるかもしれません。
レッスンの開講前には通信ツールの使い方をマニュアル化し、生徒に配っておくとよいでしょう。またレッスンとは別に、お互いの接続状況をテストする機会を事前に設けるのも忘れずに。実際に配信してみたらところ「画面が横向きだった」「板書の文字が左右反転していた」「音声が出ていなかった」といった失敗もあったと聞いています。
オンライン化に伴うツール選び、運用手順の変更、生徒への周知といった手間を考えると、ちょっと気が重くなってしまうかもしれません。しかし、初めはITリテラシーの高い人を対象に数人程度で開講しておき、徐々に改善していくつもりでスタートすれば、負担はそれほど大きくならないと思います。オンライン化に必要な機材については「IT導入補助金」などを利用できるケースもあるので確認してみましょう。
なおレッスンのオンライン化は、スクール事業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の一つにすぎません。レッスン動画の配信スケジュール管理、予約/キャンセルの管理、受講料や講師への報酬といった会計管理など、デジタル化できる業務はほかにもあります。「マイクラスリモート」「ストアカ」「ストアーズ」など、スクール事業者向けのさまざまなツールやネットサービスが提供されおり、それらを利用すれば事業者の負担を大きく軽減できます。