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好事例から解き明かす、大学経営とデジタル人材育成

【東京女子大学】女子大の強みを活かしたオンデマンド授業で、データサイエンス教育を推進

好事例から解き明かす、大学経営とデジタル人材育成 第5回

科目群の新設と早稲田大学データ科学センターとの連携

 東京女子大学ではAI・データサイエンス教育研究センターを起点として順次改革を実施しているが、その中心的な施策が2024年に導入した「AI・データサイエンス・スタディーズ」と称する科目群である(下図参照)。

「AI・データサイエンス・スタディーズ」科目群
「AI・データサイエンス・スタディーズ」科目群

 まず1年次には「DS・ICT入門Ⅰ・Ⅱ」という必修科目を全学生が履修する。これは1年間にわたりデータサイエンスに関する基礎的なスキルや知識の習得を目指すもので、全学生に対して必修科目にしたところに意義がある。

 同大学の学部は1学部6学科の構成である。入学定員は合計で約790名であるが、情報数理科学科の70名を除くと残り5学科は全て文系の学科である。それゆえ、教員組織からネガティブな声がなかったか、竹内教授に聞いてみた。

 「いえ、そのような声はなかったと思います。私には聞こえて来なかっただけかもしれませんが(笑)」

 「他大学ではよく聞く話です。貴学では何か良い要因があるのでしょうか?」と筆者。

 「本学では昔から情報処理教育を取り入れていたこともあり、2024年度にAI・データサイエンス科目へ移行した際にも、スムーズに接続ができたのだと思います」と竹内教授は話す。

 1年次必修科目を終えると、次に「AI・データサイエンス科目」(対面授業)または「早稲田大学連携科目」(オンデマンド授業)という選択科目へと進むが、後者の授業がユニークである。これは、早稲田大学データ科学センターのオンデマンド教材の一部を導入したものだが、そこに至る道は平坦ではなかった。

 他大学の授業を導入することになり、最初に悩んだのは科目の選択である。数多くある早稲田大学データ科学センターのオンデマンド授業のうち、どの科目を東京女子大学に導入すべきか。結果的に初年度は2科目を、2年目は5科目を、3年目以降からは8科目へと段階的に拡充することで決まった。それ以外にも数多くの検討事項があったと、竹内教授は振り返る。

 「2024年の運用開始まで、早稲田大学データ科学センターと2年近く論議を重ねました。システムやデータの管理範囲、障害時の対応、著作権や法務などですが、特に時間を要したのが教務的な観点です。この授業は早稲田大学データ科学センターの教材を使うとはいえ、あくまでも本学の授業の一環です。それゆえ、学修データを受領して成績評価は本学が担っていますし、オフィスアワーによる学生サポートなども実施しています。なお、対面・オンデマンドともに、取得単位は本学の卒業認定の単位としてカウントされます」

 オンデマンド授業の他大学への提供は早稲田大学にとっても初めての経験であり、さまざまな観点での論議が必要だったという。

 「早稲田大学側とは、実務担当者による会議を何度も重ねました。でも、そのおかげで、よいものができたと思っています」

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

 1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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