STEM教育に注力してきたアイロボット
アイロボットではCEOのコリン・アングル氏が旗振り役となり、2009年よりSTEM教育プログラムを社内に導入し、日本でも2017年から、社員によるボランティアのルンバの実機を使ったプログラミング教室を開催してきた。そして今回、より多くの人にこのSTEMプログラムを体験してもらうため、「Root」の開発に至った。今後は、これらSTEM教育の活動を「iRobot Education」として、グローバルで推進していくという。
発表会の冒頭、アングル氏はビデオメッセージで「ロボットで子どもたちにインスピレーションを与え、豊かな発想を育てることは、私たちが10年以上にわたってSTEM教育で培ってきた企業文化でもある。『Root』で世界中の子どもたちの無限の好奇心を引き出してあげたい」とコメントした。
日本においては2020年より小学校でのプログラミング教育が必修化されたが、アイロボットジャパンの執行役員である山田毅氏は「大きな課題が2つある」と述べる。1つ目は先生も保護者も経験していない学びのため、教え方や使う教材がわからないこと、2つ目はプログラミングと実生活との接点がわかりにくく、子どもの興味が向きづらいことだ。
こうした課題を解決すべく「アイロボットだからできること」として、山田氏は「プログラミングの要素と私たちが持つロボット技術を組み合わせて、子どもたちに興味を持ってもらうお手伝いがしたい。将来のルンバのエンジニアを育成できたら」と語る。
シミュレーターつきのプログラミングソフトは無償提供
では「Root」にはどのような特徴があるのだろうか。まず、ロボットの「Root」とあわせて提供される専用プログラミングソフトウェア「iRobot Coding(アイロボット コーディング)」の紹介が行われた。
「iRobot Coding」は無料で提供され、「Root」を動かすプログラミングが行えるだけでなく、画面右のシミュレーターでロボットの動きを疑似的に確認できるアプリだ。「Root」がなくても単体で楽しめる上に、Webブラウザ(ChromeとEdge)とiOS、Androidに対応しており、環境に縛られることなく使用することができる。
プログラミングには子どもの成熟度にあわせて3つのレベルが設定されている。レベル1ではブロックプログラミング、レベル2ではブロックとテキストを組み合わせたプログラミング、レベル3ではテキストプログラミングを学習できる。なお、テキストプログラミングにはiOSアプリの開発言語であるSwiftを採用している。
この「iRobot Coding」によるプログラミングで、ロボットの「Root」を動かしていく。ロボット掃除機らしい「ぶつかったら方向転換をして進む」といった動きが再現可能だ。作成したプログラムはクラス内や友だち同士で共有することもできる。
冒頭でお伝えした通り「Root」の発売日は2月19日で、価格は2万9800円(税込)。個人向けにはアイロボットのECサイトで、小学校などの教育機関やプログラミングスクール向けにはiRobot Educationの認定販売代理店を通して販売される予定だ。
なお、「日本全国の小学生に体験してもらいたい」という思いを込め、アイロボットジャパンでは1校につき6台、合計1000台の「Root」を、小学校に無償配布するキャンペーン「みんなでRoot!プロジェクト」を実施している。学校単位で申し込む必要があり(各学校1回のみ応募可)、締め切りは2月28日だが先着順のため、興味のある先生には早めの応募をおすすめしたい。